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2013年の靴市場規模 

異なる結果の統計調査

 昨年、経済センサスの2012年(平成24年)活動調査が発表され、2007年(平成19年)商業統計から5年ぶりの同様調査ということで注目されたが、業界関連データの大幅減に、落胆の声が上がった。
 靴はきもの業の売上げは5年間で、卸38%減、小売17%減。かばん袋物業の売上げは卸32%減、小売46%減。スポーツ用品業の売上げは卸75%減、小売17%減であった。
 5年の間には、対ドルで3割もの円高となり、円の名目GDPも7%ダウンし、流通再編などさまざまな変化があったが、靴業界、バッグ業界はそれ以上に落ち込んだのか?
 ところがこのデータの精度にはどうやら問題があり、靴市場の大幅縮小は杞憂らしい。
 調査票の回収率はまだ未公表だが、新しい調査は、サービス業調査と事業所企業調査を吸収し、商業統計と工業統計も継承と範囲が広がったことや、個人情報保護法などの影響で、大都市中心に未回答事業所が増え、07年商業統計の回収率約96%からは大分減った模様だ。原発事故の警戒区域と計画的避難区域は除外とあるが、そんな差異でもない。
 小売業の全体売上げが07年商業調査の134・7兆円(06年度分)から114・9兆円(11年度分)にと、5年間で15%減っているが、別の商業動態統計調査(抽出調査)は、同じ5年間で、134・7兆円から136・7兆円にと1・5%増。衣服身の回り品小売業も1・4%増だ。
 SC協会による全国SC売上げ推定額は、同じ5年間で26・8兆円から27・4兆円にと2%の増加だ。
12年発表の経済センサスでの小売業のネット販売額は1・8兆円となっているが、アマゾン、楽天市場、ヤフーの3社だけでも3兆円(13年分=推定)に達する。アマゾンジャパンは多分未回答だろうが、それにしても乖離(かいり)幅が大きい。
 より正確な数値は、現在配布中の14年(平成26年)商業調査の結果を待ちたい。




13年は1兆3000億円に拡大

 業界規模は貿易統計と生産統計からも試算できる。
 前記5年間は円高で、自動車や機械など輸出大企業は厳しかったが、各種の輸入商品は生活全体に広まった。
 靴はきもの輸入は、スパイク付き靴やスキー靴など街ではけない靴とアッパーなど靴部品を除いて、年4000億円、6億足ほどで推移。円では上昇・下降・上昇で、トータル横ばいだが、ドル換算で見ると、09年を除いて毎年増え、5年間で4割以上拡大。11年は06年の6割増しとなっている。
 
靴はきものの国内生産(スパイク・スキー靴を除く)は、年2500億円から約3分の2の1700億円規模へ縮小。結果、靴はきもの輸入品の比率は金額で約7割となった。
 市場規模推計は、輸入と生産に流通段階の粗利を加え、値引きやバーゲンなどの販売ロス分を減じた。
 高粗利益率ながらロスも多いアパレル店・百貨店・靴専門店向けの流通と、低粗利益率のDS・HC・産業用向けなどの流通があり、その上代設定は元値の4〜1・4倍と開きがあるが、輸入比率、為替相場、業界状況、消費環境などにロスも含めて、輸入と生産の2・3〜1・8倍で試算した。
 結果、2011年1兆1438億円、12年1兆2244億円。13年は1兆3293億円となった。



靴専門店の売上げシェアは6割弱

 輸入品の増加に伴って、流通各段階の省略や統合が進み、輸入商社・メーカー・卸・小売の業務範囲が多層化した。メーカーや卸の直販が増え、インターネット通販の他、直営の売場も既にアディダスジャパンが70店、ナイキジャパン23店、アシックス112店を有す。
 リーガルも135店で176億円と、売上げの約半分が小売部門。アマガサも28店17億円で、売上げの4分の1を占める。
 いずれも好立地にあり、業績も堅調と思われるが、外資系はもちろんのこと、メーカー系企業だと小売部門の業績を明らかにしない場合が多く、小売の別会社を除いては、上記の官製統計からは漏れている可能性がある。
 国内企業は未上場でも決算公告の開示義務があるのだが、実施している中小企業は数%ほどで、詳細な業績となると、公表義務は上場企業のみだ。
 2007年(平成19年)商業調査には、他業種の靴はきもの小売販売額と、卸の流通段階別売上げデータがある。
 06年度の売上げなので、少し古いが、靴はきものは専門店売上げ6515億円に対し、百貨店と総合スーパーを除く他業種の靴はきもの販売が2835億円と靴専業店の4割超もある。

 アパレル店の他、スポーツ店、服飾雑貨店、HC、DS、小型スーパーなどさまざまなルートで販売され、靴やバッグに力を入れる企業は増えている。
 アパレル大手のワールドは、傘下にコキュやイッツデモを持ち、服飾装身具の売上げ比率が全体の2割を超える。
 これに百貨店と総合スーパーの販売分、メーカーや卸の産業向け販売と消費者の海外ネット購入分も加わって、靴はきものの市場規模となる。


 同商業統計の流通段階別で、靴はきもの卸の売上げ9621億円のうち、小売業向けは56・0%の5392億円、卸向けが20・7%の1996億円、本支店間移動が16・7%の1609億円、産業向けが4・7%の456億円、消費者向けが1・2%の114億円だった。
 つまり、卸から小売へという基本的な業務は半分程しかなく、卸からエンドユーザーたる産業向けと消費者向けがこの時点で約6%の570億円。以後ネット通販を含め、右肩上がりを続けていると思われる。
 経済センサスでの靴はきもの小売業のネット販売は全体売上げ5630億円の1・2%、65・7億円。未把握部分があり、実際の販売額はこの数倍と想定される。