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今月の記事 ピックアップ | 2003.6 | ||||||||||
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井戸端 隆宏さん ニットグローブ椛纒\取締役会長・潟宴Tンテ代表取締役 |
自らで築くという生き方が、すべての源。信念が5本指を支えた
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「最初はかかとの無い作業用タイプで出発しましたが、足ムレ対策用の綿を主体としたはきやすい5本指ソックスの開発には、編み機の改善が必要でした。幸いカ社にも編み機を納めている島精機製作所とは、おたふく手袋もつきあいがあり、さっそく相談。週に2〜3回は島さんに通い、足指の針数変更などを重ねて、4年かかって満足のいく規格に作り上げました」。 「こう口で説明すれば簡単ですが、当初は売れなくて大変でした。社内でも、グロテスクと言われて相手にされない。それでも機能性や運動性には自信がありましたし、徐々に鳶職やタンス職人など足を踏んばる必要のある人たちから評価され、開発を続けることができたわけです」。 「その後、関連会社としてニットグローブを立ち上げたのは、作業用の分野だけではなく、もっと高級ソックスとして普及を図りたかったから。また何よりも大きな動機として、77年に発行された中田修先生著の『ひとのやらないこと、ひとのやれないこと』に触発されたことが挙げられます」。 「物真似ではなく、人のやらないことを事業の原点としたい。しかしそれは、新たなマーケットを創造することでもあります。1つのアイデアを技術化するのに求められる力を10とすれば、商品化には100、市場開拓には1000の力が必要だと言われますが、私の実感も同様。結局、事業として成り立つまで10年以上はかかりましたから」。 ![]() ![]() 「88年にはかかと付き5本指ソックスが生産できるようになり、先行投資として90年に新工場を建設し、最新編み機を大量導入。来るべき日に備えてきたのが、このブームで陽の目を見ました。それまでの水虫予防ソックスというイメージから脱却できたのも、その後の展開を広げてくれた要因です」。 95〜96年頃には、スポーツ分野にすっかり定着。マスコミに紹介されることも多くなり、若い女性にも人気が出て、ファッション性も開花している。さらに99年、人気TV番組『おもいっきりテレビ』で取り上げられたことが、健康に良い高機能ソックスとしての地位を完全に確立させた。 「あの時はすごい反響でした。5本指ソックスを作っているメーカーは他にもありますが、専門かつ高級品を扱っているのは、ニットグローブだけ。オンリーワンの存在でしたから注文が殺到し、おかげでデッドストックとなっていた在庫が一挙にさばけ、会心の思いがしたものです」。 「96年の時点で、5本指ソックスは市場シェアで2%、年間2000万足の販売実績を誇るようになり、現在では4%近くに達していると推定されます。しかし満足していては、それで終わり。ビジネスにおいて大切なのは、先を読み、戦略を立てることだと私は考えています」。 確かに開発型企業として誕生した同社は、その当初から各分野のトップ企業との取引に力を注ぎ、専門メーカーとして豊富な商品構成を構築。抗菌・防臭などの付加価値にもいち早く取り組んできた事実がある。そして何より“ひとのやらないこと”を先駆けて手がけてきたそのこと自体が、井戸端会長の戦略そのものと言えるだろう。 ![]() 先行投資の大胆さも、会長戦略の特徴だ。95年10月に島精機が完成させた世界初の完全無縫製横編み機の即時導入も、その思い切った決断あってこそ。本来はセーター用の編み機なのだが、氏はその最新の技術を応用して、5本指ソックス並びに肌着関連製品を作れないものかと考えたという。 96年2月には早くも工場に設置し、研究開発を進めた結果、30数件の特許を出願。現在、10件近くの特許が登録されている。 「その間、はきやすい高級品“プレミアム5本指ソックス”の開発に成功。並行してファッション化にも着目し、各種ジャカード編みなど100数十件に及ぶ意匠登録を出願しました。特許と同じく、こちらも順調に登録を済ませ、現時点で30件超。5本指ファッション化の先鞭をつけたと自負しています」。
価格や量ではなく独創性で勝負していきたい、と井戸端会長。その想いは、この秋発売予定の軽くて肩のこらないオリジナル無縫製セーターにも、如実に表れている。そして氏はまた、こうも言う。 「振り返れば、創業時に東京の薬局ルートの展示会で説明したり、断られるのを覚悟で売り込みに回ったり『何で今さらこんなことをしているのか…』と天を仰いだ、あの労苦の日々が嘘のような気がします。それでも理想を追い求めてきたからこそ、今がある。先行きの見えない時代だからこそ、自らで築いていくという考え方こそが、大切なのではないでしょうか」。 「これからの夢は、開発済みの特許・技術を生かして、マルチフィット&多彩な柄編みの“夢の5本指ソックス”を生み出すこと。まだまだ、立ち止まってはいられません」。 |