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好調店レポート

 イケダヤ靴店

 

スニーカー激戦区の街で勝ち残るのは「顧客視点」と「遊び心」のある売場づくり

 東京・上野のアメ横商店街には数多くのスポーツ用品店や靴専門店が並び、スニーカー激戦区として注目されている。そんな中、順調に売上げを伸ばしているのが創業明治31年(1898年)という老舗「イケダヤ靴店」である。競争が激しい立地ながらも、お客が途切れることはほとんどない。2月の閑散期でお客が来ないと嘆く売場が多い中、昨対を大きく上回る結果を出している。
 

激戦区だからこそチャンスがある

同店は、上野の中通り商店街に店舗を構える。看板は緑をベースにしており、2人の歌舞伎役者のイラストとレッドウィングのオブジェが強烈なインパクトを放つ。1階はスニーカーとビジネス。隣店にはユニセックスコーナーだ。2階に上がるとメンズのカジュアルシューズをメインに展開。都内では珍しく、全種類の「レッドウィング」を取り扱う。ほかには「ニューロック」、「ウルヴァリン」、「クラークス」、「キーン」など、一癖あるものや、王道のアメカジ、アウトドアブランドが充実している。
 常に売場から新しさや面白さを発信していく同店では、一昨年、1階のスニーカーコーナーを一部改装し、「ナイキ」のラインナップを増やした。壁面にはズラリとさまざまなシリーズが並び、ナイキショップさながらの商品量で来る人を驚かせる。改装したことで売上げも大幅に増加した。さらに今春には同ブランドを3フェイスから5フェイスに拡大。靴専門店ではなかなか見られない光景が広がり、圧倒される。
 大手スポーツブランドは価格競争に巻き込まれがちだが、なぜこのような大胆なことが出来るのか。売場店長の白石○○さんは、「激戦区だからといって他店と競争する気はない。ほかでやっていないことを打ち出すだけ。また、スニーカーを求めて上野に来る人が多いということは、うちで購入してもらうチャンスが増える」と語る。
 普通ならば敬遠するところを、あえて行う。市場とは逆行する提案をしているからこそ、客単価1万円強を維持できる。他店にはない店の“売り”をアピールすることで売上げにつながる。

3社の共同販促を実現

 今回はより多くの顧客を獲得するため、ユニセックスコーナーで新たな企画をスタートさせた。2月初めに同店のスニーカーMDである正藤光平さんが考案し、得意先メーカー3社に呼びかけて共同販促が実現した。参加ブランドは、「サヌーク」(ディッカーズジャパン)、「リーフ」(双日ジーエムシー)、「インディアン」(ライフギアコーポレーション)。
 小屋をテーマにした売場は、靴のイメージからサーフボードやリュック、風景写真などを置き、ウッド調の什器を用いてディスプレイし、リラックス感を表現している。今回の共同販促について正藤さんは、「展示会の時点でVMDの構想や、やりたいことが浮かんでいた。今回のように、売場からメーカーに対して『こういうことをしたい』と発信していかなくてはダメ。メーカー側のモチベーションも上がらないし、自分でも売れる商品を当たり前のように売るのは面白くない。本当に自分が売りたいものをお客さまに提案するために、協力していただいた」と語る。
 共同イベントは、ゴールデンウィークまで実施、購入したブランドのノベルティをプレゼントする。目標は1ブランド70足で、全200足強を販売すること。高みを目指すことで売る側、メーカー側のやる気を奮い立たせる。現在は春を迎えても寒いことが影響し、まだ動きは見られていない。しかし、下見に来る人や興味を示す顧客も増えてきているので、手応えは十分だ。
売場では、今後もメーカーと協力してイベントを積極的に打ち出していく。正藤さんは、「靴専門店という立ち位置はブレないようにするが、“専門店らしくない”売場をつくるのが理想。靴だけを売るのではなく、その先のシーンも提案したい」という。売場から発信されるワクワク感が顧客にも伝わり、多くの人を惹きつける。

上野で一番店を目指す

 同店の今後の展望は、現在レディスコーナーで扱っているカジュアルシューズを減らし、男女共にスポーティーアイテムの充実を図っていくこと。スニーカーとメンズカジュアルシューズのトップをめざす。
 同店のすぐ近くには、大手スポーツ店やチェーン店が並び、商店街のそこかしこで客取り合戦が激化している。そんな状況でも同店が動じないのは、絶えず変化をし続け、挑戦していく気持ちを持っているからだ。顧客目線の品ぞろえ、売場提案、接客など全ての点で、一番店になることが目標である。

▽イケダヤ靴店/東京都台東区上野4-5-2 TEL:03-3832-0248