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  伊東秋広さん  
                      リーガルシューズ 
ららぽーとTOKYO−BAY店 店長

「お好みを踏まえたうえで、極力足入れのよい靴をお勧めする」

女性の入りやすい店というイメージをアピール

 ららぽーとTOKYO−BAY店の店長をつとめる伊東秋広さんは、全国のリーガルシューズの中でも、3本の指に入る実力の持ち主だ。2001年に入社した後、八重洲地下街店、横浜ダイヤモンド地下街店、ららぽーと横浜店などを経て、3年前の2月に同店に着任。柔和な笑顔と穏やかな物腰による接客は、若さにもかかわらず円熟味を増している。
 同店のお客は男性7割、女性3割。リーガルシューズのイメージもあって男性客が中心だが、大規模ショッピングセンターという立地上、女性も重要なターゲットだ。そのため、伊東さんはできるだけ入りやすい店というイメージをアピールしている。
「リーガルは重厚感のある店として見られがちなので、店内に気軽に立ち寄ってもらえるように、早い段階で『いらっしゃいませ。ぜひご覧ください』とお声がけしています。その際に大切なのは笑顔でのアプローチ。お試しだけで店を出られるお客さまに対しても、気持よく帰っていただけるよう意識しています。ここは何でもあるショッピングセンターですし、女性のお客さまは買い回りをされる方が多いので、気持よくお見送りをすると、後から戻ってきてお買い物をされるケースが多いです」。
 笑顔を絶やさず、早い段階で「お試しください」の声をかけると、伊東さんが手にしている靴や着ている洋服などをきっかけに接客を進めていく。試しばきの要望があれば、まずリクエストされた靴を持ち寄るが、自分の足にあった靴を自覚していないケースも多いので、必要とあれば簡易メジャーで足長を測り、好みを踏まえた上で足に合った靴を提案する。

 「大切なのはお客さまの感覚です。お客さまに納得して買っていただくのが何より。お好みの範囲の中で極力足入れ感のよい靴を提案するようにしています」。
目的買いの多い男性客に対しては、ビジネスメインで使うのか、それともオフシーン中心なのか、仕事用であれば、職種は営業なのかデスクワーク主体なのかなどと、用途や使用状況をしっかりと確認する。用途によって適切な木型が違ってくるからだ。
「例えば、営業職であれば耐久性やクッション性の高いグッドイヤー製法の木型がお勧めです。逆にデスクワーク中心ならばはき馴染みが早いマッケイ製法やステッチダウン製法の方がいい。使用シーンにそってお客さまが靴に求めるポイントをロジカルに詰めていくわけです」。
 同店では、ケア用品の提案にも力を注いでいる。売場中央のガラスのショーケース内にはクリームからブラシまでオリジナルの商品がずらりと並ぶ。オイルレザーの靴だったらミンクオイルを、ガラス加工の靴であればシューラスタークリームといった具合に、素材にあったケア用品の効果やお手入れ方法を伝えることで、ケア用品の売り上げは順調に伸びている。靴といっしょに9点ものケア用品をまとめ買いするケースもあるという。
 最近は、よい靴をできるだけ長くはきたいと考えるお客が若い世代を中心に増えており、靴のケアに関する伊東さんの啓蒙活動はますます重要性を増している。


子供連れの女性客のために楽しめる絵本も常備

 ららぽーとTOKYO−BAYには、婦人靴の競合店が多数売場を構えている。その中でいかにリーガルの持ち味をアピールしていくか。伊東さんが訴求するのは「安定感」だ。
「トレンドを反映した靴も増えてはいますが、やはりリーガルのよさといえば『安定感』だと思います。お子さま連れのお客さまも多いので、5cmヒールの靴を中心に、はきやすく活動しやすいという点を中心にご提案をしています」。
 ベビーカーを押して来店するお母さんたちは、子どものようすが気になって買い物に集中できないことも多い。そんなお母さんたちにも靴をじっくり選んでもらいたいと、伊東さんはある「秘策」を用意している動物や乗り物、そして人気のあるキャラクターの絵本だ。
 「できるだけ親子でいっしょに楽しんでいただける空間を追求したいと、アンパンマンなど数冊の絵本を常備しています。お母さまが靴を見ている間に、お子さまに絵本を渡すと夢中になって読んでいますね。とくに人気なのは『アンパンマン』。『アンパンマンの本、どこにあるの?』と聞いてこられるお子さまもいらっしゃいます」。
 小さな子どもへの配慮は母親にとっては何よりもうれしいサービスだ。こうしたきめ細かな接客が、伊東さんのファンを増やしているに違いない。伊東さんの顧客の中には、母親に連れられてたびたび来店するうちに伊東さんの接客に触れ、靴の販売にも興味を持ち、伊東さんが進路相談にのった結果、リーガルシューズにアルバイトとして働いている青年もいるという。伊東さんの誠実な接客スタイルが「今度は自分が売る側に立ってお客さまに喜んでもらいたい」という志望を掘り起こしたのである。
 今後の目標として伊東さんは「トータルコーディネートの提案」を挙げる。
「ただ靴の提案をするだけではこれからは通用しない。靴に合わせる洋服も提案できるようにならなければ。その一つの試みとして、同じららぽーと内のアパレルの店と組んで、季節のトレンドを反映した服に靴を合わせ、当店のショーウインドーでのディスプレイを始めました。効果はまだわかりませんが、お客さまに『こういう風に合わせればいい』というイメージは訴求できると思います」。
 トータルコーディネート力を伸ばすことは、伊東さんの固定客、同店の顧客、リーガルのファンがさらに増やすことにつながっていく。