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フットウエア・プレス  2006・10
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 特 集
業態発想で伸びる アパレルの靴販売
アパレル参入の影響と業界の対応

靴専門店も総合からライフスタイル型に  中村岐男(N研=中村靴流通研究所主宰)

一つのファッションビルやショッピングセンターがオープンすると、靴専門店に限らずあらゆるショップで靴を扱うようになっています。扱い量の多い少ないはありますが、ほとんどのアパレル店が靴を置いています。ここでは本格的に靴を展開するアパレル店が増えてきたことの、靴業界に与える影響を考えてみます。


 アパレル店ではさまざまな産地の靴を展開していますが、商品を供給する靴メーカー・卸にとってのメリットや業界への影響は、次のようなことがあげられます。

1 コーディネイト発想の商品企画
多くのアパレル企業はアパレルがメインで、店頭で展開する靴はコーディネイト商品です。一部のアパレルでは靴をメインにしたショップを展開するようになってきていますが、ここでも洋服から発想した靴の企画が基本です。つまり、靴を企画する発想がこれまでと違ってきます。

2 早期の商品発注
 発注のタイミングが確実に早くなります。それだけ早い企画の立ち上げで、生産に向けてのジャッジが早くなります。これは現状の靴専門チェーンがMDを考えるタイミングとは確実に違う点です。

3 リードタイム短縮
早いタイミングでの発注と矛盾するようですが、一方で生産やフォローのリードタイム短縮の要求は強まると思います。これまで業界で常識となっていた生産のリードタイムは通じなくなります。大手チェーンと組んだ場合は1ヵ月以内の要求に応えなくてはなりません。
4 プライスレンジの明確化
靴を展開しているアパレル店を見ていると、ショップ別にプライスレンジが明確になっています。靴チェーンのように幅広いプライスレンジで商品を扱わず、ショップによって価格レンジを限定して商品提案しています。お客も、この店はどの価格レンジの商品を扱っている店かを理解して来店するようになります。
供給側も、これまでのようにどんな価格でもいいわけではなく、相手に合わせた価格の商品を提案することが求められます。

5 データのフィードバック
これまでの靴業界にはなかった、あらゆる面でのデータのフィードバックを得られるようになります。つまり、自分たちの入れた商品が今どのくらいあるのか、どのような売れ方をしているのか、といったデータ提供が増えます。こうしたデータに基づいて生産計画を見直すことも可能です。

6 業界改革の促進
靴業界全体を改革するヒントをアパレルの靴展開から得られることもあると思います。SPA展開、ブランディング、販促など革新的な取り組みについて、現状のものが必ずしも成功を収めているわけでなくても、だからといってそれに注目せずに否定しているだけでは、業界は少しも変わりません。将来、業界にはなかった取り組みが必ず行われると思います。

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