今月の記事・ピックアップ 2014・3
 HOME > フットウエアプレス >  48th ISFの見どころ 制作実演とワークショップ




イギリス60年代モッズファッションを追求

Ipcress Mod Fileの阿部訓論さんは、1966〜1968年の3年間、「SWINGING LONDON」のメンズファッションにこだわって追究し続けている服飾デザイナー。「ファッションは常に女の子がリードしているが、この3年間だけは男の子がリードしていたのです。その時代のファッションが好きで、その世界観を表現し続けています」(阿部さん)。
その3年間にこだわっているデザイナーはスコットランドのデザイナーと阿部さんの世界で2人だけ。ウィリアム・モリスがデザインした生地を使ったすべて1点もののメンズシャツはヨーロッパのアーティストにもファンが多い。メンズブランドは「カーナビー ロックハンター」と「ミスター プロンク」。
作品づくり、ショールームの拠点は、会話したり、お酒を飲んだりできるようにと、パブとしても営業。訪れる人々のつながりから、靴のデザインもするようになり、靴ブランド「スピットファイヤー」も立ち上げ、人気となっている。今年はモッズの10年に一度の祭典「モッド ストック2014」にも日本のブランドとして初めて招待されている。
東京都墨田区向島1-11-11
TEL03-5608-9411






フラワーデザイナーがつくるアクセサリー

フリーで活動して10年になる大山久美さん。最初は花の会社に勤務し、ホテル・企業などのフラワーデコレイタ−、ブライダルコーディネイターとして活動。2003年に独立後、今も国内外のアパレルショップや美術館、展示会などの装飾を手がけているが、既存のお仕事にプラスして「なにかできないかな?」とアクセサリーづくりを始めた。靴に関してはシューズブローチなども手がけている。
アクセサリーも貴金属ではなく、花やグリーンを使った造花なり、リアルなプリザーブドフラワーなどの素材を厳選し、フラワーデザイナーの視点でつくっている。
「世の中はたくさんの小物にあふれているので、こだわった素材のみを選び、すべてデザインを変えたオリジナルの一点モノとしてつくりこんでいます」。「自分自身もつけて楽しめるものをお客さまにも提供する」ことを大切にしている。

東京都台東区浅草橋3‐15‐8シティハイムビル503
TEL&FAX 03‐3866‐0061















ガラスの透明感と美しさを生かして  

ガラスならではの透明度や奥行き、みずみずしい輝きを活かしたい。「emius glass wokrs」は、金澤敬介さんが2011年に立ち上げたブランドだ。「ガラスは優しさにあふれています。その素晴らしさを踏まえて、自分の中でキレイだと感じるモノを形にしていきたい」と金澤さんはいう。得意とするのは、人工石のオパールを中に閉じ込める手法を使ったアクサセリー。ガラスの中で大輪の花が開いたような大胆な美しさが特徴の指輪やペンダントは、一番の売れ筋だ。
顧客の中心は40〜50代の女性だが、「ガラスのよさにまだ触れていない若い人にも見てもらいたい」と金澤さんは、シューズやバッグにガラスをアレンジする道を模索している。「例えば靴にビーズをプラスしたり、バッグのチャームとしてガラスを用いたり、いろいろな形が考えられると思うんです。違うカテゴリーとの連携を図っていきたいですね」。 東京都墨田区業平2-15-15 http://ameblo.jp/boroglass-life/







うきうきした気分を感じさせてくれる靴をつくりたい

 シューズブランド「リプロダクト」は、鹿野法子さんの体験から始まった。「たびたび靴擦れや足のトラブルに遭遇、結局スニーカーにたどりついた」という。「それなら自分でつくってしまおう」と思い立って、現在、女性のライフスタイルの中で必要とされる靴とは何かを探りながら商品開発、2012年にネット販売を開始した。
着目したのが定番となっているフラットシューズ。仕様は@コルクを使った中底A通気性に配慮した本革のアッパーや透質素材(キャンブレル)Bかわいくて幅広いスタイリングに応えられ、年齢を限定しないデザイン性とした。主力はラムレザーを使ったバレエタイプ。
「はき心地がよいから出かけたくなる、そんなうきうきした気分を日常の中で感じさせてくれる靴をめざしています」という鹿野さん。ベーシックで普遍性の高いデザインの靴を、家具の名品をリプロダクトして販売するのと同じ感覚でつくりだす。ブランドのネーミングもここからきている。13年11月に実店舗をオープン、新たな一歩を踏み出している。
東京都荒川区荒川4−25−8−503
TEL: 03-6806-5977







ママ目線がつくる鮮やかな色彩のバッグ

 二人の友人が5年前に立ち上げた「ママ目線」のブランド。高橋華子さんは東京でトートバッグを、北村弘美さんは大阪でヘアアクセサリーやTシャツのデコレーションを手掛ける。カラフルで独特な世界が楽しく、ママならずともファンが多い。東京・墨田区にアトリエショップを構えている。
 アイテムはトートバッグ、スタイ(よだれかけ)、ポーチ、ヘアアクセサリーなど。ほとんどが布帛だが、なかにはネオンカラーのピッグスキンを使ったICホルダーもある。日本には見られない柄や鮮やかな色彩が楽しく、つい手に取りたくなる。「生地のほとんどがアメリカ製。国内のものだとどうしてもかぶってしまうことがあるものですから。ネットや生地屋さんを注意してチェック、自分たちの世界感に合うものを入れています」(高橋  さん)。
 自信があるのは、単に「かわいい」だけではなく機能的であること。大型のトートバッグはくたっとならないように中にウレタンが入っており、底に鋲もついている。売れ筋のスタイは、安全に配慮し、汚れが裏にしみないように工夫されている。ほとんどの商品が2人の手作りで、工場に委託しているのは一部。
 「これまでは楽天ショップなどネット販売が中心でしたが、新しい顧客開拓を進めたい。ISFでは、どんな出会いがあるのか楽しみです」と、ISFへの期待度は高い。

東京都墨田区京島1−48−13
TEL:03-3610−2585








加工を得意とするベルトのクリエイター

 スペイン語で「手づくりの」を意味する「デルマノ」と英語で「技能や技巧、技」を意味する「クラフト」を合わせたデルマノ+クラフトは、ベルトを中心に皮革製品のOEMを手がけている。運営するのは冨田義行さん。服飾雑貨のバイヤーを経験した後、ベルトを卸す会社で企画・デザインを担当し、その後、メーカーでベルトづくりに携わったという多彩なキャリアを生かし、デザイナーの意図を現実のモノづくりに巧みに反映している。
パリ・コレクションに出ているデザイナーなど、第一線のクリエイターからの依頼が多いのは、ベルトに関する冨田さんの複眼的な視点と確かな技術が高く評価されているからにほかならない。「ベルトはニッチな市場ですが、小ロットでつくることができるのを皆さんに知ってもらえれば、もっと需要が増えるはず」という冨田さんが得意とするのは、二次加工、三次加工、ビンテージ加工など、ほかの職人が嫌がる加工モノ。根っからの職人肌だ。

東京都台東区柳橋1-26-9
TEL:03-3865-0768










イタリアンレザーを使った風格のある財布

 「ほしかった財布がなくてたまたま東急ハンズに行ってみたら、レザークラフトの本があった」ことがすべての始まり。学校へ行ってクラフトを学んだこともないのに、独学でずっしりとした重量感のある二つ折り財布をつくる。手に取ると、革の感覚と「ホンモノ」感が伝わってくる。このほか、ブレスレット、カードケース、キーケースなども作成している。
スタートはバイカー向けの財布だったが、赤の発色が美しいイタリアンレザーに出会って作風が変わり、一般向けの財布を作成するようになった。英語やフランス語で、ちょっとした格言が掘り込んであるのも粋である。すべて豊島さんが一つひとつ手づくりし、1つ作成するのに17時間かかるという。細い繊維をより合わせた耐久性の強い糸を使用。販路はネットのみだが、次第にオーダーが増え、現在では2ヵ月待ちになっている。
 ISFへの参加は3回目。「いつも製作を実演しているんですが、それを見て個人的に買ってくださる方が増えています。丈夫なものですので、長く使っていただければうれしいです」。
 職人気質で売り込むことは苦手だが、その分作品がモノをいっている。

埼玉県所沢市小手指元町1−16−19ラフォーレK1 2−1
http://grcleather.com







素材や材料にこだわったバッグ・小物類  

「His Factory」は、中野克彦さんのモノづくりに関するポリシーを具現化した工房兼ショップ。革から金具、ファスナーに至るまで、よいと思える素材や材料にこだわりバッグや小物類を制作している。タンニンなめしの素上げオイルレザーと丸染めのヌメ革を使った「REAL BASIC」シリーズや、イタリア産のバケッタ製法によるミネルバボックスを使用した「BANANA」シリーズなど、人気の高いオリジナル製品をいくつも発表しているが、現在の基本はオーダーメイド。
加えて、ワークショップにも力を入れている。道具を用意し、余った革を使って始めたワークショップは反響を呼び、現在はイベントへの出張ワークショップも手がけている。「お客さまも喜んでくれるし自分も楽しい。余った革の有効活用にもなる」と現在、週に1回コンスタントにワークショップを実施。帆布を使ったオリジナルの大型バッグも企画中だ。His Factoryは革のよさ、つくる楽しさを教えてくれるブランドである。

東京都墨田区吾妻橋1-16-5







野菜や果物をモチーフにしたバッグブランド  

かぼちゃや玉ねぎ、茄子、洋梨…。古田佐和子さんは、野菜や果物をモチーフにした独特の造形美のバッグブランド、tete(テテ)のクリエイターだ。最初につくったのは、かぼちゃパンツ(かぼちゃ状に膨らみを持たせたパンツ)の膨らみからインスピレーションを受けた「踊るかぼちゃ」。かぼちゃ独特の形状をバッグに仕立てたキュートで楽しいアイテムだ。次いで、20枚のパーツから構成した玉ねぎの形のバッグ「玉ねぎの魅惑」、茄子を模したころんとした形がかわいい「茄子のしずく」を発表。主に40〜60代の女性を中心に高い人気を集めている。
ユニークな形に加えて、柔らかな質感の革、渋目のカラーリングなど、teteにはほかのどのバッグにもない個性がある。最新作は、洋梨をイメージして制作したシリーズ。野菜や果物シリーズの中心価格は3万円台。キーホルダーやチャームなど、手軽に購入できる小物類にも力を入れ、客層のすそ野を広げていく計画だ。

東京都台東区小島2-9-10 台東デザイナーズビレッジ210号室 http://tete-bag.jp/







芸術作品を目指す靴作り

 「『靴も手で作れるんだ』と気づいたところが私の出発点でした」と語る三澤則行さんは、日本の靴職人の中でも、特にその才能と技術を高く評価される。東京シューフェア「明日にはばたく靴展」芸術性部門・第1位 (2004年)や国際靴職人技能コンテスト(3年に1度ドイツにて開催)「金メダル」、そして最高賞である「名誉賞」 (2010年)など、数多くの賞を受賞。オーストリア・ウィーンで靴作りの修業を積み、帰国後、2011年、工房をオープン。オーダーメイドの靴製作、靴作り教室、革小物ブランドを展開する。
「革は柔らかくなり馴染みますから、納品時にフィッティングのピークを持ってくるという考えではありません。私の使う最高級の革は、いずれ経年で最高のものになるという感覚を知っているからです」(三澤さん)。
また、三澤さんにはもう一つ靴製作のテーマがある。それは、「芸術、工芸品を目指す靴作り」だ。「靴は飾るものではないといわれますが、私の中では工芸品として鑑賞に値するものだという気持ちが強くあります」(同)。このような思いで作品を作り続け、今年10月、念願の個展を銀座の画廊で開催する。
      
東京都荒川区荒川5-46-3 1F
TEL:03-6807-8839