今月の記事 ピックアップ  2003.7
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シリーズ11
地下街の中でコンビニ靴店に徹し、

アイデアあふれる提案・演出で集客
19坪に売場に、店長以下6名の販売員が立ち、年間11回転の回転率で、年商は2億円を超える繁盛店がある。大阪・梅田の地下街の一つ、ホワイティーウメダの中に出店する「サンリノ」ウメダ店である。
同社(叶迹纉c屋)はウメダ店のほかにナンバ店、ビックカメラなんば店の3店舗を展開しており、すべて各店仕入れで、ロケーション、客層に沿った展開をしている。
働く女性を対象に、今欲しいものがいつもある店で差別化
「サンリノ」ウメダ店は働く女性をメインターゲットに、スニーカーやメンズ商品も一緒に展開している。
阪急、阪神、大丸といった有力百貨店やナショナルチェーンが立ち並ぶ中で同店は、今欲しいものがいつでもある、コンビニのような靴屋を目指して差別化を図っている。
「当店では『ハルタ』の靴を、働く女性の仕事ばきといて扱っているが、この春は10日間で60万円の売上げを作った。他が品薄だった中で、新年度を迎えるこの時期、仕事用に必要な靴としてヒールアップ・ローファーを普段より多く手配していた」(山田晴久店長)というように、コンビニ靴屋の実力を発揮している。
 単独店仕入れながら、同店ではオリジナルの婦人靴も扱う。冠婚葬祭ばきのようなオフィシャル用途のプレーンなパンプスがそれである。ベーシックなデザインで、どこも扱いたがらない商品だが、お客さんからの問い合わせが多いという理由からメーカーの協力を得て、50足の最低ロットで積んでいるもので、これが安定して売れているという。ここにもコンビニ性の提供がうかがえる。
 商品構成は婦人靴のほかにスニーカー、紳士靴も扱う。主な取引先は革靴がマドラスコーポレーション、ケミカルが三鈴商事、デイリー商品がウエダ商事、テングヤ商事など。婦人靴が7割以上を占めるが、ビジネスを中心としたアダルト商品は必要、ということで、紳士靴も置いている。婦人靴の価格は手頃な3900〜9800円までを中心に構成。

ひやかしコーナーでは店からの提案商品を月単位でディスプレイ
梅田と東梅田の両駅をつなぐ地下街は人通りが絶えない。「サンリノ」は通路に面して横に広いオープンな店を構えるが、遠くからでもひと目で靴屋とわかる商品量の陳列だ。
「地下鉄の駅を結ぶメインの通路からは横に伸びる通路であり、これだけの通行量があってもここに靴屋があることがまだ十分に知られていない。だから、店頭まで商品を並べ、目を引くようにしています」(山田店長)。
狭い売場には商品があふれるが、新商品として見せていきたいものは棚のエンドに置くというような工夫をしている。また、大半の商品がブランド別ではなく、タイプ別にくくって並べられている。この中にはヒールの高さ別に見やすくくくって陳列する棚もある。
このボリューム陳列の中で1ヵ所、地下街通路に面してコの字に囲って商品陳列をしているコーナーがある。今売りたいもの、提案したいものを見せるディスプレイコーナーである。
「ひやかしOKで、人だかりのする売場にしたい。靴を買うという目的がなくても商品を見てもらえるような、ひやかしコーナーになればとして作っています」(山田店長)。
このコーナーは1ヵ月単位で変えている。
今このコーナーにはソックスをはかせた足模型が入った靴やジーンズの裾をつけた靴がディスプレイされている。これはスタッフのアイデアで、パンツインのカジュアルスタイルをビジュアルに見せたもの。提案したスタッフが自らジーンズをカットして作ってきたという。

常に面白がってもらえるMDテーマを考えながら展示会を回る

 アイデアはMD提案にも生かされている。この3月から4月にかけてこのコーナーでは「お花見シューズ」の提案を行った。もちろんこんなコンセプトの商品を打ち出しているメーカー、卸はない。同店のオリジナルで品ぞろえを考えたものである。現在ある商品の中から、同店のターゲットである働く女性がこの春、お花見をいくとしたらどんな靴をはくだろうか、ということから発想し、こんな靴をはいてもらいたい、という同店からの提案である。
「展示会でも商品を見るときは、この商品ならどんなテーマでくくってお客さんに訴えることができるかをいつも考えている」(山田店長:写真)と言う。これが楽しみで展示会を回っており、展示会でどの商品が人気かとは聞かないことにしている。
今回の「お花見シューズ」の提案では、その靴が桜の木の下に並んだ時、春らしくきれいに見える色で、はきやすいものを基準に選び、ディスプレイした。この提案に対する反応は上々だったという。
こうした遊び心のある提案をこのコーナーでいつも行っている。メンズで「パチンコに行く時の靴」という打ち出しを行ったこともある。この夏は「リゾート」をテーマとするが、ここでも一ひねりして、カジュアルではなく「リゾートパンプス」の切り口で、可愛いエレガンスを提案する予定だという。
「売れる商品などないと思っている。当たる時もあれば、外れる時もあるけど、とにかくお客さんに『コレ、なぁーに』と関心を持ってもらい、面白がってもらええればいい」(山田店長)。
各担当者が売っていきたい商品には必ずPOPをつけている。お客さんが親しみやすいネーミングにし、用途や機能性をわかりやすい言葉で解説している。また、いま力を入れているものにフラットシューズがあるが、このタイプの商品だけでくくったコーナーには「ペッタンココーナー」と書かれたプレートが吊り下げられている。これもお客さんの気をひくネーミングだ。
お客さんをひきつけるしかけは他にもある。例えば「スニーカーならおまかせ」というように、自分が得意とする部門を書いた名刺を各スタッフが持っている。これを再来店したお客さんに渡している。これも気の置けないアプローチ手段になっており、リピーターづくりになっているという。
今年に入ってからの成績は、2月だけがトントンで、他の月は伸びているという。この好調を支えているのは、お客さんの間で話題になりそうな販促、演出アイデアを店長以下、いつも全員で考えており、すぐにそれが売場で実行できる環境があるからのようだ。

▽ サンリノウメダ店
大阪市北区曽根崎2丁目大阪地下街5−2
TEL:06−6312−5338