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第27回日本靴医学会学術集会・市民公開講座が、9月28日、横浜市の慶應義塾日吉キャンパス・藤原洋記念ホールで行われた。テーマは「靴と健康――歩いて目指そうハッピーライフ」。講演会は講演1「靴って、なぜ大切?どう選ぶ?」日本靴小売商連盟・東靴協会会長・小堤幸雄氏 講演2「靴を選んで歩きましょう」なすグループ会長/クリスチャン・パートナーズ監事・奈須輝美氏 講演3「ハッピーライフのための足と靴」日本靴医学会前理事長・井口傑氏、さらに演者3人による座談会が行われた。
足に悩みを持つ人や靴に関心を持つ人が多数訪れ、熱心に聞き入った。会場入口には、足の計測会が行われ、多くの人が計測会に参加、足への関心の高さがうかがわれた。




――日本靴小売商連盟・東靴協会会長・小堤幸雄


「かかりつけ」の靴小売店を持とう

帽子・スカーフ、服・アンダーウェア、パンツ・スカート、アクセサリー、靴下、靴など、身に付けるものの中でミリ単位は、日本では靴と指輪である。
それでは、なぜ、靴が一番大切なのだろうか。足の裏は体の表面積の約2%で、そこに体重が全部かかる。歩き始めると加速度が付くので、体重の約1・3〜1・5倍、早足になると2倍、走り始めると3倍といわれ、それが足の裏にかかる。足は健康の元で、足を痛めて寝たきりになると急速に弱る。そのため、足を守る靴が重要なのだ。
 かかりつけの主治医がいるように、かかりつけの靴小売店はあるか。かかりつけの店でないところは皆さまの足の状態を知らないで売っていることが多い。足は体調と同じで常に変化するので、いろいろと面倒を見てくれる店を持つことが便利である。その場合、シューフィッターのいる店を見つけていただきたい。シューフィッターは健康生活をお手伝いする人で、痛みを軽減、靴の中を調整など、予防医学的な見地からの健康歩行を助ける靴を提供する。
 避けたほうがよいのは、購買をせかす店、自分のことを真剣に考えてくれていない店、靴をはいた時にかかと部分が5mm以上空くのに調整できるから大丈夫だという店、痛いといっているのに伸びるから大丈夫だという靴店など。

目的別の靴選びと使い分けをしよう

靴はいつ購入するとよいのかといえば、一般的には足がむくみやすい夕方だといわれる。時間では16時〜19時ごろ。しかし、中には朝むくむ人もいる。夏と冬でも足の容積が変わる。その時々によって体重が変わってくる。そのことを自分でつかんでおくことが大事である。
靴のサイズは目安にしか過ぎず、靴によってはサイズが変わる場合がある。木型によって足入れが変わり、つま先の形状によっても捨て寸が違う。基本的には10mm前後で、細い靴は20mmになることがある。試しばきのときによく確かめることが大切である。
 よい靴とはどういうものか。素材・仕立て・価格・機能と判断基準はいろいろとある。着脱が楽な靴は、脱げやすいことにもつながる。深めの靴が足をホールドしてよく、ぴたっとフィットした靴は、軽く感じる。また、柔らかいだけでは足に優しいとはいえない。支えるところはしっかりと支え、曲がるところから柔らかいのがよい。
普段ばきは一番長くはく靴なので、多少高価でも一回当たりの料金は安くなる。従って、普段ばきこそ質のよい靴を選んでみるべきではないだろうか。
 靴の役割は、外からの圧力を守る、保温、衝撃吸収、左右・前後のバランスを取るなど、足の保護である。また、防滑、安全性、歩行など、機能のサポートやファッションなどの役割を持つ。
 目的別の靴選びと使い分けは大切である。ファッションやフォーマル、日常活動、運動、仕事用などTPOのほか、屋内か屋外か、晴れか雨か、寒冷か、山坂の有無、使用する靴下の厚さなどがある。
 ハイヒールは昔、8・5cm以上だったが、今は7cm以上になってきた。ハイヒールは、パーティー会場ではき替える方がよく、2時間以内に心がける。日本人はヒール高4〜6cmがよいといわれている。また、2km以上歩く場合は、はきやすい靴にしよう。




   参加者:
●日本靴小売商連盟・東靴協会会長・小堤幸雄氏、
●なすグループ会長・クリスチャン・パートナーズ監事・奈須輝美氏、
●日本靴医学会前理事長・井口傑氏

 

―― 外反母趾の足の靴を選ぶときは。
小堤 外反母趾の方の特徴としては、母趾のところの骨が出ていること。形として、その部分が出ている靴でないと難しい。シープスキンの革は伸びが早いので、若干足当たりが優しい。それをさらに、機械でその部分だけの伸ばし、はきやすくするのは可能です。
また、ドイツの靴は本底まで切り込みを入れ、そこにものをはさんで広げるので、楽にはけます。ただしシルエットに影響するので、お客さまとの相談になります。
奈須 オーダーの靴を造ってもらったのですが、格好が悪くてほとんどはいていません。結局、靴を広げる器具を買い、足に当たるところを広げるようにしています。なるべくクッションがある靴を買うようにしています。メッシュの靴ははきやすいです。
井口 外反母趾は、親指の出っ張ったところと、親指の内側の付け根のところが痛みます。痛みの性質だけでも2種類あるので、自分の痛みに合わせて、靴選びをするといいです。
―― 靴を選んでいく場合、試す時間が少ないと後で痛みが出る場合がある。明日はきたい靴を購入する場合はどのように対応しているか。
小堤 明日、結婚式、葬儀といって靴をほしいという方もいます。エレガンスになればなるほど、調整をする余地が少ない。そういう靴に限って、急に買いにこられる。その方がはいた具合で、よいかダメかが99%わかる。お客さまには、「今日帰られたら、30分ぐらい歩いてください」といっています。基本的には、痛いと感じられたら、すぐに来てくださいということです。
―― 小売店ではどこでもそういう対応をしていただけるのか。
小堤 シューフィッターと呼ばれる人は、足と靴の知識があるので、ある程度のことは対応できます。もちろんキャリアによっても違ってきますが。
―― 医療用で靴を造ったほうがよいのか、それとも既製のものでよいのか。
井口 患者さんの病気の程度によります。市販のものでどうにかなる場合はそれでがんばりなさいといっています。なるべく靴の在庫のある店を探して、試しばきをしていくと運がよければ見つかります。同じ既製靴といっても、どれくらいの時間続けてはくかということもあるので、病状が軽い患者さんには、短時間であればはいて、靴ライフを楽しんでほしいです。
―― どの段階で病院へ行けばよいのではないかと見極めているか。
小堤 最終的には、お客さまが決めることですが、ファッション店舗の場合は、「病院に行ったほうがよいのではないか」とアドバイスすることが多いでしょう。健康靴を扱っている店は、商品や技術、知識が違うので、自分のところで対応できる範囲が大きいです。
―― 靴店を探すのにどういう基準で買われているか。
奈須 特に靴店は限っていません。気に入った靴店があるので、そこで買ったりします。高いからよいとは限りませんが、靴選びは慎重にしている。
―― 医師として、どのように靴選びをアドバイスしているか。
井口 あなたが70%の足なのか、7%の足なのか、0・7%の足なのか、それを考えてくださいということです。人口の70%の人はどの店に行っても靴選びに苦労しない。7%の人は苦労しないとなかなか自分に合った靴が見つからないが、努力をすると既製靴が見つかる。対面販売で、相談ができ、試しはきを嫌がらない店をすすめる。しかし、0・7%は足の病気を持つ人。この人たちに合う靴は大量生産の靴ではありません。従って、何らかの紹介をする。自分がどこに入るのかを自覚することが大切なのです。