|
今月の記事 ピックアップ |
|
||||||||||||
|
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||
マルケ州と皮革製品メーカー | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
皮革製品メーカー6000社が集積 靴と皮革製品の産地として世界的に有名なイタリア。なかでも北東部に位置するマルケ州は、高級皮革製品メーカーが集まる有数の生産地として有名だ。東にアドリア海を望み、西には世界遺産にも登録されているウルビーノの古城がそびえ田園風景が広がる、歴史と自然にあふれた土地である。 4県からなるマルケ州には、皮革製品メーカー6000社が集まり従業員4万9000人が働く。そのうち全体の90%を占めているのが、アスコリ・ピチェーノとマチェラータの2県だ。トッズ、チェーザレパチョッティ、ファビ、サントーニなど、世界でも屈指の高級ブランドがひしめき、アウトレット店も多い地域である。 05年対日輸出は3688万ユーロ 同州の靴の05年対日輸出額は3688万ユーロ(表参照)で、イタリア全体の対日輸出額の2割弱を占める。ユーロ高の影響や日本景気の低迷などでここ数年はやや減少傾向にあるが、依然アジアでは日本が最大の輸出国だ。 その製品の特徴はハンドメイドを生かしたもの作りにある。皮革製品に限らず高級ブランドメーカーから中小企業に至るまで、どの産業においても手作業の工程が多い。現に全産業におけるハンドメイドメーカーの比率は30%前後と高い比率だ。 イタリア靴業界は中国などアジア諸国への対抗策として、高品質化を推進している。これは伝統技術を最大限に生かした手作業中心のモノ作りで差別化する、という考えに基づいているが、マルケ州はまさにその筆頭に挙げられるだろう。 今回はアスコリ・ピチェーノとマチェラータの2県にある靴メーカーを訪問した。 トッズはマルケ州を代表する高級皮革ブランド。1900年代初頭、現名誉会長のディエゴ・デッラ・ヴァッレさんの祖父がスリッパ屋として創業。80年代に発表したドライビングシューズで一気に世界ブランドになり、2000年にはミラノ証券取引所に上場。世界で2200人の従業員を抱え、06年3月末時点で105の直営店、52のフランチャイズ店を展開する。トッズグループは現在、「トッズ」のほか高級靴「ホーガン」と高級アパレル「フェイ」も有する。 現本社は98年に完成。敷地面積6万3000uのうち、建物部分は2万3000u。オフィスと1万5000uの靴工場が併設されている。製造に関わる従業員160人を含め、500人が勤務する。オフィス内には小児科や保育施設も完備し福利厚生が充実。バッグと革小物はフィレンツェの工場で生産している。 靴のサンプル製作は1シーズン200型
現オーナーのアンドレア・サントーニさんが77年に設立した靴メーカー。紳士靴を中心に、クラシックからカジュアルまで幅広く生産する。「エルメス」のレザースニーカーのOEM生産も担当し、ここ数年で世界的に評価が高まっている成長メーカーである。グッドイヤーウエルトからボロネーゼ、マッケイ、モカシンのほか、ベンティベーニャ、ブラックラピッドなど、多くの製法を駆使することでも有名だ。 同社の成長要因の1つに、高品質と高いコストパフォーマンスを両立させたことが挙げられる。従業員250人が働く本社工場では、製品テイスト別にいくつかのラインに分かれているが、各ラインには必ず手作業の工程がある。たとえば量産ラインでも、最終工程で3段階にわたる色塗りや丁寧な磨きといった手間の掛かる作業を加え、ハンドメイド調の仕上がりにしている。機械を活用しながら、要所要所で職人の手作業を織り交ぜることで、コスト削減しつつ品質を維持しているわけだ。日本の小売価格でも5万円を切る値ごろなものもあるが、こうした細部へのこだわりは徹底されている。 職人育成目的に専門学校を開講 年間生産足数は9万足。そのうち30%がイタリア国内で、輸出は70%を占める。日本を中心としたアジアが30%、EU圏30%、その他10%。直営店は世界で7店舗を展開する。「日本人はサントーニの品質をよく理解しており、輸出先として重要な市場。最新のコレクションではレディスの評判が良かったので、今後力を入れていきたい。また直営店も増やして拡大しくつもりだ」。 今年9月には本社内に職人を育てる学校を開講する。人材育成を目的に10〜15人の規模で始める予定。職人不足が問題視されるイタリア靴業界にあって「人材確保は1つの投資でもあり重視しなければならない」(同社)と、将来を見据えた事業展開も行っている。 ▽ホームページ=http://www.santonishoesusa.com
他の企業は本誌に |