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フットウエア・プレス  2003・5
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MICAM
ミカム靴見本市レポート
2003/2004Autumn&Winter
フィレンツェ在住 通信員 大谷聡美
やわらかさを多彩に表現
シルエットは、より優しくフェミニンに


 3月20日から4日間、ミラノの国際見本市会場でMICAM(ミカム)が開催された。
展示会初日に“アメリカがイラクを攻撃”というニュースが飛び込み、夜はミラノ市内で“戦争反対”のデモ行進が行われるなど、慌しいムードの中での開催となった。
アメリカや中東だけでなく、日本からのバイヤーも展示会行きを中止するなど、来場者数の減少が懸念されたが、初日の来場者数が前年より1000人多い1万8000人、うち外国人が半分を占めるなど好スタートを切った。
出展社は前年より4・2%増え、1254社に。その内の203社が海外企業で、28%の増加となった。特にインターナショナルデザイナーのエリアに関しては、30社から50社に増え、国際的デザイナーからの評価が一段と高まっていることがうかがえた。


商品傾向
゙平和゙への憧れ?で、フェミニンへ傾斜


 今年の秋冬は引き続きフェミニンなスタイルが続きそうだ。今回はヒールを高くトウを短めに、ヒールを低くトウを長めにというバランスで女性らしいフォルムを表現している。  トウは完全に丸いものから丸みを持たせたものが多く、ポインテッドの傾向が徐々に薄れつつある。
そして春夏から出ている編み上げサンダルの流れをくんでか、靴ヒモを重ねて巻くタイプや編み上げタイプのブーツが多く出ている。
全体的に、色・デザイン・素材・テクニックとさまざまな形で柔らかさを表現しており、「pacifismo」(平和主義)を願う人々の気持ちの表れか、どこか優しさを感じられる印象の商品が多かった。
Color
ナチュラルから光り物まで温かみのある色合い

白やピンク、ゴールド&シルバーなど春夏の注目色が継続しており、秋冬色としてグレーやグリーン、ラベンダーが提案されている。黒は完全に定番カラーになっており、茶系はバリエーションが広がっている。
 基本的に単色使いが多く、ベースの色にステッチやライニングなどポイントで色を使っている。色の組み合わせとしては、グレーに白や赤、ピンクをポイントで使っているものが印象的だった。
 全体的に、秋から冬にかけて見られる自然の情景、光り物に関してもギラギラしていない、落ち着いた色合いとなっている。

赤・白・グレーの配色が
印象的
「BRUNO BORDESE」
葉っぱを連想させるようなグリーン
「DOROTEA」

ピンクから紫の中間的な色が出ている
「KTE'」
落ち着いた色合いのゴールド&シルバー
「ITAMI KATSURA」


Material
ヌバックが主流、ビンテージ感覚も継続

今回はヌバック使いが圧倒的に多かった。裏にファーを使ったブーツや異素材とのコンビネーションなど、使い勝手が良くソフト感を表現しやすい素材として注目されたのだろう。ソフトカーフ、ナッパなどやわらかい革も多く使われており、ビンテージ感覚を出した革も相変わらず人気だ。
 2次加工、3次加工された革は、「ジャンニ・バルバート」などの作り込んだ革を得意とするブランドには使用されているが、他はそう多くはなかった。むしろ自然な風合いを生かした革が好まれたようだ。
ヌバックとスムース、ヌバックとポニーというように異素材の組み合わせを同色でまとめているものも目立った。
うさぎのファーで暖かさアップ
「BRUNO BORDESE」
アンティーク仕上げでビンテージ感覚に
「DUCCIO DEL DUCA」

裏無しブーツを靴下感覚で
「BUTTERO」
ヌバックを靴とバッグで提案
「DOROTEA」


Ornament
ボタン、スタッド、ファスナーのアクセント使い

春夏から引き続きボタン使いが多い。今回は、デザインとしてだけでなくブーツをはいたときに留めるという実用的な部分も兼ねている。
 スタッド(鋲)、ファスナーに関しては、デザインだけに使っているものと実用をデザインとして取り入れているものと両方のケースが見られる。
 他にビーズや刺しゅう、トラや龍などオリエンタルなデザインを施したものも見受けられた。


デザイナーの一言
Bruno Bordese
デザインするときいつもインスパイアされるのは、玉手箱のように新しいものが出てきた70年代、80年代のファッション。今回、ミラノにオープンした新しいお店もわくわくした気持ちで買い物が出来るようなディスプレイ。こんなお店を是非東京にも作ってみたい。
「クローン」のデザイナー、ブルーノ・ボルデーゼ氏
ボタンが実用的にも使われている
「BRUNO BORDESE」
サテン地にビーズの刺しゅうでフェミニンな印象
「MARTINI OSVALDO」

ブーツに巻きつけたデザインも多い
「MARTINI OSVALDO」


Item


ブーツ
ビンテージ感覚をやさしく、エレガンス系はフェミニンに
秋冬の主力となるブーツ。洋服のコレクションでミニスカートが多く出ていたこともあり、今年はロングが主役になりそうだ。ひざ下からひざ上、太ももまでのスーパーロングも出ている。
実際に毛糸の長い靴下がついているもの、靴下感覚ではく裏無しブーツ、やわらかい素材をクシュッとルーズにはくのが今年らしい。「ブッテロ」では、ライニングをアッパーより短くして最初からルーズ感を出すテクニックでやわらかさを表現している。
今回は編み上げタイプが多く提案されているが、靴ヒモの使い方が多様化している。サイドやバックに使ったり、靴ヒモを長く何重にも巻きつけるデザイン、ユニークなものでは花柄やミリタリー柄の靴ヒモが使用されている。
アンティーク仕上げの革を使ったビンテージ感覚のタイプは、昨シーズンに引き続き提案されている。今回はトウが完全に丸くなっており、安定した太いヒール使いで全体的にやさしいシルエットになっている。
一方で、エレガンス系は完全にトウは丸くなっておらず、ポインテッドからやや丸みを持たせており、まだ先細の傾向は続くようだ。ヒールは8〜10cmの高寸、低寸やゼロヒールと両方出ているが、高寸はトウを短めに、低寸は長めにしてフェミニンなバランスをとっている。
靴ヒモをバックにさりげなく使っている
「SIGERSON MORRISON」
民族調のブーツもバックと合わせて
「RODO」

今年のブーツは、はき口を折り返してルーズにはく
「DUCCIO DEL DUCA」
エレガンス系はよりフェミニンなシルエット
「ROBERTO RINALDI」

靴ヒモを何重にも巻くデザインが多い
「DOROTEA」

デザイナーの一言
Elisabetta Martellosio
このブランドは、トラディショナルをベースに女性の日常を高寸、低寸で表現した。このスタイルは17年間一貫して続けており、常に手作り感覚を取り入れています。
 スポーツシックだけどスニーカーではない、そんな靴をデザインしています。
「DUCCIO DEL DUCA」のチーフデザイナー エリザベッタ・マルテロージオ


パンプス
フェミニンなデザインが主流
 
女性の日常と非日常を演出するアイテムとしてかかせないパンプスは、トウを細く華奢なヒールを使ったスマートなデザインとトウを完全に丸くして太い安定感のあるヒールを使ったものと両方のタイプが出ている。
 リボンやパイピングでフェミニンな雰囲気に仕上げたもの、特に今回はスラッシュ(切り込み)を入れてセクシーさを表現したデザインが新鮮だった。

他でも見られた丸いパンチング
「SIGERSON MORRISON」
丸い木型には安定感のあるヒール
「MICHEL PERRY」

切り込みをいれたデザインでより女性らしさを強調
「SIGERSON MORRISON」
ストラップデザインも多い
「EMMA HOPE」


クロッグ
温もりのある素材使い

 ボヘミアンの傾向の現れか、クロッグが登場している。ファーやフェルトなど冬らしい素材が多彩に使われており、ソールもウッド以外にゴムやウレタンなど素材の幅が拡がっている。
花のプリントが愛らしい
「TRANS-PARENTS」
ボヘミアンファッションの再来!?
「CLONE」
色とスタイルでより暖かい雰囲気に
「RODO」
ファーを使ったタイプ
「STEPHEN」

デザイナーの一言
Dorotea Valls
ナチュラルな雰囲気を素材・形で表現した。特に素材にはいつもこだわっており、今回は、素材の展示会ではないところで見つけた、自然な模様がプリントされた素材を使っています。
「DOROTEA」
ドロテアのデザイナー、ドロテア・ヴァルス


スポット・ニュース
注目されるビジターズエリア
 インターナショナルデザイナーのエリアには、50人のデザイナーが出展した。このエリアは、審査をパスしたデザイナーのみが出展できるが、他にも参加を希望していたデザイナー達がいた、とANCI(アンチ=イタリア靴工業会)は発表している。
 今回、初めて出展した「ドリス・ヴァン・ノッテン」では、「来場者のレベルが高くて満足している。次回も検討したい」と話しており、国際的デザイナーからの評価がさらに高まったようだ。


ユーロ高が価格に反映
 昨年に比べるとユーロのレートが10円ほど上がり、日本人バイヤーにとっては割高感のある価格になっている。価格を下げて調整を取っているメーカーもあるが、30%も値上がりしたというところも。
 エレガンス商品を探しに来たという日本人バイヤーからは、「価格が高いか安いかで、中間クラスの商品があまりない」という声が上がっていた。