今月の記事・ピックアップ 2011・1
 HOME > フットウエアプレス >  これで、ロングセラー「ニューバランス」M1400 
これで、ロングセラー

「ニューバランス」M1400 (ニューバランスジャパン) HP

ブランドの歴史とストーリー性、メイドインUSAの価値を背景に
16年間愛され続けるスニーカー

アウトドアシューズの世界は日進月歩。絶えず新機能やデザインをまとった新商品が登場し、それに押し出されるかたちで表舞台から消え去るモノも多い。その中にあって当初はランニング用として開発されたが、今は主にタウン用として愛され、生き長らえているシューズがある。「ニューバランス」の代表作のひとつ、M1400がそれだ。オリジナルが発売されたのは94年のこと。すでに16年ものロングセラーを記録する逸品である。
 発売に至るまでは伝説的ともいえる経緯がある。M1400は、そもそも85年に発売されたメイドインUSAの、M1300の後継品として開発されたもの。M1300は当時EVAが一層でカットしてあるだけのミッドソールが主流だった中で、一体成型の二重構造によるミッドソールを採用したことで話題を呼んだ商品。EVAとポリウレタンというふたつの素材をそれぞれ包む込む形状にした、当時としては画期的な構造。かのラルフ・ローレンに「雲の上を歩いているようだ」とそのはき心地を評されたほどだ。
M1400はそのテクノロジーをさらに進化させた新商品として構想がなされていたが、当時は量産が難しいということで一度立ち消えになり、先にM1500というシューズが89年に出された経緯がある。その後、量産化の目処がついたことで、M1400は94年にようやく市場への登場を果たしたという。

   
 価格はアッパーにピッグスキンを採用したモデルが2万2000円(写真右)、ピッグスキンスウェードとメッシュのコンビのモデルが1万9800円。グレーがニューバランスブランドのイメージカラーになっていることもあり、数量は後者のスティールブルーが多く出ているそうだ


現在も売れ筋上位を維持
 ロングセラーの理由は大きく分けて2つある。ひとつはそのはき心地の良さからランナーのみならず、立ち仕事をしているワーカーなどランニング以外の用途にも利用されて来たこと。徐々にファンの裾野が広がってきたことで、いまのタウンシューズ的な使い方にも自然に馴染まれてきたわけだ。
 ふたつめは先の開発のエピソードを含めた、この靴ならではストーリー性にある。同社の100年以上もの歴史と、M1400が今も全てアメリカでつくられ続けているという「メイドインUSA」というバックボーンがあり、このブランドイメージを愛しているファンが多い。価格は2万円以上するが、価格に見合う価値を見出している層には強い吸引力がある。じっさい購入層のメインは30代で、M1400のストーリー性や「メイドインUSA」の価値をわかる方々が多いという。
 販路は主にセレクトショップやスニーカーショップ。量的にはここ数年フラットな売れ行きを示していたが、2010年にはメディアから採り上げられる回数も増えるなどフォローの風も吹いた。これにより前年の09年に比べて数字も上昇。同社が東京と大阪で展開するオフィシャルショップでも売れ筋1位の座に輝いたほど。16年前のモデルであるM1400の完成度と人気の高さを裏付けるカタチになった。
 同社ではM1400を定番モデルとして大事な財産として守っていく考え。併せて「メイドインUSA/UK」によるテイクダウンのモデル等があることから、今後はそうした部分を20代の若年層に向けてアピールしていく。購買層の間口を広げることで、ニューバランスブランドやM1400のようなヘリテージのラインの存在を徐々に浸透させてゆこうという狙いである。(取材・文/宮間仁)