今月の記事 ピックアップ  2003.8
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「かばんのウエクサ」(千葉・千葉市)

40年来扱う吉田と、ヘルツの革製オーダーバッグの2本柱が武器


「かばんのウエクサ」外観

 「かばんのウエクサ」は、JR千葉駅にほど近い“千葉銀座通り”に面している。ここで大正13年に洋品店として開業、昭和53年に鞄の専門店となった。周囲は千葉パルコなどが隣接するショッピング街だが、県庁など官公庁建ち並ぶオフィス街にも近い。
33坪の店内で約20社のブランドを扱う。全体の約7割を占めるメンズ・トラベルは吉田、青木がメイン。カジュアルはコーナー展開する「ヘドグレン」はじめ「リーボック」「ニューバランス」など多数。
レディスは全体の2割弱で「ラモーダヨシダ」「ハナエモリ」などだが、エレガントなものは減らし、3000円台のショッピングバッグを増やしている。ほか、財布やセカンドポーチも1割ほど扱う。革と雑材の比率はほぼ4対6(比率はいずれもフェース)。
スタッフは6人。客層は幅広く「高校生からおばあさんまで」。立地柄ビジネスマンも多く、お客が同僚を連れて再来店することもある。「このあたりも店が減り、競合店も今は規模縮小しています」と話すのは社長の植草裕一さん(以下のコメントはすべて植草さん)。
さらに不況も重なった今、同店では専門店としての個性を出すため、吉田の各ブランドとオーダーメイドバッグとを2本柱として打ち出している。不況で厳しい折だが、売上げは昨対実績を割っていないという。「この2つのおかげで、客数が伸びないわりに客単価は上がっています」。これらで売上げ全体の約25%を占める。



●中高年向けの「ポーター」も豊富

同店と吉田とは40年近い付き合い。吉田は「ポーター」の“タンカー”がブームになって以来、目的買いが増えたため、素材や年齢層ごとに店内3ヵ所でくくっている。種類の豊富さはお客にも驚かれるという。
吉田の若い層向けの商品をそろえる店は数多いが、ここでは中高年向けも豊富に扱っているため、吉田滋前社長が来店し、商品をチェックしていったこともある。
吉田の商品の魅力については「誠実で妥協のない姿勢…ごまかさずに良いものを作っている点です。価格だけ見ると少し高いですが、商品を見て原価計算すると十分に納得できる額です」と話す。さすがに長い付き合い、商品への理解が深い。古いタイプの商品でも「やめてしまうのもしのびなくて」と植草さんは笑う。商品への愛情もまた深い。
オーダーのバッグは「ヘルツ」というブランド(メーカー名も同じ)。タンニンなめしのオイルレザーを1枚革で使用したハンドメイドだが、バッグの価格帯はセミオーダーで2〜5万円と比較的安価。雑貨も展開する。
月平均7〜8件の受注があり、フルオーダーでは、長年愛用したバッグと同じデザインのものを作ってという依頼も。「ヘルツ」は渋谷に直営店もありファンの多いブランドだが、千葉県内では2店舗のみ。そのためオーダーはホームページを見ての問い合わせが多く、遠方からも来店する。



●帆布素材を集めたコーナーが人気

ホームページでの販促は効率が良い。販促のために以前はチラシ配布をしていたが、「地域(商圏)が広すぎて費用対効果が分からず」、今は行っていない。セールも同様の理由で、店内一斉には行わない。
ほか、最近は帆布素材を強化している。当初少量の展開だったが、よく売れるのでコーナーとなった。とくに中高年層には懐かしい素材に見えるようで、人気が高い。
今後は、店の“売り”をもうひとつ加えて3本柱にしたい、と植草さん。帆布素材のバッグのオーダーをやってくれるメーカーがあればと探したが、まだ見つかっていない。もうひとつの柱を模索中だ。

▽「かばんのウエクサ」
千葉県千葉市中央区中央3−16−5
TEL 043−222−1829

「ポーター」2万円、2万3000円。中高年男性向けだが若い女性が「かわいい」と買っていくことも
店内の随所に観葉植物や海外の民芸品などが置かれている。全身鏡も3つある
社長の植草裕一さん
「ヘルツ」のウエストバッグ。2万2000円
ベルギーのデザイナーによるブランド「ヘドグレン」のコーナーを見る女性客
「ヘルツ」はウインドーにコーナーを作っている。店の前をよく通る、官公庁街で働く男性に評判が良い
帆布素材のバッグのコーナー。海外の風景写真などを貼り、オフタイムの雰囲気を出している
「ポーター」は店内3ヵ所で展開。新作や人気商品には手書きのタグを付けて展示