今月の記事 ピックアップ    2003.12
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この店のおもてなし
シリーズ15
スポーツ・ブロック(千葉・我孫子市) 

月に200足のオリジナル中敷を製作。
     プロ選手との契約も


大きなウインドー越しに見る店内の様子は靴店そのものだ。
 JR常磐線天王台駅より徒歩2分、国道356号線に向かう大通り沿いの「スポーツブロック」は、専門性の高い地元密着型のスポーツショップだ。店のある千葉・東葛飾区は駅伝やマラソン大会などが定期的に開催されるスポーツの盛んな土地。同店社長の村田寛さんは、地元陸上競技協会の副会長を務めるなど、地域のスポーツ事業の振興に深く関わってきた。
そんなプロショップであるが、3年前から足の健康をサポートする靴の販売に力を入れている。
  スポーツ用品業界は大型店の進出により価格競争が激化し、中小店は生き残りのための手を打つ必要があったというのが一つの理由。
そしてもう一つの理由は“スポーツ障害”だ。「駅伝大会で子供達の足を見たところ、靴が合っていない上に、スポーツ障害も多かった。スポーツショップとして、どう取り組むかを考えるいい機会になりました」と3代目の村田由一店長は話す(以下コメント同じ)。
最初に注目したのはシューズ・インソールを含めたフットウエアだった。都内のプロショップを学び、アメリカ製の「スーパーフィート」を扱うようになった。また、シュリットの靴の学校フロイデに通い、コンフォートシューズに出会った。他にも、多くのスポーツトレーナーや接骨医院、実業団やクラブチームの監督との勉強会やミーティングを重ね、知識を深め、信頼関係を築いていった。


オリジナルはコンフォートの半分を占める

接客のための椅子は、もともと同じ脚の長さだったものを子供用に切って短くした。手前のケースにオリジナルインソールが収納されている
売場面積40坪の店内は、中央のレジを囲うように、入り口からスポーツ用品、靴と配置され、その商品量は4対1。接客用の椅子6脚に、足の計測器まである。年間売上げは1億円を越えており、前年比10%以上増で伸びている。その半分を靴で稼ぐという。
靴の商品構成はスポーツブランドの競技用をはじめ、ウォーキングで「ヨネックス」「ミズノ」「アシックス」、レディス中心のコンフォートでは「フィンコンフォート」「ガンター」「バベーネ」など。コンフォートが靴の3分の1を占める。お洒落な靴よりもはき心地を重視したラインナップ。
注目したいのはブロックオリジナル。コンフォートの半分はオリジナルである。シューズ、スニーカー、ショートブーツ、ハイカットスニーカー、キッズ、ベビーのの6モデルで10色もそろう。価格は婦人もので2万9000円から。足の弱い部分を補いながらコンディションを整える機能があり、試しばきをすると、“サポーター”のような感触。軽くても安定感があるのが特徴でぐらぐらしない。「最近は踵が細い人が増えているので、それに合った木型を開発しています」。
同店のモットーは「お客さんにとってなぜこの靴がいいのかを、短いアドバイスと、短い時間で理解して頂くこと」という。計測やフィッティングにゆっくりと時間をかける一般のコンフォート店とここが違う。
短時間での接客に役立つフットプリンター 村田由一マネージャー(左)、スタッフの伊藤寛之さん、栗原舞さん。由一さんはバレーとスノーボードのコーチや選手のバックアップも手がける。「スタッフにはスポーツの技術とセンスを持つ人を集めています」
そのためのさまざまな工夫がある。オリジナルの「フットプリンター」による計測はその一つ。裸足の足裏をプリントし、その間約30秒。
「以前は手作業で測っていたが、この方が情報量が多い」。購入履歴などを記入し、顧客名簿として使っている。足の状態をタイプ別に説明したパネルを用意しているのもわかりやすい。
「うちのおもてなしは、フォーマルからスポーツまでTPOに合わせた商品を、ストライクゾーンに球を投げるように、お客さんの欲求に合わせて提案すること」。


今後は子供靴に注力し、リピーターを育てていく



スポーツシューズは種目別、用途別にディスプレイ



オリジナルの「ブロック」3万1000円。



パンプスはこのブランドが人気。
「オグル」2万8000円

同店は“中敷”の専門店でもある。「スーパーフィート」「シダス」「ポディアテック」などスポーツ用のほかオリジナルも。店の横には工房を設け、お客の少ない平日の昼間は、ここでの加工作業が中心なる。
プロのスポーツ選手の中には、中敷の契約選手がいる。マラソンを含めた各種陸上競技、スノーボードなど、彼らが雑誌で紹介された際にはアドバイザリースタッフとして、“スポーツブロック”の名前が掲載されることも。選手によっては仲間を1シーズンに10名以上は連れてくるというから、信頼も厚い。彼らに憧れる中高生の来店や、問い合わせは全国からある。「影響力や人柄を見て、応援したい人と契約しています」。
一般用は月200足前後製作する。足のタイプ別、サイズ別に5mm間隔で用意している。価格はスポーツインソールが4000〜1万9000円、オーダーメイドは9000〜3万5000円。調整後もチェックのため再来店を勧めている。
由一さんが、今後力を入れて行きたいと語るのは、子供靴。子供客の2人に1人は中敷の調整を行うという。「リピーターになり、将来は駅伝の選手となって店に来てくれるかも。お客さんを育てることも大切と考えています」。
現在「アシックス」「ミズノ」「リコスタ」などを扱い、価格帯は子供靴が4000〜5000円が中心。これに中敷をプラスしても1万円内で納まる。「多くの既存の子供靴は今の子供の足のタイプと一致しない」と、一緒に商品開発に取り組んでくれるメーカーを募集中だ。
スタッフは全6名。販売はカリスマ1人では限度がある。皆が同じプロの接客が出きるように指導する。それがお店のブランドになるのだという。スタッフの名刺には、靴に関する資格は書かれていない。名前よりも、使える経験や技術を優先しているためだ。「何流でもない、うち流」という言葉に納得させられる。


▽スポーツブロック=千葉県我孫子市天王台1-13-2、TEL04・7185・2226、
URL: http://www.bloque.co.jp