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![]() JR盛岡駅から東へ開運橋を渡って進むと、街の中心部にある大通商店街が現れる。そのほぼ中央に位置する菅原靴店は創業1950年の老舗靴店で、「質とはき心地のよい靴」にこだわり、良質な革靴を扱ってきた。現在は三代目である代表取締役の菅原誠さんが、バイイングと店のトータルディレクションを行っている。店舗の外装は一見すると、商店街立地によく見られる昔ながらのファサード。だが、ショーウインドーの中には、高級なイタリア製の靴やジャケット、革小物やアクセサリーまで、1点もの感覚の個性的なア イテムがセンスよく並んでいる。都内の百貨店で見かけるようなクロコのシューズやエレガントなバッグなどは、ここが盛岡であるということを一瞬忘れさせるほど。ここまで贅沢にインポート商材が並んでいる売場は、全国でも珍しい。30万人都市の盛岡の街で、このマニアックな業態をつくるに至るまではどんな道のりだったのか。菅原社長に聞いた。 3フロアの店舗で、5万円までの商品を展開1階から3階までが菅原靴店の店舗になっており、3フロア合わせて130坪ほど。入り口を入ると縦に長い奥行きのあるレイアウトになっている。1階の右半分には、レディスの国産ブランド(卑弥呼、クロスロード、エイゾーなど)とインポートカジュアル&エレガンス(エミュ、マナス、プロジェットなど)、レディススニーカー(ノーネーム、ストックトンなど)が並ぶ。左半分はメンズスニーカー(パトリック、パントフォラ ドーロ、ディアドラなど)、インポートビジネス(クロケット&ジョーンズ、パラブーツなど)、インポートカジュアル(ステファノガンバ、ストックトンなど)、メンズバッグ(ペッレモルヴィダ、アニアリなど)で構成されている。 2階は「Piace?」という、レディスのハイブランドのインポート売場。シューズ(ファビオ・ルスコーニ、ペリーコ、サルトルなど)、バッグ、アクセサリー、アウター類がセレクトされている。雑誌「ストーリー」で活躍する著名スタイリストとのコラボアクセサリーも、国内でのリアル店舗は菅原靴店のみの取り扱いというレア度だ。また2階奥ではフランチャイズで「ヨシノヤ」を展開している。 3階は「Per noi」と名付けられたメンズ売場で、“LEON系男性”に特化したイタリア製のジャケットやパンツ、服飾雑貨が並ぶ。また宮城興業(山形・南陽市)のオーダー靴コーナーも併設されている。平均上代は、メンズ靴で2万5000〜5万円、レディス靴で1万5000〜4万円。 ![]() イタリア靴との出会いとバイヤーとしての自信「2000年に、イタリアの語学留学から日本に帰国しました。当時は、父が経営していたこの店も時代の厳しい風にあおられ、あまり元気のない状態でした。新たなバイヤーに就任したそのころ、ちょうど『コギャルブーム』という空前の厚底ブーツブームが巻き起こり、この波に乗らなければ、と思ったのです。そこで大量に厚底ブーツを売りまくり、会社も元気を取り戻したかに見えましたが、従来の上質なお客さまを失ってしまい『自分は何のために戻ってきたのか?』と自問自答しました」(菅原誠社長)。バイヤー就任後しばらくして、ある知り合いの靴店が魅力的なイタリアの靴を販売していたのを見て、「こんなの売れるのですか?」と尋ねたところ、「やってみたら?」と勧められた。少しずつ売場に置いたところ、1ヵ月ほどで完売した。このことが、菅原靴店にとって大きな転換点となった。 そこから、持ち前のイタリア語を生かして海外の見本市などで靴やバッグを直輸入するようになる。本店のМDも、インポートとこだわりの国内ブランドに徹底して絞り込んでいった。前職で広告やマーケティング関係の仕事をしていたこともあり、インポート商材を扱いたいと考える売場に、商品を導入するに当たって、スタッフに対するアドバイスなども行っている。 「直接靴職人やデザイナーから話を聞いて仕入れることで、商品の本当のよさをお客さまに伝えることができるようになりました。しかし、インポート商材はロットが大きく、在庫があっという間に膨れ上がる。『このままではマズイ』と思った矢先、あるきっかけで楽天市場の存在を知り、5年前からネット販売の波に乗ることができました。イタリアのトスカーナやプーリア州の個性的な靴を求める日本全国の男性に向けて、商品を届けることができるのは嬉しい限りです」。 菅原靴店のリアル店舗とネットショップのコンセプトは、あくまでも「靴」を主軸としてバッグや雑貨、アパレルをセレクトする姿勢だ。服からМDを考える一般的なセレクトショップとはスタンスが違う。このスタイルに共感して、リアル店でもネットショップでも基本的にはリピーターの方が多い。 「価値ある体験」を重ねて接客に生かす
菅原靴店は高級ウエアにも進出、「SARTO」のスーツ、「Blu Bre」のストールのセミオーダーなどほかにはないブランドのオーダー会も実施して、個々の顧客との顔の見えるつながりを大切にしている。とはいえ、高級商材だけにリアル店舗の顧客は限られた富裕層だけに限られるのではないだろうか。 |
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