今月の記事・ピックアップ 2014.4
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――並行して認定機関設立の動きも――


新宿伊勢丹で3週間にわたって販売、
皮産連ショールームではオーダー受付


 
 「足入れのよい革靴プロジェクト」は、2011年から開始された事業で、靴型を研究し、「日本人に最も合った」靴をつくることを主な目的としている。皮産連が産業技術総合研究所(産総研)に開発を依頼、研究により木型を開発し、革靴メーカーの協力により試作品を作成してきた。
 このプロジェクトが、新たな展開を迎えている。ISFや皮革産業連合会の銀座ショールーム「タイム&エフォート」などでの体験会を経て、いよいよ一般消費者に向けての販売にこぎつけたのだ。販売されるのは3月7日からの3週間で、名乗りを上げたのは新宿伊勢丹。同時に、再度「タイム&エフォート」での体験会とオーダーの受付も実施されている。
今回販売のために用意しているのは、次の3タイプのラスト(木型)のパンプスである(図参照)。
● Hikari(ひかり):これまで長年にわたってはき心地がよいという評価を得てきた靴型のなかでも、より多くの人々に評価されてきたもの
● Sakura(さくら):Hikariタイプを修正したもので、2つの特徴を持つ。一つは指の付け根の位置。多くの日本人の足の形に合わせて小指の付け根の位置を調整し、靴型のボール断面の形状が、小指側で薄くなっている。二つ目は靴底のかかとが収まる部分を少し深くしてあること。
● Fuji(ふじ):Sakuraタイプのボール断面の形状を、さらに扁平にした。足囲は同じでも、幅が広くて薄い。
この3タイプのラストそれぞれに、C・D・E・EE・EEEの5種類のウイズに、21・5~25・0cmの8種類の足長サイズを用意(計120型)。トウのフォルムは4種類で、ポインテッドが足囲C・EEE、ラウンドトウはE、エッグトウはEE、スクエアトウがDと分けて、それぞれを浅草の4メーカーが製造している。カラーは形によっても異なるが、黒のスムース、黒のエナメル、ベージュピンクのエナメルの3種類。ヒールはすべて6㎝。
これだけのタイプをすべて売場展開するのはさすがに無理なので、新宿伊勢丹ではSakuraタイプのみを販売している。最も典型的なものでの販売してみようというわけだ。販売の目的は、「お客さまに新しい体験をしてもらうこと。靴のすばらしいはき心地を実感してもらい、お客さま参加型の販売方法を確立すること」である。
価格は2万3000円(税別)で、直接販売している新宿伊勢丹に対し、「タイム&エフォート」ではオーダーを取っている。仕上がりまでは5週間を要する。

進む認定のための組織づくりと
解決を待つ問題


販売と並行して、認証のための組織づくりなどさまざまな動きがあり、今後の課題も見えてきた。
「これまでISFやIFFなどの展示会で体験会を行い、専門店のバイヤーなどたくさんの方に『これはいい!』といっていただきました。消費者にもまずは体験していただくことが大切で、地域に体験できるところをつくっていく必要があります。最初にお金をかけるのは大手企業か、国と業界がともに活動していくかしかないかもしれません。課題はまだたくさんあります。デザインが変化しても参加しているメーカーがきちんとつくり込めるのかも、見ていく必要があります」(産業技術総合研究所・デジタルヒューマン工学研究センター協力研究員・元田真吾氏)
 今回のパンプスは、シャミオール、エイゾー、パイロットシューズ、シアンシューズの4社が製造した。木型は産総研が中心になって開発したものを貸し出したものを各社が使う形である。試作のときはほとんど誤差がなかったが、今後量産体制に入る場合きちんと管理していく必要はある。
 「足入れの良い靴型」の研究に基づいて作られたことを認証のための組織づくりも進んでいる。「認定ガイドライン検討会」が会合を重ね、基本理念も活発な論議を経て完成した。基本的な考え方は、「認証は特保マークと同じで、認証マークのもとにしっかりとした靴づくりをする」というもの。その背後には「靴設計の科学と浅草の優れた靴づくりを知財として、認証で守ろう」という考え方がある。認証は完成品をチェックするのではなく、「製造工程でのルールを作り、こういうプロセスを踏んでできたものはきちんとできているはず」という「プロセス認証」になる可能性が高い。認定ガイドラインの母体がどこになるのか、またいつごろ発効するのかは未定だが、メーカーだけではなく卸や小売など、靴に関係する流通も含めて考えていかなければ効果は半減してしまうだろう。
 元田氏は、小売への期待感をこう語っている。
「最終的にはお客さまが2万円以上の靴をお求めになるわけですから、接客はとても大切です。フィッティングなど人材教育も必要になっていくでしょう。きつめの靴を好まない方が多いのは事実で、そのときちょっと伸ばして足になじむようにして差しあげる。システマチックに、『足と靴と健康協議会』とも話し合いながら、こういう特はこう対処する、と決めていきたい。計測していくことが大切で、それが技術の継承にもつながっていくと思います」
地域全体で、靴を販売することを考える。自店に合うサイズをそろえておき、手持ちの靴を無理やり売ってしまうのではなく、「このタイプの靴なら、1ブロック先の○○シューズに行ってください」という。チームを組んで靴を売る。顧客が登録しておけば、「新作が出ました」とお知らせも来る。
 新宿伊勢丹からは、「郊外店もあるから、今度はそこでイベントをかけてみようか」という話もあるという。