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 特集この秋も主役決定!スニーカー

・20年ぶりにスニーカーブームがきている。アスレチックシューズはもちろん、アパレルブランドまでスニーカーをコーディネイト商品として取り上げるようになった。
・前回のブームのように、男性がスポーツ選手のシグネチャーモデルに熱中するのではなく、ファッション商品として女性の購買が市場をリードしている。
・特集では売場の動きを見ると同時に、秋冬のスニーカーMDの考え方を、3つの業態に分けて見る。
 
 業態別スニーカーMD

 業態別に考える品ぞろえの狙い目と販促
 アジアリング/高橋悟史

  盛り上がりが見られる今回のスニーカーブームに対応させた今後の戦略と、秋冬MD(マーチャンダイジング)の最適化のポイントを、次の3つの業態別にまとめてみた。
  <スニーカーショップや大手靴チェーン店>。ここは、「ナイキ」や「アディダス」などの大手スポーツブランドの取り扱いがメインとなる。既にイメージが確立されているこれらのメジャーブランドの取り組み方と演出方法が今後も重要となる業態。
  <靴のローカルチェーン店や地域一番店>。以前のスニーカーブームの時は、<1>同様に、メジャーブランドの扱いが中心であったが、取り扱える商品やブランドに制限が出てきており、20年前と同じスタンスでは売上げが作れない。大手チェーン店と差別化させる打ち出しが最も重要となる。
  もう一つは、ファッションビルやショッピングセンターなどに出店している<トレンド中心の婦人靴業態>。以前はスニーカーの取り扱いはほとんどなかったが、近年ファッショントレンドとしてスニーカーがレディスにも定着してきたので、婦人靴とスニーカーをいかに売場でミックスさせていくかが重要となる。
 今回の戦略とMD提案は、以上大きく3つの業態に分けて解説していく。もちろん、お店や地域によって、またはオンラインストアの実力店などは上記の分類に該当しないお店もあると思うが、現在の靴流通でのスニーカー戦略を考える上で大まかに分類した際、このような3つの業態に分かれることを、まずはご理解いただきたい。加えて、アスレチックシューズとは別に、スポーツテイストのMDでスポーティーなファッションシューズを展開することも考えられる。


1 スニーカーショップ、大手靴チェーン店

人気アイテムで構成するMD。女性向けの業態開発も進める  

今後も「ナイキ」や「アディダス」、「アシックス」、「ニューバランス」など大手スポーツブランドの人気アイテムがMDの中心となる。ただし、現在はアマゾンにも楽天市場にも、店舗と商品が無数に存在しているので、売れ筋品番の在庫を積んだだけでは、生き残り策とはならなくなった。
  今回注目される女性需要に関しては、ブランド別に陳列された今の売場では、選択肢が多過ぎてかえって選びづらい。また、イメージするスニーカーが先に決まっているので、ごちゃごちゃした売場では探したくないと考える。女性の場合、選択肢が多いことよりも、自分の志向性に合った信頼できるお店には、先にオススメアイテムを絞って提案して欲しいと考える人が多い。
  スニーカーの実力店であったとしても、「ABCマート」や「テクストトレーディング(店名はチャプターやアトモスなど)」が先行して進めている、女性向けの業態開発が急務と言える。売場面積もアイテム数も絞った形でいいので、今最も旬なアイテムを、分かり易く陳列させ、靴下やレッグウェア、革小物など服飾雑貨をミックスさせた業態が求められている。
 また、フルライン型の靴専門店であれば、メンズとレディス、子供靴と売場が明確に分かれているところが多いので、秋冬MDでは親子や夫婦、カップルのおそろいばきを想定した提案と売場作りが求められる。特に郊外のファミリー世代の休日靴として、ブランドやアイテム、カラーをおそろいにしたスニーカー需要が拡大するので、オススメをピックアップして、親子おそろいばきを提案するなど、店頭部分の集積方法で、お客の購入モチベーションを高めていきたい。
  これからは商品面(商品スペック)だけでなく、このようなシーンや生活提案などの販促活動(お客目線の幸せの演出)を、ホームページやブログで掲載するなど、自社メディアを積極的に活用していく。

ポイント
●女性需要を強化した売場づくり。または業態開発
●親子、夫婦、カップル需要に対応した提案
●品ぞろえや価格だけでなく、集積の仕方、提案力で差別化を図る
●販促を主体にした自社メディアのPR活動
●フィッティングで靴専門店の強みを発揮


靴のローカルチェーン店、地域一番店

得意の客層に絞り込み、革靴と一緒に提案することで差別化する

  「ナイキ」を筆頭に大手スポーツブランドの商品も欠かせないが、上記の大手チェーンと比較すると、扱える商品のバリエーション、プロパー商品に対する仕入れ価格の優位性は低くなる。現在、大手スポーツブランドの商品は、代理店を通じて期中に納品される特価商品の割合が多いのが現実だが、今一度プロパー商品に強いお店に戻すことが急務。
  そのためには、大手チェーンよりも、どの客層に強いお店になるかを明確にしていくことが不可欠。勝負していく客層を明確にした上で、必要なアイテムを代理店の担当者に逆提案するような力を付けていきたい。
  また、地元密着型という特性を最大限に生かすため、これからはきめ細かい顧客管理が欠かせない。不特定多数に向けた従来の新聞折り込みチラシから脱皮し、お客の属性や買い物履歴に応じた、セグメント型のハガキMDやメールマガジンの配信に真剣に取り組んでいく。
  ローカルチェーン店や地域一番店は、婦人靴を購入してくれるお客が「宝」となっていく。そのため、婦人のスニーカーは大手チェーンよりも、意識的に感度の高い商品、高価格帯の品ぞろえを強化したい。
  一方、革靴は浅草の革ブランドを中心に考え、ヨーロッパのインポート商品を追加していく。そしてここに厳選した「ナイキ」や「ニューバランス」の商品を組み合わせていく。ここでは競合店と全く同じ「ナイキ」の商品でも、見え方は3倍くらい付加価値が付けられる。
  このように、エレガンスな雰囲気を維持しながら、大人のスポーティーを表現していく。大手チェーン店と大きく差別化できるのは、女性のエレガンス志向の客層しかない。秋冬は、天然ハラコやファーを取り入れたスリッポンスニーカーや、レトロランニングタイプを強化し、「ニューバランス」と比較しながら選んでもらうことで差別化する。
  メンズの場合は、購入モチベーションが高い、ビジカジや通勤スタイルに焦点を合わせていく。「スピングルビズ」や「パトリック」のビジネススニーカーに、「クラークス」のハイテクソールを組み合わせて、「スマートビズ」のコーナーを新設する。
  一方、郊外ロードサイド型でシニア客層が多い場合は、新しい価値観を持った団塊世代に向けたMDを考える。今の団塊世代は以前のようなシニア商品を好まないので、年齢を感じさせない若々しい靴として、アウトドア靴やスニーカーを打ち出す。「メレル」や「キーン」などの本格アウトドアブランド、「リーガル」や「クラークス」の靴ブランドを組み合わせ、最終的に「ナイキ」や「アディダス」、「リーボック」の新作パフォーマンス靴で完成。“アクティブライフ”をテーマに、ますます活動的になるシニアをどんどん取り込んでいく。

ポイント
●再びプロパー商品に強い、プロパー提案できる体制を作る
●地域密着型の特性を生かし、きめ細かい顧客管理を実践
●婦人革靴のお客は「宝」。この革靴のお客に高額スニーカーを提案
●メンズは「ビジネススニーカー」に焦点を合わせ「スマートビズ」を提案
●新しい価値観を持った団塊世代に高品質スニーカーを売る


トレンド展開の婦人靴店

ファッションテーマに沿ったMDで、コーディネイト提案する

  トレンド層に特化した婦人靴のお店でも、スニーカーは重要なカテゴリーとなってきた。「コンバース」や「ナイキ」、「ニューバランス」などの大手スポーツブランドの商品をそろえつつ、実売では婦人靴メーカーのアイテムや、自社企画のスニーカーを積極的に投入していく。
  女性の場合、男性よりも色や柄、素材、丈の長さ、ソールの厚さや形状などを重視するので、ディテール別に集積することで訴求力を高めることができる。
  この秋冬は、モノトーンの着こなしが全国的に広がるので、店頭での「黒vs白」モノトーンカラーの特集は外せない。現在の白ブームは、秋冬になって再び黒スニーカーに人気が集中するが、あえて黒のコーディネイトの外しで白も必要となる。「黒7」対「白3」の比率で、モノトーンを表現するとバランスが良い。
 また秋冬になると、ボアやハラコ、毛足の長いスエードなど、毛起素材がトレンドとなる。ボアは内ボアだけでなく、アッパー全面にあしらったモコモコタイプも必要となる。これらのトレンド素材は靴ブランドのスニーカーを中心にそろえ、厚底や薄底、インヒールタイプなど底のバリエーションもそろえて対応する。
 晩夏からボヘミアンスタイルがブームとなっていくので、スエード素材のスニーカーブーツも必要となる。実績のある「インディアン」や「コロンビア」のスニーカーブーツに、靴ブランドの商品をミックスさせた構成で品ぞろえの幅を厚くしたい。
 このように婦人靴の売場では、ファッションテーマや、ディテールを最優先したMD提案が不可欠なので、女性スタッフのアイディアを取り入れて、集積と見せ方、コーディネイト提案で差別化を図ることがポイントとなる。若い女性スタッフによる等身大のコーディネイト提案が、大きなPR力となるので、ブログやインスタグラムなどのコミュニケーションサイトを積極的に活用していく。
  また、ヤング中心の業態であっても、これらのスニーカーを強化することで、30代や40代のファミリー世代の取り込みにも繋がっていく。

ポイント
●ファッショントレンドに合わせた品ぞろえ
●色や素材などディテールで集積する
●靴ブランドとスニーカーブランドをリミックス
●実売ゾーンは自社商品を強化
●ソールと素材のバリエーションでトレンド感を表現
●女性スタッフによる等身大のコーディネイト提案を、コミュニケーションツールで発信

 ◆  ◆
  いずれの業態であっても、これまでのような低価格競争ではなく、独自性のあるMDとオリジナル商品の開発、絞り込みや演出面で差別化を図ることが求められる。
  また、独自性のある試みは、どんどんお客に伝えていかないと効果が表れないため、ホームページやオンラインストアなど自社メディアを「広告塔」と位置づけし、日々PR活動をしていくことが不可欠となる。
  ホームページやオンラインストアなどウエブを中心とした、自社メディアの最適化。そして、顧客管理を行い、お客の属性と買い物履歴に応じた、セグメント型の販促活動は、今から本気で取り組んでいかないと生き残れない。