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 栃木・足利市にあるSCコムファーストショッピングセンターに店舗を構える地元靴店エンドーの「あかい靴」は、店内イベントを通じて顧客とのコミュニケーションを高めている。大型商業施設や靴チェーン店が建ち並ぶ中、いかにして差別化を図っているのか。

顧客が安心して来店できる場所を

 同社は1854年に創業し、1951年にエンドーを設立、85年に「あかい靴」の店名でコムファーストに出店した。約60坪の店内は婦人靴を中心とした品ぞろえで、客層は30代のヤングミセスから80〜90代のシニア層までと実に幅広い。同店では、顧客に心地よい靴をはいてもらうために、一人ひとりとじっくり話す接客を心がけている。
「TPOに合わせた靴を選ぶのはもちろんですが、お客さまの足の形を観察して、その方に合うような木型の靴を提案します。特に年齢を重ねた方には、身体や足にトラブルを抱えていないか慎重にお話をうかがうようにしています。その上で、お勧めできる靴を数点提案して最終的にはお客さまがはきたい靴や、好きな靴を選んでいただきます」(シューフィッター・遠藤睦代さん)。
接客時には商品以外の話で盛り上がることも多々あり、顧客と販売員の域を超えた信頼関係ができている。

顧客が楽しく学べる体験型イベント

 同社では、さらに新規顧客やリピーターを増やすため、今年から店内イベントに注力している。
「以前から顧客との距離を縮められるようなワークショップをしたいと考えていました。また、これまで自分が学んできた靴や足に関する知識を、接客以外で顧客に伝える機会をつくりたいという思いも重なり、今年から動きはじめました。革靴が好きな方でも、素材や色によってお手入れ方法や製品が異なることを知らない方が多くいらっしゃいます。気に入って購入していただいた靴を長くはいてほしいという思いと、靴磨きの必要性を知ってほしいと思ったからです」(遠藤さん)
「商品を購入して終わり」ではなく、購入してからのフォローを忘れない姿勢が、イベント開催につながった。

靴磨きで「家族の絆」を深める

初めてとなる靴磨きイベントは、今年3月に行われた。自作のチラシを店頭で配布し、興味を持った顧客にはイベント内容などを詳しく伝えた。また、SCで配信している無料メルマガも利用して募集を行った。
当日は口コミや店内イベントに興味を示した人などが12名参加。50代〜70代の主婦層が約9割を占めた。1割の男性客の中には、20代の学生の姿も見られ、靴磨きに対して関心の高さがうかがえる。
イベント終了後は、ケアグッズを買い求める人や、リフト、中敷交換などの修理の要望もあり、初開催で大成功を収めた。また後日、参加した顧客からは「お手入れ方法やケアグッズの種類などを知ることができた」という感想が聞かれ、早くも次の開催を求める声があがっている。ほかにも「靴とじっくり向き合うことで、かかとの減り具合や擦れ具合などから自分の歩き方の癖に気づくことができた」などの感想もあり、靴磨きを通じて顧客と販売員の関係がより密なものになった。
第2回目は、6月にSC内にある「こども図書館」と共同で実施した。「父の日の靴磨き教室」と題して、お父さんの靴を磨いて感謝の気持ちを伝えようというのがコンセプトになっている。
同イベントでは、子どもたちにもできる簡単な手順で実演と解説を交えて行われた。親子16組が参加し、子どもたちは初めての経験に苦戦しながらも、徐々に磨かれていく靴を見て、「ピカピカになった!」と喜んでいた。しかし、子どもたち以上に真剣だったのは参加した父親たち。中には、「靴磨きの手順を知らなかったので勉強になった。家に帰って違う靴でやりたい」と、イベント終了後にケアグッズを買い求める人もいた。
 遠藤さんは同イベントの開催について、「靴磨きは親子で参加できますし、何より家族の絆を深めることを目的にしました。今回は商売とは関係なく、いつも当店を利用してくださる顧客や、地域で役に立てるイベントをして恩返しをしたいという気持ちが強くありました」と話す。次回は9月の敬老の日に合わせた靴磨きイベントを行う。
 同社は、今後も顧客体験型イベントに力を入れていく計画だ。靴磨きから小物づくりまで幅を広げていき、将来的には地元の異業種と手を組んで企画を考案したいとのこと。
 地元客を徹底的に大事にする姿勢が顧客に伝わり、信頼と安心感を生んでいる。モノを売るだけでなく、コト提案で差別化を図る同店は、「足利市のオンリーワン靴店」を目指している。

 

 ▽あかい靴(エンドー)
栃木県足利市朝倉町245番地、コムファーストショッピングセンター2F
TEL:0284−72−2189