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卑弥呼社長  稲田将人

第二創業期を向かえ、組織で動く会社に
日本のDCシューズ市場をけん引してきた企業の一つである卑弥呼が、6月の株主総会で新体制に変わった。創業者の柴田一社長が会長になり、稲田将人氏が社長に就任した。第二創業期を向かえ、34年目にしてのバトンタッチである。交代の背景とこれから卑弥呼が何をするのか、稲田新社長に聞いた。

ある程度の規模になり切り替えの時期に来た
――会社を引き継ぐことになった経緯からお聞かせ下さい

稲田 柴田会長とは5年前に知り合いました。その時に私はアオキインターナショナル(現AOKI・HD)に役員として在籍していました。その後食品会社に移りましたが、いずれも柴田会長と同じように創業者として、個性の強い方がトップに立っている会社でした。その後も柴田会長とは時々お会いしてきましたが、昨年秋にお会いしたときは切迫感のようなものを感じ、「こういう問題が起きた場合はあなたならどうする」と、まるで口頭試問のような話し合いが延々続きました。その話し合いの場を通じて、現在のトップに立つ方の心情と会社の状態がどういうものかを理解しました。
そこで、「いまこんな問題が起きていませんか」と、いくつかの指摘をさせてもらいました。これまで勤めていた会社もそうでしたが、ある程度の規模になると、起業して成長していたときとは、やり方が変わり、大手に成長するための別の経営システム論が必要になります。つまり、卑弥呼もビジネスモデルの切り替え時期にきていることが明確に伝わりました。

――卑弥呼の課題はどこにあると見ていましたか?

稲田 柴田会長は創業者として、そしてファッションビジネスの人として、良い商品をつくることに熱心でした。それ自体は最も重要なことに違いありませんでしたが、ファッションビジネスにおいては、同時にMDコントロール力も重要です。MD体系の構築は充分に進んでいなかったために、いい商品があっても適正な量の発注がなされていなかったり、売場ごとの最適な商品構成ができていなかったりと、まだまだ改善の余地がありました。卑弥呼のブランドバリューの観点からも、改善すべき点を改善した方が、お客様にとっての価値はまだまだ高まると考えます。それは、市場を充分理解した上で商品を開発し、その価値を伝えているのか、適正な量を発注し、適正な売場に配分しているかということです。ここに小売業となった卑弥呼の改善余地がありました。課題点はあっても、それを補って余りある力を持っていたために、このようなことに手をつけずにこれまではやってきたのだと思います。

まずは土台を固め 仕組み作りが必要

――90年代にインポートシューズの勢力拡大で、DCシューズは大いに攻められた。ここでも卑弥呼はしぶとく生き残ってきました。しかし、このことが業態開発への取り組みを遅らせたのでは?

稲田 私見も入りますが、業態発想の視点よりも商品、ブランド価値の向上が優先されていたと思います。そしてその前提となるビジネスモデルの完成度を高めてきた歴史だと思います。単に供給量(足数)だけで考えると、すでに飽和になってしまっている婦人靴売場においては、新しい価値の提供の仕方について、業態戦略を含めて、今後の展開を考えなければなりません。


続きは本誌に

卑弥呼HP=http://www.himiko.co.jp/
稲田将人(いなだ・まさと) プロフィール
1959年生まれ。83年豊田自動職機製作所入社、その後マッキンゼーアンドカンパニー、アオキインターナショナル専務、ロック・フィールド取締役、日本コカ・コーラヴァイスプレジデント、ルネット、ワールドコモディティ事業部副事業部長を経て、07年3月卑弥呼顧問となり、6月社長就任。