今月の記事・ピックアップ 2016・2
 HOME > フットウエアプレス >  「メイド・イン・ジャパン」で勝つ コロンブス
 「メイド・イン・ジャパン」で勝つ コロンブス
 コロンブス

100%国産で、徹底的な管理による安定した品質が誇り

 コロンブスの靴クリームは、100%日本製である。材料の一部は輸入しているものの、製造加工から包装まですべて日本国内で行われている。
 何十年も前、コロンブス社内でも海外での製造を検討した時もあったのだが、材料の入手は困難だし、何より品質の維持ができない。日本のレベルにまで上げるのに相当の時間がかかると、見送ったという。だが、このことがかえって「メイド・イン・ジャパン」としてのクオリティを保つこととなった。

研究室が品質チェックと商品開発を担当

 コロンブスは、自社製品の品質が高く、かつ安定性があることに誇りを持っている。その理由は、次の3点にある。まず、20数人の研究員が働く研究室があり、現行の商品のチェックと新製品の開発ができること。次にほとんどの製品を生産している松戸FACTORYの生産ラインが、極めて安定していること。最後が商品ごとの生産ナンバーによっていつ、どこで生産されたのかがはっきりとわかり、トレーサビリティが可能であることだ。仮に不良品が出たとしても、これによって解決できる。
 「日本で靴クリームだけを製造している工場はほんの数社で、海外では化学工場の一部分として生産しているところが大半です。技術力と品質の高さを維持していくことが使命だと思っています。国内生産のメリットは、品質の維持と多品種展開。大手ブランドからも注文が来ますが、自分のブランドに合わせた商品をと、厳しい基準を要請されます。その受注のためにも、いつも最高の品質である必要があるのです」(企画部参与・市川貴男氏)。
 一方でデメリットはやはりコスト。だが、円高になっていても海外での販売にあまり影響は出ないという。同社は50年以上前から積極的に輸出に乗り出し、全商品の10%が海外に出荷されている。台湾、香港、シンガポールなどアジアではナイトリキッドなどが多く、プロも好んで使用する「ブートブラック」は主にヨーロッパに輸出されている。ことに日本企業の進出が進む東南アジアでは、その動きに合わせるように売上高が伸びている。これらの国々では日本製品として日系スーパー、日系百貨店で販売されることが多い。


業界に貢献し表彰を受けた製法も

 同社の誇る製品が、2008年から発売されている「ブートブラック」シリーズ。専門性が高く、プロも納得する質の高さだ。また、皮革の種類(コードバンやエキゾチックレザーなど)に合わせ、専用のクリームを出している。ビンの蓋を閉めるとラベルと蓋のロゴがきちんと正面を向くという細やかな気遣いは、日本人ならではの感覚だ。
 手づくり感のある「ブートブラック」に対して、量産しているのが「ナイトリキッド」。手を汚さずにさっと塗れるところが受け、ロングセラー商品になっている。
 「ところで、このナイトリキッドの製造法には、当社ならではの製法が使われているのをご存知でしょうか。水と油は液体ですと分離しやすいのですが、油の中に水がある状態にしてそれを防ぎます。温度コントロールや、工程によって撹拌の速さを変えるなど難しい面も多いのですが、この方法によって安定した品質が維持できるのです。30年くらい前に技術を確立、製品化しています。これにより1986年には業界に貢献したとして、藍綬褒章をいただいております」(松戸FACTORY生産担当常務取締役・大下正則氏)。また、1992年にはグットデザイン賞の商品デザイン部門賞を受賞している。
 日本は狭いようで南北に長く、四季がある。温度変化にも幅があるため、JIS規格の基準として40℃まで安定した品質であることが求められる。クリーム内の水分は低温になれば凍るので、常温になったときに元の品質に戻るかどうかがカギとなる。コロンブスでは品質試験をして、3回これを繰り返し、変化のなかったものを合格としている。
 「当社では独自の基準として、JIS規格より厳しい-30℃~45℃までの品質試験をしています。リキッドの場合は50℃~60℃の高温設定で3カ月放置するという検査もあります。こういった厳しいテストに裏打ちされた安心・安全がアピールポイントになっています。いつ、いかなる時でも同じ対価の商品が買えることが重要なのです」(木下氏)。
 厳しい日本基準に合格した商品は、外国でもモノをいうというわけだ。
現在、同社では積極的に「メイド・イン・ジャパン」をラベル表記している。これまでブートブラック以外には表示していなかったが、生活雑貨のほとんどが中国などからのインポート商品となってしまっており、日本国内でも「メイド・イン・ジャパン」を求める声が高くなっているからだ。原産国を気にする人も多くなってきて、販売店からも問い合わせがある。日本人が日本製を見直す時代。海外で、国内で、「いつでも安定した品質である」日本の製品は高い評価を受けている。
ただし、その背景には徹底した品質管理とこまやかな目配りが欠かせない。コロンブスの品質に対する厳しい目は、日本のメーカーの良心を代表するものだといえるのではなかろうか。

コロンブス本社
東京都台東区寿4-16-7
TEL:03・3844・7114