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 You‐Hola!(ゆうほら) 昭島モリタウン店店長


JR昭島駅そばのショッピングセンター、昭島モリタウン1Fに店舗を構えるチヨダは、今年の3月、新業態のYou‐Hola!(ゆうほら)にモデルチェンジした。ゆっくりと商品を手に取り、それぞれの個性や機能に触れながら、靴選びを楽しんでもらえる空間に生まれ変わった同店の店長をつとめるのが粕谷理枝さんだ。

20年のキャリアを生かし、イミングよくアプローチ

 高校一年生のときにチヨダの店でバイトとして働き始めたのをきっかけに、学校卒業後、そのまま同社に入社。靴の販売のキャリアはすでに20年におよぶ。同店に就任したのは一年前。ベテラン販売員の粕谷さんに、お客へのファーストコンタクトのタイミングを聞いた。
 「売場でお客さまが足を二箇所止めて、靴を手に取られたら、すかさず『よろしければ試着なさいませんか』『サイズ、お出ししますよ』と声をかけます。1箇所だけでは、ただなんとなく店を見ているだけということが多いのですが、2箇所の場合には『靴を探している』確率が高まると思うんですよ(笑)。当店では、同じカテゴリーの靴を分散して陳列しているので、同じカテゴリーばかり見ているお客さまも声がけの対象ですね。『あ、スニーカーをお求めなんだ』とわかりますから。着ているお洋服もヒントになります。服装と見ている靴がマッチしていると、その服に合う靴をお探しの可能性が高いんです」。
 たとえ接客中であってもこの方針には変わりはない。お客に相対し接客に励みながらも目を動かして、他のお客のちょっとした動きも見逃さないようにしているという。  「接客に時間がかかっていて他のスタッフも対応できないような場合には、いま接客しているお客さまに『すみません』と告げ、いったん接客を中断し、他のお客さまに『いらっしゃいませ』『少々、お待ちいただけますか』とお声がけしています。後からいらしたお客さまへの配慮がないと、そのお客さまは自分が無視されたような気持ちになりますからね」。
 声をかけたら、粕谷さんはお客が靴をはくシーンについて尋ねている。どういうときにはくのか、どのような理由でこの靴を選んだのか。こうした情報を把握できれば、お客が選んだ靴以外にもおすすめの靴をピックアップし、紹介できるからだ。

接客には時間をかけ、 とことんお付き合いする

フィッティングの際には、必ず両方をはいてもらい、爪先の前後とサイドをチェックして店内を歩いてもらっている。どこか痛くはないか、ゆるい箇所はないか。お客でなければわからない感覚について尋ねるが、たとえ多少お客の足にはゆるそうだと思っても、お客がそれで満足していれば決して自分の意見を押し付けることはない。
 「一番大事なのはお客さまの感覚。ただし、『もしはいていてゆるくなってきたら、また来てくださいね。調節しますから』とお知らせしています」。  客の声に耳を傾け、ときにはインソールで調整し、はき心地をじっくりと確認しているため、接客時間は最低でも30分、長いときには1時間近くかかることもある。
 「でも、それでいいんです。お客さまにはとことんお付き合いするのが私のモットー。他のスタッフにも『接客には時間がかかってもいいからね』と話しています」。  売り急ぎを避け、お客の要望には真摯に応えて、時間を惜しまず接客する。そんな粕谷さんへの顧客の信頼は厚い。担当店が変わり、異動になっても、粕谷さんを慕って電車に乗って店に顔を見せに来る客もいる。クレーム時の対応がきっかけとなって粕谷さんのファンになったお客もいるそうだ。
 「クレーム時に大事なのは、とにかく先方の言い分をすべて聞くこと。それから対応策を考えます。『この店は私の怒りをすべて受け止めて聞いてくれた』と思っていただくのが大事。自分が逆の立場だったらそうしてもらいたいですから」。  お客目線を重視する粕谷さんは、売場のディスプレイにも力を入れる。靴をはいて出かけるシチュエーションを喚起させるライフスタイル提案型のディスプレイだ。100円ショップで調達した小物類を駆使して夏のリゾートや海外旅行をイメージさせる演出は、顧客の購買意欲を多いに刺激しているに違いない。
 「いまの目標は新しく生まれたYou‐Hola!(ゆうほら)の認知度を上げることですね。スタッフの接客現場にも目を配り、スキルアップに力を入れていきたいと思います」。

 接客のポイント
・お客が売場の2箇所で足をとめたり、服装とマッチした靴を探しているときにはすかさず声がけをする
・お客に「無視された」と思わせないよう、接客中でもお客の動向を視線で追い、ときには接客を中断して一声かける。
・クレーム時にはお客の立場に立って言い分をすべて聞き、そこから対応策を検討する。