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特集
ザ・グローバル最前線
09年の靴業界のグローバルビジネスはアジアの年になる。コストアップがいわれる中国だが、その成熟した生産基盤はどこも代わることはできない。また、LDC(後発開発途上国)での革靴生産も依然、日本には欠くことができない生産拠点である。さらに注目を集めているのが、EPAの発効が進むASEANだ。今年は靴生産が多様化しアジア各国で本格的に始まる年といえよう。特集では資本投下しての工場進出、中国・上海を中心とした小売進出の現状を見る。同時に中国での商標権保護の問題を解説する。


工 場 進 出

クラウン製靴 商社と合弁工場を設立。地元工員の確保で技術定着
 クラウン製靴(東京・調布市、TEL:042・483・9211)は2000年に設立した靴工場の天津泰拓靴業有限公司に出資している。同工場は同社や商社など日本側4社で60%、国営企業など中国側2社で40%を出資する合弁だ。
クラウン製靴は20年以上前から中国で委託生産を行ってきたが、長期的にみると品質が安定しないという問題を抱えていた。委託によるプルオーバー生産の難しさもあり、資本投下して工場設立に踏み切った。商社と合弁を組んだのは、TQ枠確保の目的もある。
2年前からは、堀内捷靖社長が董事長総経理に就任。同社社員が毎月工場に入り、生産管理と工員の技術指導を行うなど、全体を取り仕切っている。
 工員は500人。設立当初から働く地元人が多く、定着率は高い。「賃金は8年前の倍だが、技術レベルは格段に上がった。1人当たりの生産量が増えて効率性が向上。全体で見れば賃金上昇は大きな問題になっていない」と堀内社長は説明する。靴工場が集まる江蘇や広東ではなく天津に工場を構えたのは、日本から近距離であることと同時に、地元人の確保を意識したからだ。
現在は年間60万足を生産し、そのうち半数が同社商品。製法はセメントからマッケイ、ステッチダウン、オパンケと多彩。グッドイヤー以外はすべてこなす。「アジア各国間でEPAやFTAが締結される日も遠くないはず。そうなれば天津工場以外のアジア生産や中国内販も視野に入ってくるだろう」。

名称

天津泰拓靴業有限公司

所在地

中国天津市

設立年

2000年

従業員数

500人

生産規模

年産60万足(うちクラウン製靴分は30万足)

生産品目

半製品60%、完成品40%(紳士革靴90%、婦人革靴10%)

日本での中心上代

2万1000円



パンジー ISO複数取得の徹底した管理体制
 パンジー(大阪・浪速区、TEL:06・6631・0351)は94年に独資で中国自社工場を設立した。立地は車で上海から5時間の地点で周辺に靴企業は少ないが、沿岸部で物流の便が良く労働力も確保しやすい地区を選んだ。敷地は1万坪。

工場では設立当初から品質管理の徹底や衛生環境の改善に徹底して取り組んでおり、これらに関する国際規格ISOも複数取得。従業員に掃除や整理整頓を徹底させ、衛生的な環境を保たせることが品質への自覚や効率化にもつながっており、従業員の定着率も非常に高い。
生産は日本市場に即した体制で行っており、日本での受注状況をインターネットで情報共有しながら、そのとき最も必要な商品から生産していく。また和歌山県にある4つの自社工場とも連携し、独自の国際分業体制を築いている。
 全商品とも自社工場生産で、比率は中国90%強、国内10%弱。材料の大半は日本から送るため、「中国製に見えない」と定評のある仕上がりだ。底材のみ20〜30%を現地調達する。
商品の大半が完成品だが、色やサイズを調整生産する小ロット対応品は中国でアッパーを縫製し日本で圧着している。
また同社は中国ほか韓国、香港、シンガポール、台湾での拡販も著しく、中国工場は生産規模をさらに拡大する意向だ。国内工場の生産比率は下がるが、「中国は先行きの見えにくい国。保険というわけではないが、国内の生産拠点は今後も維持していく」(林敬彰企画開発マネージャー)。

 

名称

チャイナ・アペックス(淮安華頂鞋業有限公司)

所在地

中国江蘇省淮安市

設立年

1994

従業員数

700

日産

1万足まで可能

生産品目

完成品ほぼ100

生産品

婦人70%、サンダル・スリッパ30

中心上代(円換算)

韓国60007000円、香港・中国4900円、シンガポール3900円、台湾5000円