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  健康やダイエットのためによいとされるウォーキング。その言葉はすっかり社会に定着している。日常、ウォーキングをしている人々を見かけるのも当たり前の時代になった。自治体などによる地域的なイベントも花盛りだが、ここに来てウォーキングに関するイベントにも新しい動きが芽生えつつある。「ウォーキング+食」「ウォーキング+婚活」といったコラボ型の企画イベントが登場しはじめている。

栄養講習つきのランチが楽しめる

 食を通して健康を提案するリデリシャス(東京・港区)と日本ウオーキング協会は、協業企画で「ランチ&ウォーク」を開催した。ウォーキング指導士のコーチを受け、歩き、その後に栄養講習つきのランチを楽しむというパッケージ型のイベントである。1回のウォーキングで歩く距離は5q弱。通常、日本ウオーキング協会のコースは最低でも10q、長いと50qというのが一般的だが、このイベントでは短めにした。普段着感覚で参加できるように配慮したからだ。

「10qも歩きたくはないが、健康には気をつけているという方に合わせて設定にしました。ふだん靴でいかに効果的な歩き方ができるかを重視し、日常で親しめるウォーキングの枠内にとどめたコースにしています」(健康ウオーキング指導士・歩行アドバイザー・星政和さん)

 イベント1回あたりの募集人数は20人。今年スタートしたばかりだが、すでに2回開催されており、12月には3回目が開催される予定だ。コースは、1回目が東京・代々木公園から赤坂まで、2回目は東京・九段下の北の丸公園から四谷まで、と毎回コースはもちろん、ランチの場所やメニューも変えている。イベントの発案・企画をしたリデリシャスは、そもそも「食事制限されている方に食の面から健康を提案する」ために設立された会社である。

「運動後にとったほうがいいタンパク質を少し多めにするとか、ビタミン・ミネラルをきちんと摂れる野菜中心の内容にするなどの工夫をしています。それにともなって、食にまつわるテーマの講習をする。参加者はウォーキングのコーチを受け、歩き、その後に栄養講習もさらりと学べたうえでランチも味わえる。健康のための運動と食が一度で体験できるしくみになっています」(リデリシャス・永田尚義社長/CEO)。
 「ランチ&ウォーク」の企画の背景には「食事制限者対象のメニュー開発を飲食店に依頼していた」という背景がある。
「生活習慣病予防のための基礎としていわれることは、『運動』『食事』『睡眠』の3要素にサイクルを考えながらバランスよく取り組むこと。塩分を抜いておいしくないものを食べるよりも、運動したほうがいいと思ったわけです。そこで日本ウオーキング協会さんに話を持ちかけたところ、話が具体的に進みはじめることになりました」(永田さん)

 イベント内容と参加費のバランスの取り方は難しかったそうだが、最終的には食事代も含めて3500円と手ごろにした。リーズナブルな設定もあって参加者の年齢層は幅広く、リピーター率は約50%と滑り出しも上々のようだ。
 「食事と運動のバランスはとても大切ですが、実際にイベントにしたものはほかになかった。組み合わせたイベントにすることで、はじめて二つのバランスの大事さが体験できるというメリットがあります」(永田さん)

イベントの告知はリデリシャスと日本ウオーキング協会それぞれのホームページで行っている。参加者のアンケートをとると、いままでウォーキング協会のイベントには参加していない方が意外と多い。参加者の評判もいいだけに、ウォーキングを通して新しいビジネスマーケット創造への期待も膨らむ。
「リピーターの方もいるので、年間スケジュールの中でストーリーをつくってゆくのもいい。参加者の方を飽きさせないようなメニューや飲食店の数に関しては、工夫できる余地もある。トータルで何q歩きましょう、など、みんなで目標とするゴールをつくってゆきたいです」と、永田さんはいま、「ランチ&ウォーク」を地道に育てるために、こんなビジョンを描いている。


婚活のためのウォーキングイベント

 コラボ型イベントにウォーキングを採り入れ、注目を集めている分野には「婚活ウォーキング」もある。
 このうちのひとつ、茨城県の自治体主催による「婚活」イベント、「ふれあいウォーキング」(2011年4月・水戸で開催)では、前出の星さんもウォーキング指導で活躍している。婚活イベントにおけるウォーキングは、参加者同士のコミュニケーションツールとなっている。パートナー探しをしている人たち同士が「ただ集まって話をするというのではなく、その前にコミュニケーションを育むようなことがしたい」という声が上がっていたのが始まりだ。

ここ数年、グループ参加型の婚活は花盛り。いきなりお互いが1対1で会話することには抵抗感があっても、イベントをみんなで楽しむ形式なら会話も自然にはずみ、お互いに打ち解けやすい。雰囲気づくりをする上で、ウォーキングイベントは非常に役立つという。男性と女性がいっしょに同じコースを歩く。あるいは途中で歩き方を変えてみる。これだけでも意外とお互いのコミュニケーションがとれる。事前にみんなで歩いて、汗を流してからパーティーに入れば、スムーズに話を交わしやすくなる。

「婚活ウォーク」の内容は、最初に1時間のワンポイント講座を行い、次に参加者全員でウォーキング、そして最後にパーティーへ、という流れになる。距離は3qと短いそうだが、それでもコミュニケーション効果は十分あり、婚活パーティーからカップルが誕生しているという。ただ「婚活ウォーク」には参加者の適正人数があり、上限は男女とも15人ずつの合計30人とするのが理想とか。これを超えるとデメリットも出てくるという。

「30人を超えると、参加者一人ひとりお互いの顔が見えづらくなる。こちらとしても少人数の適正なグループであれば、基本的にはマンツーマン感覚で対応できるし、だれとでも身近でお話しができるのがいいわけです。ウォーキングの大事さも直接伝えやすい」(星さん)。
 これは「ランチ&ウォーク」でも変わらない。指導士と参加者、あるいは参加者同士、ウォーキングでお互いの顔がみえる関係を大切にしたい場合は、抑えておくべきポイントだといえるだろう。

 健康のために「食」をからめてもよし、出会いのための「婚活」に活かすもよし。ウォーキングはさまざまなイベントの企画ツールとしても応用が効きそうだ。これからもコラボ型イベントは注目だ。