今月の記事 ピックアップ   2003.12
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「ストライク」(東京・墨田区)

「ストライク」外観 店頭に「すみだ工房ショップ」
第1号店の看板を
墨田区も支援、オーダーがメインの小さな工房ショップ
 JR錦糸町駅北口から徒歩5分、8坪の小さな店内に工房まである「ストライク」に着く。商品はすべてオリジナルで、オーダーメイド8割、既製品2割。代表の中井川純一さんは、バッグメーカーでの10年間の勤務を経て独立、2人のスタッフと共に店を運営している。当初、中井川さんはこの場所で、一人でメーカーの展示会用サンプルを製作していた。だが一般のお客からの要望も増えてきたので、99年に工房ショップとしてオープンした。
代表の中井川純一さん
「在職時はデスクワークが多く、作るほうに携わりたいと思っていました。製作技術は独学です」(中井川さん。以下のコメントは同じ)。
 オープンに際し同店は、東京都墨田区の推進する「すみだ工房ショップ」の第1号店となった。これは、墨田区が「製造と販売が一体となった新しい都市型産業の構築」を目指す一環としての助成制度で、設立時に内装費というような形で150万円以下の援助を無償で受けられるというもの。
「墨田区には製造業者が多いので、バックアップ運動が盛んです。単独で立ち上げるよりは、と認定を受けました」。現在はホームページを見ての来店が多く、おもに総武線沿線在住の40代以上の女性が多い。

取引先に近い立地で独立した中井川さんだが、現在サンプル受注は減っており、サンプル製作は総売上げの1〜2割以下に。バッグ業界に元気がなくなっており、サンプルを自社内で作るメーカーが多くなったという。

「ホックの一つでも妥協しない」モノづくり
オーダーバッグの製作にあたっては、お客が来店前に大枠を決めてきている場合がほとんどなので、細かな部分を会話の中で詰めていく。だが使用する革の質感や金具については具体的に考えてきていないことが多いため、見本などを見せてアドバイスする。
「基本的にはお客様の要望に1から10まで合わせます」。が、「ホックの一つにも妥協したくない」という。オーダーのバッグを製作する店が増えている中、差別化としては「当たり前ですが、やはり、ひとつひとつ丁寧に仕上げるということになりますね」。工房がお客から見えていることで、製作時の緊張感はさらに増すようだ。

スタッフは全3名
素材にこだわり、ホースヘアーも用意している。これは白馬の尻尾の毛を1本1本選び出し、熟練工の手により1枚の素材に織り上げたもの。1日の生産量はわずかバッグ1個分だという。
オーダーバッグの中心価格帯は4万〜8万円くらい。口コミで来店するお客が多い。「気に入ったものが見つからない、納得できるものがない、というような方がいらっしゃいます。最近はトレンドのサイクルもそうですが、商品の移り替わりがとても速い」。
たしかに数年前に購入したものと同じものを探しても、まず見つからない。既製品より高くなっても愛用のバッグに似たものが欲しい、という人は案外多いようだ。そのことは、リフォームや修理の依頼も多いことからもうかがえる。

今後はオリジナルや雑貨製作にも着手
お客が増えると雑になってしまう部分が出てくるので、販促はほとんどしていない。「ひとつひとつ丁寧に」という点にはあくまでこだわりたい、と。とはいえ収益の面でオーダーをメインにするのはなかなか難しいようだ。「フルオーダーなので材料の在庫が残ってしまう」と中井川さん。
「やはり効率は良くありませんね。今後は、オリジナルのブランドを出していくことも考えています。様子を見ながらスタートを切りたい」。また、異業種の業者からの受注も。先日、ライターの革巻き1000個の注文を受けた。「バッグ以外の革製品の受注にも取り組んでいきたいですね。革を使ったもの、と考えれば、さまざまな場面での需要があると思います」。
売場と工房が一体となっている オーダーのサンプルと修理品
▽ストライク
東京都墨田区錦糸3-14-3-1F
TEL:03‐3625‐0061