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今月の記事 ピックアップ | 2004.9 | |||||||||||
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シニア向けカジュアルやコンフォートに着手 ――(編集部)メンズ市場ではドレスカジュアルがボリューム化の兆しです。 伊藤 メンズは前期、昨対で3%強の増だった。その要因は20〜30代の若い層を取り込めたこと。客単価は横ばいだが足数が伸びている。マーケットでの「リーガル」のイメージが変わってきており、今期も楽しみ。ただしレディスは昨年の冷夏で大きな赤字を出し、トータルではマイナスとなった。 ――メンズの購買年齢層が下がっているようですが、シニアのマーケットについてはどう考えていますか? 伊藤 非常に大きなマーケットだが、「リーガル」の活性化を優先してきたので取り組めなかった。とはいえ、いまやマーケットはカジュアル化・高齢化しており、ビジネスシューズの需要は縮小する一方。現場には「2万円台になってもいいから、洗練されたカジュアルを出しなさい」と言っている。この世代が休日にはける靴が少ない。 ――「リーガル」に続くブランドの開発を? 伊藤 常に頭の痛い問題。メンズのカジュアルと、「ホッパーズ」のようなコンフォートを本格的に開発していかない限り、当社の将来はないだろう。例えば、「ナイキ」のエアシリーズのようなフィット感を革靴で実現したい。ソールの開発には費用がかかるが、基礎技術への投資は必須。当社主体でやっていきたい。M&A(企業合併・提携)も視野に入れている。 ――メーカーとしてのポジションを、今後も大事にしていくわけですね。 伊藤 うちはメーカー・卸・小売の3業種をやっているが、マーケティングカンパニーになっても生産部門は継続させていく。利益は2の次、3の次で、「リーガル」のメイド・イン・ジャパンは三角形の頂点として残す。これがなくなったらただの商社に成り下がってしまう。 工場を無理に延命させることはしないが、現状として、工場は常時フル稼動の忙しさ。年間8億円ほどの利益を出し、大きく貢献している。工場には「今まで1000作っていたものを800に落としてもよいから、不良品を出さずに市場のニーズに合う商品を作れ」と言っている。工場の大量生産販売の体質を変えるまでには苦労した。 150店までに絞り直営化を進めていく ――リーガルシューズの店舗数は? 今年は旗艦店の「リーガルTOKYO」もオープンしましたね。 伊藤 140店くらい。日本は商業地域が集中しているので、数はあまり必要ない。あと少し増やして、収益性の高い立地に絞り込んだ150店まででいい。小売店が元気ないから、直営化を進めて店の中身を変えていく。消費者のニーズはますます多様化しており、「定番」はもはや死語。また、鮮度を大事にして5回転の商品回転率を目指したい。 旗艦店の「リーガルTOKYO」はブランドをもっと磨くための手段でもある。大きな損が出なければよしとしたい。商品はオリジナルが多く、他のリーガルショップにはない品ぞろえにしている。予想外だったのは1足16万円からのフルオーダーへの反響で、月に50足も注文が入っている。 ――小売の売上げ構成比はどのくらいになっていますか? 伊藤 約25%の100億円。市場開放の年までに、卸と小売の売上げを逆転させるつもりだ。つまり、遅くても5年以内ということ。すでにTQ制は形骸化しており、例えばFTA交渉の成立したメキシコとは、10年で枠が撤廃される計算になっている。 靴の卸売りという商売は、もうだめなのではないか。売り先もないし、不良債権化のリスクが大きすぎる。そのため大半を契約ベースで卸しているが、これが売上げの足かせになっている。とくにレディスは百貨店への卸が主体で、儲かっていない。 マーケットに近づくためにはやはり小売をしなくては。アメリカの小売業を見ると、会社全体がマーケットに近づいている。いいお手本として徹底的に研究したい。今後は、小売だけで年間200億円を売上げたい。でなければ、小売をやっているうちに入りません。 ――現状プラス100億ですね。 伊藤 リーガル以外に3、4つの業態を考えている。業態開発は非常に大変な仕事だから、4つ開発して2つも成功すれば十分。例えば、田んぼの真中に300坪というロケーションもあるかもしれないし、都心にレディスの路面店、ファミリー対応の郊外モールに出店などもあるかもしれない。 目指すは中国マーケット。上海で婦人靴を売りたい ――中国への出店計画は? 伊藤 日本のマーケットは成熟しきっていて、新しいことを始めようにもたかが知れている。目指すところはやはり中国マーケット。上海への出店を考えている。上海で若い女性相手に婦人靴を売ってみたい。 ――中国生産に着手して何年くらい経ちますか? 伊藤 アッパー生産を含めると25年くらい。技術は目ざましく向上しており、今はグッドイヤーの完成品も一部やっているほど。いずれは「リーガル」も中国生産も増加するので、技術力=ブランド・企業価値としてさらに磨いていきたい。生産拠点に直接投資をする考えはないので、自社工場は作らないが。 ――LDC(特恵関税国)での生産委託量はどのくらいですか。 伊藤 年間20万足強で、30万足まではいってない。品質はやはりそれなり。韓国資本にせよ台湾資本にせよ、LDCはインフラも整っておらず材料の調達もできず、真剣に技術指導する気もない。特恵制度を利用しての荒っぽい商売で、5年くらいでの短期回収を狙っている。やはり中国のほうがずっといい。 これからは生産が中国で情報はイタリア発、がいいと思う。デザインやセンスはどこもイタリアにはかなわないね。 ――今期の売上高見込みは? 伊藤 例年、総売上高のシェアは上期で45%、下期で55%。今期の第1四半期は年間総売上高の20%で、赤字を昨年の10分の1までに抑えられた。今期の単体での利益計画は361億円で、経常利益が9億5000万円、当期利益が5億円。 従業員数が1500人と多く、平均年齢が44歳と高いため、販管費のわりに利益が出ないのも悩みだが、今期売上高はほぼ横ばいで増収となる見込み。
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