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ルート2015――アディダスの世界戦略

   

日本の小売市場への影響は

このシリーズはニューヨークで進行しているグローバル・リテーラーの最新動向をお届けするのが目的だが、今回はブランドメーカーのアディダスを特別ケースとして取り上げる。アディダスは10年11月、中期5ヵ年計画「ルート2015」を発表した。今後5年でナイキを抜いて世界最大のフットウエアブランドメーカーに躍進するというプランで、10年5月にナイキが発表した「グローバル・グロース2015」に対抗する成長戦略である。
ナイキの成長戦略は日本の小売市場に大きな影響を与えた。アディダスの「ルート2015」は、それ以上の影響を日本のフットウエア小売チェーンに及ぼすだろう。そこで、今回は小売への影響波及をポイントに、アディダスの成長戦略を分析する。

アディダス成長5ヵ年計画
アディダスの「ルート2015」は今後5年間でグループ売上げを170億ユーロ(240億ドル)に拡大するという計画である。現状の売上げは119億9000万ユーロだから、売上げ目標はほぼ50%増となる。
アディダスは売上げ目標達成のために、アメリカ、ロシア/CIS(旧ソ連諸国12ヵ国の共同体)、中国に重点投資し、これらの地域で成長を促進する。現在アディダスの米国売上げは23%、中国8%、ロシア/CIS/東欧12%で、3地域で合計43%を占めている。中国とロシア/CISは今後の成長期待地域であり、アメリカはナイキとの対抗上、是非とも強化したいエリアである。この3地域を強化できれば、ヨーロッパと日本市場の業績スローダウンもカバーすることができる。
中期計画ではブランド戦略も大幅に改善する。現在アディダスブランドは総売上げの73%を占め、アディダス中心のビジネスになっている。しかし今後は手持ち4ブランドを複合運用するマルチブランド戦略に切り換える。
マルチブランド体制はスリーストライプ(パフォーマンス)、トレフォイル(スポーツスタイル)、NEO(ファスト・ファッション)、リーボックの4ブランド構成で運用する。リーボックはフィットネスとトレーニング分野をカバーし、アメリカ市場ではナイキ攻略の切り札になる。
計画どおりに売上げ目標が達成できれば、先行して発表されているナイキ成長戦略の売上げ目標は230億ドルを上回り、世界ナンバーワンに躍進する。


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