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特集 メーカー・卸の直営店

 変わるSC、求められる業態

物販から人が集い、時間を消費する空間に

SCの屋上は駐車場から庭園に

昨年11月から12月にかけて、イトーヨーカドーが核店舗のグランツリー武蔵小杉と、イオンが核店舗のイオンモール岡山が、新しいスタイルのSCとして話題を集めた。オープン後も高い集客力を誇り、新たな取り組みは順調に推移している。
この新たな取り組みとは、SCが提供するものは、物販から時間・空間に重きを置いていることが挙げられる。川崎・中原区の武蔵小杉駅近くにオープンした「グランツリー武蔵小杉」は、1〜4Fを物販、フード、飲食、サービスを提供するフロアとしており、駐車場は地下1〜2Fに設けている。これまでであれば、シャワー効果を期待して、駐車場は物販、飲食ブロアの上に設置するのが一般的だったが、同SCでは駐車場に変わって屋上庭園「ぐらんぐりんガーデン」を設けている。屋上面積1万6000uに対し、提案は4300uと、商業施設の屋上提案では日本最大級の広さを誇る。3世代に対し、ショピングの予定がないときでも、気持ちのいい時間を過ごしてもらいたい、という考えで、魅力的な空間を提供している。また、各フロアをライフスタイル別に構成し、許可保育園の開園も予定するなど、新たなサービスの提供にも取り組んでいる。
郊外での大型モール開発を続けていたイオンが、市中の駅と直結して誕生したのが、イオンモール岡山だ。地下2〜地上7階までテナントは入るが、駐車場は5階から上になるが、ここでも第2のグランドフロアとなる5階に、5〜7階のショップが囲むように、屋上オアシス空間「ハレマチ・ガーデン」が設けられており、1日中楽しめる憩いの空間を提供している。また、行政や公共の施設や、情報発信の施設、さらには保育所やクリニックを導入しており、モノだけでない、地域の生活に応じた暮らしの提供を行う商業施設に取り組み始めている。
ららぽーとを手がける三井不動産も、埼玉・富士見市に開発中の「ららぽーと富士見」で、モノから時間や空間、体験を消費する場の提供を目指している。ららぽーと最大となる4万2000uの緑地を建物の周囲に確保し、人は集まり、憩える場所にしている。また、地域を盛り上げるためのコミュニティの拠点にしようと、地元農協と組んだイベント開催や許可保育所やクリニックの誘致で、3世代の地域住民の暮らしをサポートすることを目指している。

地域の暮らしをつくるSCに

こうした考え方の変化は、すでに各地に大型SCが出そろい、大型モールが旬でなくなっていることがある。このため、モールに個性を出すことが求められており、店で街を作ることから、地域の暮らしをつくる時代になっている。
ここでの傾向としては、地域の生活に応じた開発を進め、これまでの若いファミリーにとどまらす、3世代の客層を取り込むことを目指している。また、屋上庭園の設置などママと子供との時間消費のための空間づくりにウエートを置いている。さらに、物販以外の行政や医療、学習塾などのインフラ機能を高めることに取り組んでいる。
人気ショップの導入もデベロッパーの大切な役割だが、ここでも変化が見られる。大型売場を占めてきたファストファッションのショップ導入が減っていることもその一つ。ユニクロを除いて、坪効率の低下が見られるようになっていることも、その理由のようだ。
 高い人気を誇っているセレクトショップも、客数の減少が顕著となっている。単価アップで売上げは維持しているが、消費税増税の影響もあり、これまでとは取り巻く環境は変わっている。
 一方、フードコートは好調で、価格もアップしており、サービス関連の売上げ比率が高まっているのが現状だ。

アパレルの靴専門店が増える

靴業態の最近の動きをみる。
アパレル企業の靴専門店の新業態が増えており、SCの中では一定の勢力に成長している。革靴だけでなく、ケミカル商品での展開も見られ、革とベターケミカルによる1万円前後の価格での商品展開が、有力になっている。バッグなども加え、VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)を含む店づくりのレベルも高い。
ファッション・トレンドに左右される面もあるが、カジュアル展開のショップや、スニーカーを主力にファッション提案する業態ショップも好調に推移している。同時にエコ提案や足からの健康志向を提案するセグメントショップも、消費者から支持されている。
ウォーキングシューズによるコンフォート提案する業態に取り組むところも出てきている。こうした売場は団塊世代を対象に店づくりをしているが、ファッション要素も備えていないと、消費者からは注目されない。
また、GMS系の売場の多いフルライン型店舗は、ますます低迷している。価格での訴求力が低下し、時間消費、空間消費といった新しい流れのなかで、商品だけの提案はさらに難しくなっている。

店内イベントが開催できる店舗

SCの商圏規模にもよるが、セグメント化、関連雑貨の導入による業態化は、今後さらに求められるショップとなる。店舗の外からでも、どういったテイストの商品を扱っており、どんなスタイルを提案しているのかがわかる。さらに、店づくりが価格ラインを表すようなショップである。
SCが時間消費のための施設づくりに取り組んでいるが、ここではママと子供の集客を狙っており、子供にセグメントしたショップもいま以上に期待される。メーカーによる直営店の開発が進んでいるが、品ぞろえ型の子供靴専門店も有望だ。
フルサイズ陳列での店づくりも見直されている。これまでのようなボリューム陳列ではなく、ショップが提案するモノに合わせて展開アイテムはセグメントし、扱い商品についてはS〜LLのフルサイズを店頭に並べるというもの。こうすることで、接客時間が長く取れ、サイズもインソール調整するなど、これまでよりも売り逃しを減らせることが期待できる。
定期的に、売場内でイベントを行うことも、これから求められる店舗になる。足型計測やフィッティングのイベント、靴手入れのセミナーなどワークショップ(実演)で集客し、売場のファンづくりに努める。また修理や手入れなどのサービス提供を、イベント性を持たせて実施する。同時に、こういったことを行うためのスペースを売場の中に設けることも必要になる。 
拡大するシニアマーケットを狙って、新たな業態開発も進んでいる。現状ではウォーキングを主力に提案しているショップが多い。ここでは団塊世代をこれまでの60〜70代ととらえず、ファッショの切り口で旅行などのライフスタイルを提案すべきだ。


小売店との協業を考慮し、直営店を出店する

直営小売店舗を展開するメーカー・卸は60社を超える。SC、駅ビル、路面への出店のほか、百貨店やアウトレットでの展開もある。
表は同一ショップ名で10店舗以上出店する直営店を集計したもの。
1970年から「リーガルシューズ」で直営ショップを展開するリーガルコーポレーションは、ほかに「キャメロット」「リーガル・ファクトリーストア」「リーガルa.k.a.」「クラークス」「ナチュラライザー」と、ワンブランド展開するショップはいずれも10店舗を超えている。
「ハッシュパピー・スペシャルティーストア」も、早くから1ワンブランドでのショップ展開を始めていた。「ハッシュパピー」のコンセプトショップで、数字はパートナーショップとの合計で、ほかにアウトレット展開の直営ショップが9店舗ある。
「アシックスウォーキング」や「ビルケンシュトック」はFCと並行して、急成長している。
「ジェリービーンズ」「イーボル」「グリッター」といったベターケミカルを展開するブランドの直営店展開も進んでいる。
はきよさで差別化するブランドも、直営店の展開で店舗を伸ばしている。「バークレー」「コンフォートクリニック」「フィットフィット」「モネ」などで、FC展開もある。
アパレル企業は直営店展開で靴の市場を開拓しようとしている。表には「フィットフィット」「オデット・エ・オディール」「ルタロン」「チャールズ&キース」といったショップが10店舗を超えている。
このほか、人気インポートブランドをワンブランドショップで展開する「アグオーストラリア」「ミネトンカ」などがある。卸販売と並行して、ワンブランドでも展開できるだけの人気ブランドと言える。デイリー&ルームシューズの「パンジーショップ」も店舗数を増やしており、ブランド周知を図っている。
こうした直営店展開は、大手チェーンがPB商品の扱いを増やし、市場シェアを高める一方で、一般小売店の数が減っている中で、その店舗数を増やしている。コンセプトショップとして、ブランドの世界観をアピールする場でもあり、小売店にとってもメリットはある。また、パートナーショップという形で、ショップ展開する小売店にとって、メーカー・卸の直営店展開は、販促、店づくり、MDの面でも支援されることは多い。表では、「リーファルシューズ」が最も多い79店舗のFC店舗(パートナーショップ)がある。