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プロの人材を育てる

ジーフット

人材育成の基本となる社内資格「フィッティングアドバイザー」

 ジーフットの人材育成の根本には、「フィッティングアドバイザー(FAd)という社内資格がある。同社は、「足元からのスタイル提案業」を経営理念とし、FAdは、これに沿った人材を育てることを目的として、2006年からスタートした。09年から全国に本格展開し、現在では約8000名の従業員(パート含む)の中で2300名が取得している。目標は取得者を3年後従業員の半数にあたる4000名にすることだ。毎年2000名程度受験し、合格率は平均32%、この8月には50%まで上がってきており、次第に上昇している。

靴のお手入れ知識と接客技術を叩き込む

 試験を受けるためには、まず講習会(10時〜17時)に出席しなくてはならない。内容は前半がコロンブス社による皮革の種類や靴のお手入れに関する講義で、後半がエリアマネージャーや営業部の担当者によるロールプレイングの実習。その後1カ月くらいしてから試験となる。試験は全国35カ所のエリアに分かれ、年に数回行なわれる。東京のように店舗が多い地区では年4回、遠隔地では年1〜2回実施される。本部では、どの地区でも平均年3回は実施したいと考えている。
 試験は1日3ラウンドで、1ラウンドで7〜8人が受験する。仕事を丸1日休まないですむように工夫されているわけだ。筆記は20分ずつ2科目、ロールプレイングが8分ぐらいで終了する。合格ラインは80点。
「ロールプレイングを重視しています。ポイントは3点あって、@お客さまのニーズをしっかりと聞く(情報交流) Aお客さまのはかれるシーンのイメージに合うか(シーンメイク) Bフィッティング で、ことにフィッティングがポイント。かかと位置、つま先、ボールジョイント、甲の締め付け、アーチ、トップラインなどが合っているか、触ってフィット感を確かめます。試験官は我々教育担当者と、エリアマネージャーとで担当します」(人事総務本部 西川悟人事開発部部長)
 とはいえ、だれもがいつでも受験できるわけではない。パートで入社した場合、試用期間は2カ月。これが終了した人が受験可能となる。一般には入社して半年くらいになると「資格を取ったらどうか」と店長やマネージャーから勧められる。セールやイベントと重ならない時期に講習と試験を受ける。パート社員の場合、FAdの資格を取ると、手当が支給される。



正社員は新人研修のプログラムにも

 一方、正社員の場合はすでに新入社員研修の段階で講習が組み込まれている。「社員は全員取得する」というがスタンスなのである。社員の取得率は約6割と、半数を超えている。ことに現場社員の取得率は高く、店舗では7割にものぼる。サブリーダー、店長、マネージャークラスは必ず持っているといっていい。
「営業部では、FAdの取得をひとつの目標としています。接客レベルを上げていくことは大きなテーマであり、この資格はそのための大切な手段。店舗の目標にもなっていて、『この店舗には取得者が○名で、今年はさらに○名の合格を目指す』というように、具体的な数字となって出てきています」
 「今年中に○名の合格者を出す」ということが目標となると、店舗側も達成のために懸命に受験者をバックアップ。資格を持った社員、パート社員が徹底サポートする。そんな勉強に役立つのが、各店舗に配置されているタブレット。ロールプレイングの模範演技やお手入れの方法などが配信されており、少しでも時間のあるときに繰り返し見て勉強する。
 こうして接客に自信がつくと、さらに技術を磨くための場が設けられている。毎年1月に開催されるロールプレイングコンテストがそれで、2回の地区予選を勝ち抜いて本戦に臨んでいく。FAdは、このコンテストへの道でもある。

その先のステップ「フィッティングマスター」へ

 さて、積極的にFAdの浸透を図っているジーフットだが、その次のステップは何か。
「フィッティングマスターという資格が設けられています。足にマッチングする靴を選ぶために、足の健康、構造、変形などの知識を身に付けます」
 内容はシューフィッターにも匹敵するもので、まずは1泊2日で靴の商品知識、フットゲージやメジャーを使用する計測方法などをみっちり学ぶ。現在の有資格者はまだ35名程度だが、2〜3年のうちに100名にまで拡大する計画だ。
 ジーフットの例は、社内資格の活用という意味での良い例といえる。社内資格や研修制度を設定している企業は少なくないが、営業目標として設定し、さらに取得のためのサポートもあるところは多くない。今後、フィッティングマスターの資格がどう浸透していくのかにも注目したい。


現場レポート アスビーウォーク 北浦和店

接客に自信がつき、お客さまからの信頼感も高まる

懸命に練習したロールプレイング

 河村由美子副店長がジーフットに入社し、アスビーウォーク北浦和店に配属になったのは、2012年11月のことである。その1年後、フィッティングアドバイザー(FAd)の資格を取得。前店長に「アスビーウォークは足によい靴を販売している。自信をもっておすすめできるように、資格を取りなさい」と勧められたのである。5名のスタッフが全員資格を取得することをめざし、最初に河村さんと猿渡さゆりさんの2名が受験した。
「ロールプレイングでは、販売する靴を決め、ストーリーを考えて試験に臨みます。前店長が全面的にバックアップしてくださって、何度もお客さまの役を演じてくださいました。靴の状況を確認するのに『親指が当たっていませんか』『土踏まずは大丈夫ですか』などのポイントがあるのですが、そのフローもチェックしてくださいました。アスビーウォークは接客販売が原則で、普段の店頭での接客をそのまま発表すればいいことですので、ほかの業態より楽だったかもしれません」(河村副店長)
 店頭では前店長やスタッフたちを相手に、わずかな時間を惜しんでロープレに励み、自宅でもお嬢さんを相手に練習を続けた。そのかいあって、河村副店長は1回で見事に合格。
 合格すれば名前入りの認定証が発行され、原則的には店頭の壁に飾られることになる。一時は取得者が4名いたが新しいメンバーが増え、現在は6名中3名となっている。

シューケア用品のお勧めにも役立つ

 この資格は、接客のときに大いに役立っている。
「バッジが支給され、店頭では必ずつけることになっています。接客の時にお客さまが目にとめられて、『あら、フィッティングの資格あるの?』と聞かれることも。そんなときは『社内資格ですが、うちのスタッフでは3人持っていますよ』と答える。すると『それなら安心ね、じゃあ見てもらおうかしら』とおっしゃる方が多いです。信頼感が違いますね」(河村副店長)
やはりフィッティングアドバイザーの資格を取得した佐藤真弓さんは「フィッティングの勉強をしていると、接客に自信がつきます。それに、シューケアの知識がとても役立っています。靴だけではなく、プラスワンとして防水スプレーや消臭スプレーをお勧めしていますが、自然にご説明できるようになりました」とコメントしている。
実は、このアスビーウォーク北浦和店は現状パート社員で運営されている。エリアマネージャーが店長を兼任しているが、いつも店頭に立てるわけではない。しかし、全員モチベーションは高く、接客力もなかなかのものである。それを支えているのは、フィッティングアドバイザーの資格を持つことから生まれる自信である。
 河村副店長の次の目標は、新しく入社してきた若いスタッフたちに資格をとってもらうことだ。自分自身に関しては、フィッティングマスターを目指して勉強したいと考えている。