今月の記事・ピックアップ 2010・12
 HOME > フットウエアプレス >  特集 10年 靴・バッグ・ウェルネス市場の動き  業界のこの1年 
特集 10年 靴・バッグ・ウェルネス市場の動き

業界のこの1年
 市場低迷が続き、依然、低価格化が進行。そんな中で靴、バッグとも機能搭載の商品が人気に。さらにコンフォート販売はトータルに健康提案するウェルネス展開に変化してきた
08年後半から続く景気低迷は今年も回復せず、市場では依然、単価は低く抑えられ、客数も伸びなかった。そんな中で靴、バッグとも機能搭載の商品は売れた。グローバルな動きでは、生産環境が変わりつつある中国からの納品が混乱し、新たな生産拠点を求めてアセアンでの工場設立も見られた。


中国に次ぐアジアの産地開拓が進む
  
今年は中国での靴生産が春先から混乱した。2月の旧正月を境に人手不足で生産が計画通り進まず、納品が滞るという事態が発生した。これまで豊富な内陸の労働力を活用してきた沿岸部の工場だが、内陸部にも雇用の場所が増えていることで、旧正月で帰省した人たちが戻って来ないというケースもあったという。また、新たに雇った工員で工場を動かすことで、質、量とも低下は避けられず、納期遅れにつながっている。この状況は秋の国慶節後も見られた。さらに工場の人件費アップが続くなど、中国の経済発展とともに靴の生産環境は変わってきている。
こうした事態に対応するため、中国に生産委託する日本の企業の中には、春物生産の時点で春夏商品をあきらめ、前倒しで秋冬生産に取り掛かったところもある。また、価格や量よりも品質重視で、生産委託の工場をすべて入れ替えるという対応を取ったところもある。

LDCやベトナムにも工場設立
中国生産の環境変化の中で、アジア諸国に新たな産地を求めるチャイナプラスワン≠フ動きも見られる。
LDC(後発開発途上国)からの輸入拡大もその一つ。特恵国であるLDCからの靴輸入は2000年に入って増え出し、既にカンボジアは中国に次ぐ革靴の輸入国になっている。しかし、これまでは大手企業が中心だったが、最近は小売チェーンもPB商品の輸入するなど多くの企業が参入するようになっている。
カンボジアは台湾系の工場が多いが、ここにきて日本の企業も独資で工場設立するところも出てきた。09年末に新興製靴工業の関連会社の新環貿易(東京・墨田区)が、現地法人クリーン・サークルを独資で設立。上代1万円前後で売れるエレガンスのヒールものを主力に、日産400足の規模で生産を始めている。これまでの委託生産から一歩進めた動きは、特恵国としてのメリットのほか、中国のようなコスト上昇の懸念が少ないことも挙げる。
09年末にはベトナムとのEPA(経済連携協定)が発効し、同国がチャイナプラスワン≠フ有力な靴生産国として浮上している。既に靴輸入量では中国に次ぎ、革靴でも6位の国であるが、日本の工場進出は少なかった。これがEPA締結を機に、独資での工場進出が増えた。
3月に開所式を行ったのが企画卸のエルピーディーの現地法人ビナモードインターナショナル。3期に分けて工場建設を進めているが、3年後には月産6万足の規模を目指している。同社は進出理由としてEPAのメリットに加え、中国と比べて工賃が安く、若い人材が豊富なことを上げる。また、欧米輸出の実績で一体のレベルにあることも、ベトナムがチャイナプラスワン≠ノなる理由だ。まだ日本からの工場進出は2ケタには達していないが、税率の段階的な引き下げに伴って、さらに増ええることは予想される。




利便性高まる靴のネット通販

 翌日お届け、送料無料、30日間返品無料。インターネット通販大手のアマゾンジャパンが運営する靴・バッグ専門サイト「javari.jp(ジャバリ)」で打ち出したこのサービスは、靴のネット購入の利便性を一気に引き上げた。自宅にいながら何足も試しばきできるシステムを作り上げ、サイズの不安解消という難題に一石を投じた。
 品ぞろえも立ち上げ当初の約3倍、900ブランド・1万デザイン以上に拡大。メンズ、レディスからベビー、デザイナーブランドに加えて、今春から“スポーツ&アウトドア”カテゴリーを新設した。サービスと商品の両面で訴求力を高め、新規ユーザーを獲得している。
 日本最大のネットショッピングモール「楽天市場」も昨年8月から靴ジャンルを独立。靴に本腰を入れ始めた。6500万人という膨大な会員数、売るためのノウハウの提供、販売促進と顧客分析システムの充実を強みに靴ジャンルの出店を拡大。店舗数は昨年末から今年5月末までで70店(社)増えて約600店になった。サービス面では送料無料、10日間返品無料を昨年秋から開始。前日正午までの注文で翌日配送する「あす楽」も加えて、参加店を順次拡大。検索機能も充実させるなど、価格以外の付加価値向上に取り組んでいる。

1社で20店舗
 靴小売にとってもネット通販は、立地や時間に関わらず売上げの取れる“有力店”に成長。単独店ではネット売上げが実店舗を上回る店も珍しくなくなった。
東京・亀有に実店舗を構える靴のリード(http://www.rakuten.co.jp/kutu-lead/)はその典型だ。ネット店の多店舗化で成功した同店は2000年の開始以来、右肩上がりに売上げを伸ばし10年9月期は前期比25%増の5億5000万円を達成。今年中に20店舗体制にする計画だ。25cm以上の高感度インポート婦人靴に特化した札幌のセブン・アンド・ア・ハーフのように、自社サイトで個性的な品ぞろえを追求して全国から集客する店もある。
 大手勢も今年から本格的な展開に乗り出し始めた。チヨダは自社サイトのほか楽天に3店、アマゾン、ヤフーにも出店。エービーシー・マートも自社サイト、ヤフー、アマゾンの3店に増えた。
現在、靴のネット通販規模は約800億円と言われている(アジアリング・水飼茂代表の分析)。靴小売からネット専業、アパレルなどの異業種を巻き込み競争は激しい。





この他の特集記事は本誌に