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大型店でもここまでやる! 
 幼児・子供シューフィッターの接客販売
 講師:佐野 生子店長
(長野・安曇野市/シューマート・アミーホダカ店)

一緒に遊ぶことからスタート
 怪獣のような、宇宙人のような、でも天使の子供たち。幼児・子供シューフィッターとしてその足を測ることは、とても楽しい反面、難しいことです。
 まず初めてご来店になる親子連れのお客様には、そのお子様と手遊びをして、まず仲良くなれるように努めます。歌いながら謎かけをして、おへそやホッペにふれながらスキンシップを図るんです。こうしてお客様と仲良くしていくことはとても大切です。
 じつは私の中では「裸足がいちばん」という考え方もあるんです。靴や靴下は子供にとっては異物であり。与えるのはなるべく遅い方がいいと思います。ですからふたつの手で何かにつかまり、二足で立ち、ふらつかない状態にまで発育する。そしてそこから一歩踏み出す、移動する。さらに3歩、10歩と自分の足で歩行を試みるようになる。この段階になってはじめて靴をおすすめするようにしています。
 靴選びの際の余裕寸とフィッティングについて触れますと、靴下カバーのように「ピッタリがちょうどいい」という親御さんがいらっしゃいます。ですが、販売する立場としては捨て寸を含めた余裕寸を取ってすすめています。1歳未満は5mmくらい、3歳までは7mm、その上の4〜6歳のチャイルドで9mm、ジュニアの24cmくらいまでで1cmです。
 また、お子さんは靴下や靴をはいているときは、指が結構縮んでいます。ですから、私の場合、指を開かせるために「お手てがパッ!」「アンヨもパッ!」というのをやります。手と足は連動しているの、足だけでパッとやるよりは手も一緒にあると、足が開きやすくなります。
 歩き始めの3ヵ月は、お子さまの腕の位置に注目してください。まず両手を骨盤の広さに広げたまま上げて歩きます。一歩ずつ重心を移動させながらの、かなり効率の悪い歩き方なのです。ただ骨盤の前に足を出して歩くだけなので、一歩一歩の歩幅がとても小さいです。次第に骨盤がしっかりして股関節が動いてくるようになると、足関節も動いてねじれが発生するようになり、ハイガード、ミドルガード、ローガードというカタチで歩行が進化してゆきます。もしローガードのお子さんに靴を合わせたときに、ミドルガードになってしまうときは、その靴合わせはちょっと間違っているのかも? といえるかも知れません。


歩いてもらい、再びフィッティング
 はき方も大事になりますね。
『踵にコンコン!』と。そしてベロを直して足の方にぴったりとフィットさせます。『マジック(ベロクロ)ピッピッ!』。『ピッピッ!』はマジックがふたつあるということ。反対側も『踵にコンコン!』、ベロを直して『マジックピッピッ!』です。立ち上がた後ですが、たとえば1〜3歳くらいの場合は歩く間につぶれますので、その場合もう一回留め直します。マジックが一本だけという靴もありますが、個人的には2本のモノのほうがいいのかな、といつも思います。
 足の計測にはフットゲージとメジャーを使います。足長、足囲、足幅を測り、そのサイズから、JIS規格の靴のサイズ子供用という表にあてはめながら的確な子供靴がすすめられるように努めています。小さいお子さんはつま先に体重がかかっているので、メジャーをつま先からはなく、踵から入れることもあります。泣いてしまったら、お母さんのほうを向けて踵から入れて測るとか……。ちょっとシューフィッター的ではないのですが、こういう工夫もありではないかな、と思っています。
 計測の結果、幅があればうんと薄い靴、対して幅が細ければ厚みのある足ということになるんですね。また右足と左足をそれぞれ測り、つま先のかたちや、どの指が長いかなどを見極め、それらを加味しながらお母さんに選択をしていただくようにしてます。そのときにお子さんには「ちゃんとマジックで踵をあわせて留める」ようにと、お母さんにも「ヒモ靴はちゃんと縛ろうね」というお話をさせていただいています。はいたら必ず歩いてもらいます。歩くと多少指が伸びるので、それからフィッティングします。この過程も大事なことのひとつです。
 靴を提案するときは、はいてきた靴からの情報も重要になります。はき口の変形の度合いを見るのですね。O脚だと外側のくるぶしのあたりが広がりますし、外反しているとはき口の真ん中よりちょっと後ろのあたりの舟状骨が広がります。
最近は「O脚でありながら外反している」というお子さんがたくさんいます。そういう子は足長、足囲、足幅と一ヵ所測るごとに座ってしまう状況になってしまう。ちゃんと立て、ちゃんと座れるというのはとても大事なことだな、といつも思わせられる事例です。
 ちゃんと立てないお子さまが多くて「それはどうしてかな?」と考えることもあります。 踵骨(しょうこつ) の外反、ハイアーチ、足の長さが違うなどが考えられますが、その原因は靴下や靴が合わないせいもあるのだと思います。


成長期は左右のサイズが違う
靴下のサイズはとても大事で、小さすぎれば踵の部分が足の裏に入ってしまいますし、大きなものであれば歩くと踵の上に回ってしまいます。これを多少誇張していえば、脚層や土台の高さが違うことになってしまうので、無視できません。靴下のなかには15〜21cmまでOKというようなストレッチのすごく効いたものがありますが、15cmのお子さんならまだいいかも知れません。しかし18cm以上になるとストレッチが効きすぎて指が丸まってしまいます。足のサイズにきちんと合う靴下、なかなかないんですね。「誰かつくっていただけないだろうか?」と思います。
 また靴をはくときに踵を踏んでいると、合わない靴下をはいているときと同様の問題も出てきます。最近は足が痛いというお子さんの事例では、中足骨骨頭痛 (ちゅうそっこつ こっとうつう)とか、足底腱膜炎(そくていけんまくえん)といった病名の子供が多くいます。お医者さんに受診することをすすめますが、売場ではインソールに穴を堀り、そこをやわらかい資材で埋め、アーチを支えてあげるような工夫をしてあげることもします。
 新しい靴ははき方がとても大事です。一人のお子さんの足の計測を、2ヵ月から3ヵ月くらいのペースで行っていますが、そのときはいている靴をフィッティングして、まだはければ「今日は買わなくていいね」というお話をすることもあるます。
 最近、個人的にひとつ気がついたことがあります。数値があるわけではないのですが、子供の足には秋と春に成長期があるんです。この時期の足は左右がいっしょに大きく成長せず、右と左のサイズが異なります。足長が右と左で5mm違うというのが当たり前で、なかなかフィッティングしにくいんです。ですから4月の入学需要に対して、2月の時点で買いにきても売らずに帰っていただくことがあります。そして「足が合ってくるのは3月中旬以降になりますから、それ以降に来ていただけませんか」というようにしています。
 子供の足は草が大きくなるのと同じ時期に伸びるようです。うちの庭には福寿草とクロッカスが植えてありますが、クロッカスが咲く頃に子どもの足の左右が合ってきますが、今年はとても遅かったですね。子供の足に関しては、まだまだ自分でもわからないことばかりです。
 怪獣のような、宇宙人のような……でもやっぱり天使である子供たち。その足を測ることってとても難しい。こうした日々の中で、お店から帰る時は、泣いていたお子さんであっても『バイバイキン!』と声をかけると『バイバイ、またね!』と返事をしてくださいます。ほんとにこの仕事をしていて「ああよかったな」と思う一瞬ですね。