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特集 ハズレがない地元店のSC出店
SCを取り巻く市場環境の変化
大型モールから中小型にシフト
GMS最大手のイオン(千葉・美浜区)は2008〜10年度までの中期計画骨子を明らかにしたが、その中で国内出店の抑制と既存店のテコ入れをうたっている。改正都市計画法などまちづくり三法の施行を前にした駆け込み出店で、08年から09年前半は年間十数店舗の出店ペースだが、それ以降の出店速度は一気に落ち、GMSは1ケタ出店になるとする。
規模の大きい一部のGMSは直営部門を縮小し、外部テナントに貸すことなども検討している。ここ何年かの年間十店以上という急激なSC出店が生産性の低下を招いており、今後は売上げの伸びより収益性の向上を重視する戦略にシフトするのである。イオンの方針転換は人口減少や社会構造の変化を背景とした国内消費市場の成熟化を象徴する動きともいえる。日本もモール型大型ショッピングセンターは成熟期に入っているのである。
 アメリカでの購買傾向は80年代後半から、ショートタイムショッピング、低価格志向、ブランドへの執着というように変化しはじめ、徐々にミドルプライス中心のリージョナルショッピングセンター(広域大型SC)から、ウォルマート、ターゲットといったディスカウントストアやアウトレットモールへ買物の場は移っていった。
 すでにアメリカ市場で95%を占めるといわれる中小型SCやライフスタイルセンターが今後、日本においてもSC開発の主流になると思われる。しかし、同タイプのSCは月坪当りの売上げが15万円と低いのに対し、不動産費3万円、人件費を含めて5万円とハイコストであり、必然的にシステム化、チェーン化、バイイングパワーが必要になる。

狭まるSCの商圏範囲と少子高齢化
ここで、SCを取り囲む環境変化の実態を見る。
06年以降オープンしたSCを見ると、モール型SCでも当たり外れがある。その最も大きな要因は商圏は狭くなっていること。SC募集案内には車で30分圏とか、10km、15km圏と書かれていることが多い。しかし実際は競合するSC誕生による商圏の分断や、大きな川にかかる橋や渋滞の激しい幹線道路により、設定する集客が困難な場合が多い。
確かに2000年頃はモールの魅力、大きな駐車場により、当初設定の半径5km圏を超えて、10〜15km圏からの来店も多かった。しかしその後の競合SCのオープンにより、10km圏以上は商圏から離脱している。実際、1000億円の実績を誇る玉川高島屋SCの来店客の80%は5km圏である。都市部で5km、ロ−カル立地で10kmを基本商圏として考えるべき状況になっている。
次に人口動態の変化がSCに影響を与えそうだ。近年、少子高齢化という言葉を新聞紙上でよく見かけるが、意味するところは人口減少社会の到来であり、これはマーケットの縮小を意味する。イオンモールの主要顧客ターゲットは25〜35歳を中心にその前後10歳である。ここで20〜44歳の人口変化を見ると、05年の4900万人が10年後には4400万人と10%も減ってしまう。逆に60歳以上のマーケットは拡大する(表1)。すると現状のSCのMDが合うとは思えない。また、長い距離を歩かされる巨大モール型SCも高齢化に適すとも思えない。
 さらに、今の20代は車もパソコンも欲しがらない世代だといわれる。携帯電話が手放せない世代であり、携帯を使ったショッピングが普通となれば、リアル店舗のマーケットは縮小してしまう。
  商業統計によれば小売業全体の年間販売額は99年から下がり続けているにもかかわらず、売場面積だけは拡大している。坪効率は91年の水準から既に30%も下がって、04年は月坪25万円である(表2)。今まではSCの出店によって周辺の零細店が淘汰されたが、今後は実力店同士の激烈な競争になる。
07年のSCの総売上高は27兆1633億円、前年比1・2%増である。しかし、既存ベースでは0・04%とわずかではあるが3年ぶりに前年を下回った。大型SCの出店は今後も続くとみられることからも、効率の低下はさらに続きそうである。
続きは本誌に

表1 年齢別人口推移
2005年 2010年 2015年 2020年 05/20比率
0〜4歳 5,578,087
5〜9歳 5,928,495 5,578,087
10〜14歳 6,014,652 5,928,495 5,578,087
15〜19歳 6,568,380 6,014,652 5,928,495 5,578,087 84.9%
20〜24歳 7,350,598 6,568,380 6,014,652 5,928,495 80.7%
25〜29歳 8,280,049 7,350,598 6,568,380 6,014,652 72.6%
30〜34歳 9,754,857 8,280,049 7,350,598 6,568,380 67.3%
35〜39歳 8,735,781 9,754,857 8,280,049 7,350,598 84.1%
40〜44歳 8,080,596 8,735,781 9,754,857 8,280,049 102.5%
45〜49歳 7,725,861 8,080,596 8,735,781 9,754,857 126.3%
50〜54歳 8,796,499 7,725,861 8,080,596 8,735,781 99.3%
55〜59歳 10,255,164 8,796,499 7,725,861 8,080,596 78.8%
60〜64歳 8,544,629 10,255,164 8,796,499 7,725,861 90.4%
65〜69歳 7,432,610 8,544,629 10,255,164 8,796,499 118.4%
70〜74歳 6,637,497 7,432,610 8,544,629 10,255,164 154.5%
75〜79歳 5,262,801 6,637,497 7,432,610 8,544,629 162.4%
80〜84歳 3,412,393 5,262,801 6,637,497 7,432,610 217.8%
85〜89歳 2,926,704 3,412,393 5,262,801 6,637,497 226.8%
90〜94歳 0 2,926,704 3,412,393 5,262,801
95〜99歳 0 2,926,704 3,412,393
100歳以上 0 2,926,704
20〜44歳人口 42,201,881 40,689,665 37,968,536 34,142,174
96.4% 93.3% 89.9%
2005年国勢調査より