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今後の経営戦略は

バージョンアップの方向に


日本に消費税3%が導入されたのは1989年。この時は各種減税が消費増税を上回り、景気は向上しました。5%に引き上げられたのは97年でしたが、この時は景気は悪化し、この15年間は一度も96年度の税収を上回っていません。
では来年の消費税増税後の景気はどうなるでしょうか。実態は減税なしで、増税と負担増が目白押しで、97年の増税時とは比べものにならない負担増になります。消費税増税による歳入増を消費減が上回り、景気悪化で避けられない。消費税増税はデメリットそのものです。

低額品の駆け込み需要は期待できない

こうしたマイナス要因をプラスに変えるのが経営戦略です。消費税増税を逆手にとって躍進させるためには、過去の歴史と経験に学べば、ヒントがあるかも知れません。
まず、前回の増税時に影響を受けなかった客層を検証してみましょう。
消費税以外の負担増が少ないギャルとギャル男の単身者と、現役世帯並みの所得と同世帯の4倍を超える資産を有する高齢者がいました。ほかには晩婚・非婚のパラサイトシングル族、自分磨きを欠かさない女性がいました。こうした生命力の強い人たちを対象にすれば、業績拡大は可能です。
商材で見れば、ギャル向けエンターテインメント商材は好調だった。また、高齢者向けラグジュアリー商材は安定して売れました。美容・健康用品の需要は増えたし、ファッション雑貨は安定した需要を維持しました。レディス商材の靴やバッグへの影響は軽微でした。

反対に2%の消費税増税に直撃を受けた層は、お金がありながら心配性の精神的貧困層のシルバー女性と、負担増・給与減など四重苦のサラリーマン層や草食系男子でした。

これらをもとに、消費税増税の前後のMD展開を考えます。

増税前は精神的貧困層を狙い、高額必需品の買い増し需要を狙う。年末からは海外ブランド信奉者に向け、インポートシューズを展開する。年始は国産高額ブランドを先取り需要を狙いましょう。また、コンフォートシューズなどミセス商材の駆け込み需要を狙います。3月には新学期商材のほか、低所得者層向け必需品のバーゲンが有効です。

増税後は商品のバージョンアップを

増税後は反動減を防ぐMDを展開します。
まず、増税後も支出を減らさない精神的富裕層を狙い撃ちします。ここではぜいたく消費への転換を図るべきです。ここではギャルやニューリッチ層に買ってもらえる仕掛け、仕組みを展開し、トレンド商品を投入します。狙いはプチ富裕層向けのラグジュアリーMDを考えましょう。ニューリッチ層とはプチぜいたくを楽しむ精神的富裕層であり、こだわり消費市場が対象です。具体的にはリッチなシルバー族やローン負担のないシニア層、女性キャリア族などです。
また、実需品を必要とするミセス&キッズ向け商品ではバージョンアップによる「必欲品」を提案しましょう。プライスゾーンを広く取り、中心価格帯のレベルアップを続けるのです。ここでは店とお客の関係(B to C)を、共通の価値観を持ったお客を対象に、家族と家族の関係(F to F)に変えましょう。



トレンドに乗せた経営戦略を

ここで留意すべきことは、アベノミクスで景気が良くなることはありません。一時的には景気が上向くかもしれませんが、すでにIT革命によって産業構造が変化しており、産業の主役は製造(モノ)業から情報(知)業に代わりました。高度情報革命は無駄を省く革命であり、合理化社会に向かうものであり、市場縮小によるデフレは避けられません。そこでは生産はますます人件費の安い国に向かい、工場は海外にシフトし、国内に新たな雇用機会が起こることはありません。今後、政府がいくらお金をばらまいても、男性の失業が増え、景気が失速するのは時間の問題です。
経営の基本とは、トレンドを読み、そのトレンドに乗せることです。次に収支のバランスを取る。そして自己資本の強化を図ることです。
では、今のトレンドとは何か。キーワードは「ヘルシー」「エコロジー」「エンターテインメント」の3つです。モノづくりや販売でもこの3つを外しては何も売れません。たとえば「ヘルシー」であるコンフォート商品であっても、楽しくなければ売れません。いくら機能的であっても、エンターテインメントがなければ売れません。
日本のファッショントレンドはギャルから発生し、ギャル男に伝播します。60代の女性も40年前はギャルでした。ディスコ時代に育った40代は完ぺきなギャルです。つまり、どの世代もギャル意識が存在します。ですからトレンドを外してはダメだということです。