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 HOME > フットウエアプレス > 特集 競争力を高めるアジアの靴生産





昨年10月、アジアの国・地域の靴業界12団体が参加して、日本で第32回国際履物会議(IFC)が開催された。自国の靴産業の現状や課題は報告書にまとめられた。そこでは人件費など生産コストの上昇や世界に向けた市場開拓、あるいは企画・生産のための人材育成、設備の近代化などの課題が挙げられた。ここでは発表されたデータをもとに、各国・地域の現状と課題を見る。


コスト上昇で輸出成長率は下がる

靴産業の概要
・生産 133億足
・輸出 100億7000万足・444億ドル
・輸入 5000万足・15億2000万ドル
・消費規模 33億足

生産・販売コストが上昇
・最低労働賃金は12年は平均20%の上昇。
・季節労働者の月給も12%上昇の2290元に。
・小売市場はさらにコスト上昇が見られ、人件費に加え、家賃が30%増、社会保障費を加えた賃金が15%増。
・産地はコストの上昇と労働力不足で、沿岸部や南から西の内陸部や北にメーカーは移動するケースが見られる。

ブーム化するEコマース
・ネット販売が12年は小売の6・5%を占め、成長率は64・7%となった。
・15年には9%のシェアになるとの予測
・大手小売りの上位100社のうち、8社がネット販売業社。小売り全体の成長率114%に対し、ネット販売業社は134%の成長。

今後の見通し
・産地移動で、今後は内陸部が高成長することが見込まれる。
・いっぽう、アジア諸国の成長で、中国の生産シェアは必然的に縮小するが、まだまだ圧倒的はシェアにあることには変わりはない。




中国依存から脱却を目指す

靴産業の概要
・生産 100万足
・輸出 3億6200万足・53億1700万ドル
・輸入 4億2500万足・48億5000万ドル
・消費規模 6400万足

経済・貿易の概況
・12年は1・5%の成長
・消費市場は9・8%の成長
・輸出は2・9%の成長

香港企業の課題
・低価格市場での競争を避け、香港製品をブランド化する
・中国本土は今や労働集約型の低価格対応力を失った。
・中国の月給は400ドル。タイの2倍、ベトナムの3倍、しかも賃金以外の操業経費も上昇。
・中国本土の生産コストの上昇により、クオリティの高い生産力を持つ東南アジアへのメーカーシフトが不可避となっている
・中国本土の就労者の供給は、その増加率が1%ほどに低下、対して東南アジアは中国の2倍。



豊富な素材資源と近代設備が成長を支える

靴産業の概要・生産 22億0900万足
・輸出 1億1300万足・32億2700万ドル
・輸入 3200万足・1億8400万ドル
・消費規模 22億0200万足

インド靴産業の概況
・世界の靴の12%を生産
・20億6500万足の生産
・1億2900万足の輸出
・(20億5500万ドルの輸出)

インド靴産業の優位性
・競争力のある価格が実現できる
・高品質な製品――近年の技術近代化への投資により、製品の高度化が進んでいる。
・提携の安全性――活力ある市場で、成長のポテンシャルはますます大きくなっている。豊富な人口と豊富な素材資源が成長を支えている。
・原皮供給は、牛とバッファローは世界需要の21%、ヤギと羊は11%をまかなっている。
・インド自体、世界の一大靴消費地である。

海外投資は完全自由
・最先端の機械設備を導入しやすいようにするため、外資投入を歓迎している。
・投資額の制限はなし。ただし、投資先は経済特区あるいは国内関税地に限る。
・利益は100%持ち出し可能。

・主要靴産地
 北部 アグラ、デリー、カルナル、カンプール
 南部 チェンナイ、
 西部 ムンバイ
 東部 コルカタ(カルカッタ)

月給
一般工 60−80ドル
熟練工 90−120ドル
社会保障費は賃金の15〜17%



安定した社会環境で外資企業を呼び込む

靴産業の概要・生産 8億0500万足
・輸出 3億1600万足・51億2300万ドル
・輸入 200万足・2500万ドル
・消費規模 1億3600足

靴産業の概況
・靴・バッグは、第3位の輸出産業。
・主なメーカー集積地は、南部のホーチミン、ビンズオン、ダナン
・ベトナム皮革・履物協会(1996年に設立=LEFASO)には靴、タンナー、バッグ関連の企業600社が加盟
・1600の生産ライン
・靴は年産8億足
・皮革は年産2億スクエアーフィート

労働力
・就業人口60万人超
・周辺関連産業に50万人超

企業構成
・外資系企業数は総企業数の23%を占め、輸出規模の76%を占める。
・自国企業数は77%で、生産規模の24%を占めるに過ぎない。

月給
・1人当たりのGDPは1300米ドル
・最低賃金は月給78〜110米ドル
・靴業界の平均月給は204〜210米ドル

ベトナムの優位点・比較的安い労働力が豊富にある。
・政治・社会が安定しており、海外投資がしやすい。
・労働政策の充実と企業の社会的責任が普及
・対日本とはEPA発効国

ベトナムのマイナス要素
・熟練工の不足
・労賃と諸経費の急速な上昇
・環境基準のクリアーが重荷



スポーツを主力に輸出を伸ばす

靴産業の概要・生産 7億足
・輸出 2億0600万足・32億2700万ドル
・輸入 3200万足・1億8400万ドル
・消費規模 5億2600万足

靴産業の概況
・2012年の輸出額は35億2500万ドル(前年比107%)。
・このうちの79%はスポーツ靴の輸出である。
・輸入額は3億8700万ドル。

靴産業への海外からの投資
・2011年は59件、投資額2億5500万ドル。
・対10年比で件数97%増、投資額96%増に。





復活をめざし、産業発展計画を具体化する

靴産業の概要
・生産 6800万足
・輸出 3100万足・2億0100万ドル
・輸入 3300万足・2億5900万ドル
・消費規模 7000万足


靴産業の動向
・靴輸出は大きく落ち込んでいる。これは、2009年1月から導入した最低賃金制の影響によるもので、輸出競争力は一時的に下がっているが、14年以降は回復する見込み。
・現状の主要輸出相手国は近隣諸国とイギリス、アメリカ。トップはシンガポール。

今後の発展計画
・マレーシア・シューデザインセンター(MFDC)を設立し、靴業界の水準を高め、輸出競争力を高める。具体策としては、
 A)シューマイスター制度を活用し、デザイン、パターンメイキングの充実を図る。
 B)業界が最先端技術に支えられていることをデザイン学校に紹介し、若者を業界に取り込む。
・積極的に海外展示会に出展し、マレーシアの靴の海外促進を図る。
・シューマイスター制度の中に、デザインコースを導入する。






メーカーの海外移動で、輸入超過

靴産業の概要
・生産 500万足
・輸出 900万足・1億4400万ドル
・輸入 1億1600万足・15億3600万ドル
・消費規模 1億1100万足

靴産業の概況
・2011年の売上高は80億2053万ドル。
・企業数は1万3313社。
・従業員数は4万1155人

輸出入の現状
・2012年の靴輸出は4億7400万ドル。前年比102%。
・輸入は18億2000万ドル、前年比109%。
・メーカーの海外進出で輸入超過の市場。

靴メーカーの人件費(月給)
・一般工は最高2351ドル、最低1222ドル
・熟練工は最高2822ドル、最低1787ドル。




中国内陸部と東南アジアにも進出

靴企業の概況
・90年代に大陸に進出した靴メーカー。これまで広東省を拠点にしてきたが、最近はコストアップの影響で、河南省など内陸部への進出も見られる。
・カンボジアなど東南アジアへの進出も積極的だ。
・台湾に生産拠点を置くメーカーはサンプルつくりや国内マーケットを主力としている。

台湾の輸出入
・2012年の輸入足数は7800万足。輸出は1500万足。
・メーカーの海外進出で、靴貿易は輸入が輸出を大きく上回る。
・輸出先は米国、日本で、香港、シンガポールといった周辺国も主要輸出国。
・輸入の85%は中国から。

靴産業の月給
・一般工は平均845ドル
・熟練工は平均1200ドル