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 HOME > フットウエアプレス > インタビュー 日本ウオーキング協会部長 木村裕行さん



多彩なウォーキング大会の開催で、 幅広い層に楽しさを体感してもらいたい

社団法人日本ウオーキング協会は1964年、東京オリンピック開催の年に「歩け歩けの会」として発足、その後、国際マーチングリーグ(IML)、日本マーチングリーグ(JML)を設立、ウォーキングの普及を目指してきた。昨今のウォーキングブームの火付け役でもある同協会に、全国に広がるウォーキングの現状と将来像、また靴とのかかわりなどを聞いた。

目標設定などで、若い層にもアピール

――ウォーキングのすそ野が広がっていて、全国で多くの大会が開催されています。
木村 ウォーキングを楽しむ人口は、散歩も含めて3000~4000万人ともいわれています。各地で開かれるウォーキング大会に参加している人数は、年間延べ180万人くらい。ウォーキング大会は、当協会が把握しているだけで毎年約3000件もあり、1~2月と8月の酷寒・酷暑の時期以外、毎週末には必ずいくつかの大会が開かれています。
 大きいものが日本マーチングリーグ(JML)の大会で、北海道から沖縄まで日本各地で年間18回開催されます。その上には、世界各地で開催される国際マーチングリーグ(IML)があります。JML最大の大会は毎年11月に埼玉県・東松山で開催される日本3デーマーチで、昨年は12万人もの人々が参加しました。各地の大会ではパスポートが発行され、ゴールでスタンプやシールが得られます。合計距離を1000キロ単位で申告していただくと、協会に認定され、記念のバッジや盾がもらえます。ことに地球一周に当たる4万キロを歩ききると、会報『ウオーキングライフ』に写真も掲載されます。これを目標に大会に参加する方も、大勢いらっしゃいます。

――地方では「婚活ウォーキング」などテーマ性のある大会も開かれ、人気を呼んでいます。
木村 協会でもいろいろなテーマを設置しています。「ランチウォーキング」では、ウォーキングの後にレストランで体にいい特別な料理を食べる。東京マラソンと同じコースを設定したウオーキングには、500人くらいが参加しました。参加した人は、抽選に漏れた人、コースの下見に来た人などさまざま。今後はこういったテーマ性がもっと求められるようになってくると思います。正直なところ、ウォーキングに参加する人々の多くが60~70代のシニア。退職後とくに趣味もなく、奥さんに引っ張りだされて、健康にもなるし全国旅行もできるとすっかりファンになった人も少なからずいます。しかし、協会としては若い人々にもウォーキングを広めていきたいところですし、その意味ではテーマのある大会には女性や若い人たちがより参加しやすいのではないかと考えています。

――若い人たちにアピールするのには、よりスポーツ的な要素も必要ではないでしょうか。ジョギングやマラソンが盛んになり、ウエアも華やかになりました。
木村 マラソンには、今回は完走に5時間かかったが次回は4時間台で走りたい、大会での順位を上げたい、などの目標があります。一方でウォーキングは30キロであっても「○時までに戻ってください」というだけ。途中で食事をしてきてもかまいません。むしろ、目標時間を設定した方が若い人たちも参加しやすいのではないか。例えば、このコースは20キロを3時間半で歩きます、こちらはアップダウンがきついので4時間かかりますなど、コースにランク付けするのも面白いかもしれません。

足に合った靴を選ぶことがもっとも重要

――指導員の養成にも力をいれていますが。
木村 指導員は、認定ウオーキング指導員・公認ウオーキング指導員・主任ウオーキング指導員・主席ウオーキング指導員・ヘルスウオーキング指導士・アクティブウオーキング指導士・健康ウオーキング指導士・歩育コーチの8タイプ。座学のほかに試験やレポート提出もあります。認定から主席までの4つの資格は段階を踏んでいますが、残りの4タイプはその後自分の経験や志向によって選択していくようです。ことに歩育コーチは重要で、小さい子供たちに歩き方を教えていく。また、屋外で活動的に遊んで友達をつくることや両親の意識改革なども行っていきます。指導員は全体で約2500人。靴店の店長、自治体の職員、保険指導員など立場はさまざま。シューフィッターの方も何人かいます。

――靴メーカーや靴専門店としては、ウォーキング大会を販促に結び付けたいという気持ちもあります。小売店で顧客たちを集めて大会に送り出し、その際にシューズも選んでもらう。指導員がいればより効果的です。地元のウオーキング協会と連携し、大会を開催している専門店もあります。
木村 ウォーキングにとって自分の足に合った靴を選ぶことは、もっとも大切です。靴ひもの結び方ひとつで、足にマメができてしまうこともあります。靴は重要な部分ですが、意外と軽く見られがちですので、啓蒙活動が必要だと思います。
ショップはユーザーとの接点です。ウォーキングのときの靴をどう選ぶのか、ファッション性、機能性、値ごろ感などいろいろなポイントがあるでしょうが、距離やコースによっても異なると思います。平地のウォーキングコースと山地のトレッキングに近いコースとでは、はく靴の種類も違ってきます。どういうものがいいのかに関しては、店舗の人の知識が一番豊富だと思います。
これからは、テーマ別にウォーキングと靴をセットにして考えていくこともやっていきたいです。そうしないと、双方とも普及していかないのではないでしょうか。ロングウォークに適したしっかりした靴がたくさん登場しているのに、スニーカーで参加する人も少なくありませんし、まれにヒールのある靴をはいている人を見かけたりします。スニーカーでは、とても50キロを歩き通すことはできません。

――協会の今後の活動として、どのような目標をお持ちでしょうか。
木村 会員を増やしたいです。会員は当協会の直接会員である正会員と、加盟団体の会員である維持会員とに分かれますが、双方で現在1万3000人くらい。バッジやウォーキング手帳が配布され、機関誌も送られてきます。
また、健康診断で「1日に○歩は歩きなさい」といわれてもどうしたらいいかわからない。そのあとの指導をや っていきたいです。実際、行政から講演会、講習会の依頼がたくさん来ています。また、スリーデーマーチなど大きな大会を通じて、ウォーキングの楽しさと有用性をもっと広げていきたいと思っています。

社団法人 日本ウオーキング協会
東京都文京区湯島1-2-4 神田セントビル
TEL 03-5256-7855