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特集<メンズ・ケミカル>オン&オフ需要を探る
市場分析
防水性とクオリティ・アップで、7000円台のビジネスも人気

高機能で手ごろな価格

 皮革の価格が高止まりし、皮革シューズが高騰するなか、ケミカルシューズが注目されている。レディスシューズではボリュームゾーンからややアッパーまでケミカル市場が広がっているが、メンズではどういう状況になっているのかを探ってみた。
 実は、メンズシューズ、メンズバッグは「最後まで残る革の市場」と呼ばれている。これらのアイテムにこだわる男性が多いからだ。だが、実際のところヤングゾーン、ボリュームゾーンにかけてはそのこだわりはなくなっているようである。
 ケミカルシューズといっても、種類はカジュアルからビジネス、またファッション性の高いものとさまざま。そのうちでもっともはかれているものが、ビジネスシューズである。選ばれる理由は、まずはその機能性にある。
「防水タイプでは、アウトソールから4pまで防水シートが入っており、これからの梅雨の季節にはありがたい。軽量タイプは底材のウレタン比率を高くして、軽さを出している。通気性のよいタイプはアウトソールの前部分をメッシュにして通気をよくし、ムレを防ぐ」(グリーンボックス板橋店)
 「普段は革靴でも、レインシューズ感覚で防水・防滑機能付きのケミカルビジネスを買う人もいる」(イケダヤ)
 注目される機能は防水、次に軽さ、防滑、通気性などである。さらに、数多くの機能がついても価格が手ごろ。このコストパフォーマンスが、ケミカルシューズの最大の魅力といえる。
 「防水、通気性などの機能性がついても5900円、低価格ラインでは3900円と買いやすく、この機能性と価格が選ばれている理由。カジュアルシューズには防滑、幅広、エアクッションまで機能がついて、何と3900円というものもある」(グリーンボックス板橋店)
 「ビジネスでは5000円代まではケミカル、6000円以上は革になる。若い層は、素材に対して革、ケミカルのこだわりはあまりなく、価格が安いから、雨に強いからという理由で購入するケースが多い」(アオキ)
「防水性や価格からいえば、ケミカルシューズがお勧め。価格からすれば、レザーシューズの半額。修理しつつ長くはくのか、旬のものをどんどんはいていくのかという選択だと思う。服と靴、どちらにお金をかけるのかという選択でもある」(タップフット)

皮革のクオリティに近づくノンレザー

 ケミカルシューズが選ばれる理由のひとつに、タッチ、見た目とも皮革とほぼ同じである、ということがあげられる。
 「売れ筋のライダース風エンジニアブーツの素材は、手触りも見た目もヌメ革そっくり。メッシュの型押しを施されたスリッポンシューズは、一見するとイタリアの高級ブランドにも引けを取らない」(タップフット)
 ガラス加工を施されたメンズシューズは、どちらが革かわからないほど。はきこんで傷がつけばわかるのだろうが、新品の段階で判別するのはプロでも難しい。まして革をそれほど見慣れていない一般の人が区別するのは、まず無理である。
 革とノンレザーが近づいているのは、技術の進歩はもちろんのことながら、皮革の市場にもある種の原因がある。皮革が高騰し、クオリティの高い素材が手に入りにくくなっているため、エナメルやガラス、箔など加工レザーが多く提案されるようになっているのだ。革本来の表情が表面に出なくなっているため、垣根が一段と低くなった感がある。革にこだわりのないマスゾーンやヤングゾーンが「見た目がさして変わらないのなら、安価なほうを選ぶ」のはむしろ当然といえる。
 「若い層は、素材に対して革、ケミカルのこだわりはあまりなく、価格が安いから、雨に強いからという理由で購入するケースが多い」(アオキ)

価格の面でも境目が消えていく

 ただし、問題もある。価格の面でも、ケミカルシューズとレザーシューズの境目がはっきりしなくなっている。
「最近では革の低価格帯とプライスが重なってきた。ケミカルの中心価格帯は5900〜7900円だが、少しプラスすれば革が買えるから、さらなる差別化が必要。逆に革でも、1万円代半ばのクラスは中途半端で売りにくい」(イケダヤ)
 「革靴もよく売れている。価格はワンランク上になっていて7500円くらいから。革の価格の高騰を受けて毎年1000〜2000円程度上がっているというが、実際のところケミカルとの価格差はそれほど大きくない」(グリーンボックス板橋店)
 レザーシューズとケミカルシューズの価格差がなくなった場合、消費者はどちらを選ぶことになるのか。手入れがしやすく、機能性がついたケミカルシューズなのか、高級感のあるレザーシューズを選ぶのか。もはやケミカルシューズには、「安かろう・悪かろう」というイメージはない。
 その点からすれば、双方ともデザイン、機能をよく考慮し、周囲と差別化していく必要があるだろう。これからはむしろ、レザー、ケミカルの区別よりは、テイストやブランドの差がより重要になってくるのかもしれない。