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成長続けるヴァンズと VFコーポレーションの戦略を探る


ヴァンズ、VFCの戦略ユニットに昇格

VFコーポレーション(VFC:本社:ノースカロライナ州グリーンズボロ、エリック・ワイスマン会長兼社長兼CEO)はアウトドア&アクション事業本部の戦略成長ブランドとしてヴァンズ(本社:カリフォルニア州サイプレス、ケヴィン・ベイリー社長)の育成を今後さらに強化する。
過去10年間、VFCの成長を支えてきたのはザ・ノース・フェイスを核にしたアウトドア&アクション事業本部だった。ザ・ノース・フェイスの成長力はスローダウンしてきたため、第2のリーディングブランドとしてヴァンズの育成強化に本腰を入れることになったのだ。ヴァンズの2012年12月期の年間成長率は25%が確実と見られ、ザ・ノース・フェイスを遥かに超える高成長ブランドに躍進してきた。VFCは15年を目標年度とする中期五ヵ年計画を推進中だが、ヴァンズは最終年度の目標を現状のほぼ2倍の22億ドルに設定されている。
VFCは傘下フットウエアブランドとしてヴァンズ、ティンバーランド、リーフ、ノースフェイスを展開している。フットウエア合計売上高は30億ドルに達し、全米ランキングではナイキに次ぐナンバー2に浮上した。グローバルマーケットでもアディダス、プーマに次ぐ4位である。
過去10年間、VFCの稼ぎ頭はザ・ノース・フェイスだった。しかし、今後5年間はフットウエアブランドが主役を演じるのは間違いない。VFCのフットウエア部門は戦略成長ユニットで、今後近い将来に新ビジネスユニットとしてスプリットされる可能性も取りざたされている。ヴァンズはその中核ブランドとして、12年には多くのコラボレーションをこなすいっぽうで、画期的なR&Dモデルを発表してきた。

ナイキ、コンバースと競合関係に突入

VFC は04年にヴァンズを買収した。当時のヴァンズの売上高は3億4900万ドルで、業績は低迷していた。VFCは過去8年間でヴァンズ売上高を3倍の12億ドルまで育成・拡大した。15年にはヴァンズの売上高22億ドルを目標にしている。5年間で10億ドルの増収はかなり厳しいが、不可能ではない。目標に向かって、ヴァンズは12年6月に本格的アスレチックモデル「LXVI」を発売した。スケートボードシューズブランドが開発した本格的アスレチックモデルとして、アメリカのスニーカー業界で注目されている。モデル名は66を意味するラテン文字で、1966年のヴァンズ創業年を意味している。
続いて8月にはホーウィンレザー(本社:シカゴ、スキップ・ホーウィン社長)とのコラボレーションシリーズをスタートした。同シリーズは毎月カプセルコレクションを発売するプロジェクトで、9月、10月、11月、12月にカプセルコレクションを発売してきた。いずれも従来のヴァンズイメージを大きく越えるコレクションばかりである。
スニーカーブランドのレザーブーツモデルは世界的なトレンドで、2010年以降はヴァンズ以外にコンバース、スペリー・トップサイダー、ナイキ、ニューバランス、アディダス、プーマがアスレチックスタイルのレザーブーツを発売してきた。コンバースはヴァンズと同様にホーウィンレザーとコラボレーションで、12年11月に「チャック・テイラー オールスター メードイン メインブーツ」を発売した。ヴァンズの成長路線はいきなりナイキ、コンバースと競合関係に突入したのである。
ヴァンズは10月初頭には「2012 ホリデイ OTW トラウトパック」を全米発売した。アウトドアテイストのカプセルコレクションで、10アイテムで構成されている。ボートシューズ、キャンバスオーセンティックシューズ、ブーツ、モカシンなどのフットウエアに加えて、フリースシャツ、バックパック、キャップ、ベルトなども発表した。OTWはもちろん「オフ ザ ウォール」の意味だが、このカプセルコレクションは、OTWをヴァンズからスピンオフさせたサブブランドとして育成する意図を表明したものと見られて業界で注目された。これをサブブランドとしてヴァンズからスピンオフさせれば、独立ブランドとして育成できる可能性は極めて高い。そのうえ親会社VFCはザ・ノース・フェイスも保有しているから、アウトドアアパレルを投入すれば、OTWはフットウエア、パック、クロージングの総合アウトドアコレクションブランドに成長することができる。
これはまるで、VFCが過去10年間に、ザ・ノース・フェイス、ジャンスポーツ、イーストパックを統合展開することで10億ドルビジネスを生み出した手法そのものである。すでに「2012 ホリデイ OTW トラウトパック」はVFCのアウトドア事業グループが保有している全ての資源を統合したカプセルコレクションになっている。

バブアーとのコラボレーションモデル登場

ヴァンズは11月初頭にアウトドアアパレルメーカー、バブアー(本社:英国・サウスシールド、マーガレット・バブアー会長)とコラボレートし、「バブアー バイ ヴァンズ カプセルコレクション」を発売した。コレクションはクラシックスリッポン、ERA ウイングチップなどの3モデルで、ベースモデルにはいずれもヴァンズのヘリテージモデルをフィーチャーしている。一方でスリッポンはバブアーのトレードマークになっているダイヤモンドキルトアッパーがあり、ほかの2モデルもバブアーの防水ワックスキャンバスアッパーを搭載している。3モデルともタータンプレイド・ソックライナーを内蔵し、英国老舗ブランド「バブアー」のヘリテージ(伝統)を強調している。価格はスリッポン90ドル、 ウイングチップ100ドル、デル・バルコ110ドルである。販売はヴァンズのカリフォルニアモデル販売ルート、バブアー販売ストアの限定販売で、11月初頭に発売された。
これまでヴァンズはアクションスポーツ市場を中心にしたカジュアルスニーカーブランドのイメージが強かった。しかしこの単一市場だけでは15年の目標22億ドルの達成は難しい。ここはどうあっても、アクョンスポーツ以外の市場も開拓しなければならない。12年6月に発売した新シリーズ「LXVI」は、ヴァンズがアスレチック分野にも参入することを宣言したモデルと受け止められた。ナイキやアディダスの市場に本格参入するためのモデルだったのである。ヴァンズはアスレチック市場に加えて、12年8月からはアウトドア市場にも本格トライした。11月末にはブーツメーカー、ディエッメ(本社:イタリア・ヴェネト州トレヴィゾ)とコラボレーションで「バッファローブーツLX」を発売した。コレクションはウエルテッド製法で、アッパーには防水スエード、ガセットタンを搭載したヘビーデューティの本格ハイキングモデルにアレンジした。
ここまでやれば、ナイキとコンバースも、VFCのフットウエアグループをマークせざるを得ない。アメリカスニーカー市場は、新しい競合図式が描かれつつある。VFCのヴァンズ育成強化計画は目が離せなくなってきた。