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ライフスタイルバッグの開発現場


「セルヴィッジ」 (マルヨシ)

働く女性に支持される真鍮使いが印象的なバッグ

学童メーカーが02年に立ち上げた自社ブランド
馬の革を使ったエッジの効いたデザイン、A4の書類が楽に収納できる容量、会社帰りのプライベートファッションにもマッチするスタイルで、働く女性の支持をがっちりと獲得しているのがセルヴィッジだ。  
デザインを担当するのは、御堂島理代さん。学童向けのバッグやOEMを主力とするマルヨシに入社し、OEM部門でサンプル制作を手掛けていた御堂島さんは、02年に社長から自社ブランドの立ち上げを打診される。  「最初はびっくりしましたが、とにかく始めるしかない。どんなバッグにしようかと思った時、自分と自分の仲間が心から欲しいと思えるバッグを作ろうと考えました。イメージしたのは軽くて、仕事用に使えて、デートに持っていっても格好が良い、ストレスのないバッグです」  素材とおおよそのデザインは決まった。ではパーツはどうするか。御堂島さんは真鍮の鋳物の利用を思い立つ。「緑青が出ても拭けば元に戻る。錆びない真鍮は、働く女性をターゲットにするバッグにふさわしい」と考え、カシメやリング、バックルとして活用。セルヴィッジのアイコンに仕立て上げた。  

全9型(3シリーズ×3型)で展示会デビューを果たしたセルヴィッジの実力はすぐに高い評価を得る。業界では名の知れたビッグバイヤーから「エッジーで軽く、値段も手頃でカラーも可愛い」と絶賛され、オーダーが舞い込んだのだ。「最初からすぐ注文が来るとは思っていなかったので、驚きました」(御堂島さん)  しかし、そこからトントン拍子に進んだわけではない。一時は、販路を広げようと合同展示会に積極的に参加するあまり、企画や生産が追いつかず、息切れしたことことがあるそうだ。  この苦い経験を生かし、以後は個展だけに絞り、ゆるやかなペースで取引先を増やしている。現在の取引先は、アパレルメーカー系のセレクトショップや地方の主要バッグ専門店など約50社。昨年の2月から伊勢丹新宿店での扱いもスタートした。

定番人気のポニー革トートは「旬」にリモデル
 平均価格は3万円前後。タンニンなめしのポニー革を使った大ぶりのトートバッグは代表的アイテムだが、御堂島さんは定番的な人気を得ているバッグであっても、納得できない点があれば見直しを図り、リモデルを行っている。  例えば、05年に投入したトートバッグ「ポニータン」は、かぶせ部分は中が見えて美しくない、持ち手の先端部がはねやすいといった問題点を解決しようと、思い切って3年後に一新した。生まれ変わった「ポニータン」は、かぶせ部分を広くとってあるので、もう中が見えることはない。持ち手に芯材を入れることで「はね」問題も解決した。  「前はバッグとしては子どもっぽいというか、チープな表現でした」と御堂島さん。リモデル後のバイヤーの評価は高く、コンスタントに追加発注が続いている。作り手側が自己満足に陥らず、醒めた目で製品を見直す姿勢が、常に「旬」のブランドに保っているのである。

   

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