今月の記事・ピックアップ 2008・10
 HOME > フットウエアプレス >  ライフスタイルバッグの開発現場 「シール」

ライフスタイルバッグの開発現場
ジャーナリスト 三田村蕗子


「シール」(モンドデザイン)

 廃タイヤチューブで存在感を見せる

リサイクル素材を活用したバッグを目指す
何か社会的に意味のある仕事をやってみたい……。この思いを実現しようと、堀池洋平さんは広告代理店勤務から転身を図り、06年にモンドデザインを設立。07年に廃タイヤチューブをバッグ素材としてリサイクル活用したブランド「シール」を立ち上げた。
 もっとも、堀池さんは最初から廃タイヤチューブを素材として考えていたわけではなかった。
「ウエットスーツや建築現場で使用されているシートなど、いろいろな素材を候補として挙げ、調達や加工しやすさという項目で点数をつけていきました。結果、もっとも点数が高かったのが廃タイヤチューブだったんです」。
 素材は確定したものの、堀池さんの前には難問が山積みだった。素材を安定的に供給できる業者はどこか、タイヤチューブを洗浄するにはどこに依頼すればいいのか。前例がないビジネスだけに、どこに聞くこともできない。堀池さんは飛び込みで業者を探し、苦労の末に素材の調達から裁断、洗浄、型紙起こし、縫製といった一連の流れを構築した。
現在、廃タイヤチューブを提供しているのは産廃業者、洗浄しているのは食品トレイを専門に扱っている業者だ。裁断はパートの女性を雇って手作業で行い、縫製はバッグの職人に依頼している。

コラボレーションモデルが知名度を上げる
 バッグを製作する上で堀池さんがもっとも重視しているのが、素材の持ち味を殺さないという点だった。
「水を通さず丈夫なのがメリット。ただし、タイヤは円状のため平坦な型抜きは難しい。うねりが出ていますが、むしろこれを生かそうと考えました。タイヤの湾曲を生かして自然な丸みを出すようにしています」。
 タイヤ素材はカチッとしたフォーマルなバッグにはしづらいが、丸みのあるやわらかなフォルムのバッグなら向いている。多くの重ね縫いは難しく、白いステッチはグレーに変わってしまうというデメリットもあるものの、堀池さんはこうした制約を前向きにとらえて「シール」らしさを追求していった。

続きは本誌に