今月の記事 ピックアップ  2003.7
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マーケット
   新カテゴリー「インドア」提案で、1・8億足市場を再開拓

●個人のファッション需要で市場は拡大に転じるが、国内メーカーは減少

室内ばき市場もピークはバブル期であった。ブランド商品のギフト需要で盛り上がったが、これもバブル崩壊後は下降を続けて来た。
この市場が2年ほど前から再びプラスに転じている。この成長の背景にあるのは、フローリングが一般化している住宅事情の変化と並行して、本特集104ページからの売場レポートにあるように、ファッション志向の中で、個人需要が拡大して来ているからである。
室内ばきの需要規模はどのくらいあるのか。インポートが多く、国内の団体も集計データを持たないが、病院や公共施設の職域需要も含めて1億8000万足の規模と見られている。平均単価を400円と見れば、700億円市場である。
この市場規模の業態別シェアとなると、さらに推定にならざるを得ないが、百貨店が100億円、靴専門店・インテリア・生活雑貨・ドラッグストア100億円、量販店250億円、ホームセンター・総合ディスカウンタ250億円。靴専門店はまだ僅かな市場規模であろう。
市場が再び拡大に転ずる中で、国内の業界は厳しい状況下にさらされている。ここ3年ほどの間に百貨店卸のイグサ実業と量販店卸フラワースリッパの両トップ企業が倒産しているのがこの業界の象徴的な出来事である。
全国に産地といわれるところは東京、行田、両毛、山形、徳島の5ヵ所ほどあり、その他にも点在するが、かつては300社ほどあった国内メーカーも現在は60数社ほどに減少している。最もメンバーの多い東京スリッパ工業協同組合の現在の会員数は34社。これが組合創立当時は80社を超えていた。
産地の中では、特に厳しい状況に追いこまれているのが山形といわれている。同産地は他よりも積極的に機械化を進め、低価格品で量を追求してきた。が、ここに来てインポート商品との競争に勝てなくなっているのである。
そのインポートのシェアは9割に達している。中国からの輸入が圧倒的で、他にインドネシアやフィリピンなどアジアのほかに、最近は東欧からの輸入も多い。






●高付加価値商品の開発で差別化、靴専門店が接客販売するアイテムに





現在、日本のメーカーが生産するボリュームゾーンは上代1800〜2000円。手の込んだ作りのものや高級素材を使ったものを手掛けるメーカーでは、5000円前後のものを扱っている。これがインポートものでは100円ショップで売られるものもあり、300〜500円がボリュームゾーンとなっている。このため、国内メーカーは価格競争に巻き込まれないだけの、付加価値の高いものづくりが差別化策となっている。
3年ほど前に伊勢丹が左右別ラストの商品で、サイズ展開の商品をオリジナルで展開した。このものづくりの発想は国内メーカーになかったものであった。
現状、海外モノの1サイズ、2サイズ展開に対し、国内メーカーは4サイズ(S・M・L・LL)での展開で、差別化を図っている。また、最近は左右別ラストの商品も増やしつつある。こうした新しいモノづくりが海外製品との差別化につながっていくのである。
ファッションアイテムとしての需要に対し、シーズン対応もきめ細かくなっている。ここではシーズン端境期の商品まで企画するようになっている。ただ、まだ展示会は6月と11月の年2回の開催であり、この点では対応が遅れている。
また、ファッション対応ではこれまでのロット制限をなくし、情報のやり取りができるようなコラボレーションの関係の中で、10足以下というような小ロット対応も見られる。これは、インテリアや生活雑貨企業と組んでのものづくりで、材料として持ち込まれる生地が情報になるという。
こうしたメーカーのインポート商品との差別化、生き残りの中に、本特集が提案する、スリッパのものづくりとは違う、「インドア」という新しいカテゴリーでくくれるモノづくりが見られる。
この「インドア」コンセプトでくくった付加価値商品のシェアは、業態別シェアから見てもまだ3割にも達していないだろう。しかし、メーカー・卸が力を入れているゾーンであり、市場の関心も高い。売場においてこの新カテゴリーの展開は、接客販売が求められる。だからこそ、靴専門店が積極的に扱うべきである。

取材協力:インテリアワタナベ ハタナカ 九重 キャッスル共同 最上 アキツトレーディング サナックス コロンブス 船見