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好調企業の秘密





 「ランダ」で小売店を展開するジェイ・ビーが伸びている。今年2月には年商を47億円とし、昨年の38億6700万円から大きく躍進した。それだけではなく、この4~5年ずっと右肩上がりを続けている。順調に店舗数も増やし、日本全国で60店舗、台湾・台北に2店舗、中国・上海に3店舗を展開中だ。
 ジェイ・ビー成長の軌跡を、光岡利久社長に聞いた。


 光岡利久社長は、商社に勤務していた経歴を持つ。1993年に独立、大阪・阿倍野区で、インドネシアや中国から服飾雑貨を仕入れて卸す会社を起業した。カラーや形を少し変えて輸入し日本国内に卸す、貿易商社である。10年後の2003年に、SPA(製造小売業)として「ランダ」ブランドが成立、同社のバックボーンとなる。そのいきさつを、光岡社長はこう語っている。
 「神戸・中央区の三宮で、ランダという靴店をはじめました。全て仕入れでしたが、なかなかよいメーカーとお取り引きできない。1店舗だけでしたし、神戸という土地柄もあったのでしょう。もともと中国にも行っていたものですから、それなら自分たちで企画して製造しようと考えたのです。光が見えた! と思いましたね。あるお取引先に仕入れ先や工場をすべて紹介し、服飾雑貨の卸から一切手を引いてしまいました。友人の同業者に、むちゃしますねえ、といわれたものです」。

中国・上海、東莞地区を生産拠点に

 生産地は中国で、現在は20を越す協力工場を抱えている。SPAをやるからには本格的にやらねばと、06年には上海に子会社も設立した。生産地は上海と広州の東莞(トンガン)がベースで、生産管理は上海で行っている。品質管理のできるスタッフが10年近くも常駐し、中国人のスタッフを教育してきた。
 東莞には09年にサンプル室を置いた。デザイン画を元にして、木型と型紙を起こす。日本人は一人だけで、8人ほどの中国スタッフを抱えている。ここでいったんすべてのサンプルをアップさせることで、テイストがぶれることを防ぐのだ。サンプルをそれぞれの工場に依頼していては、バラバラになってしまうに違いない。何しろ「最初のサンプルの出来映えで、かわいいかどうかが決まってしまう」(光岡社長)というのだから、重要な工程だ。
 また、上海と東莞には検品所も置いて、中国ではやってくれないというヒールの検査も一足ずつ行っている。

ランダは都会型・大人路線に切り替えをはかる

 ランダはエレガンスとトレンドを取り入れたケミカルシューズが中心で、20代後半がターゲット。価格帯も6000円台と買いやすい。コンセプトには「自分のムードやTPOに合わせて自由にスタイルを楽しむことができる女性に向け、常に今を意識した遊び心のあるデザインと、高機能なはき心地でアーバナイズしたシューズを提案」とある。実は、このコンセプトはこの春夏に書き換えられたもので、「幼さを排除して大人めにした」ものだ。 
 「社会人になって2~3年目、社会がわかりかけてきた人たち、元気を持っている人たちにはいてほしい」と、光岡社長はいう。
 ランダのショップは56店舗で、販路はファッションビル、駅ビル、ショッピングモールなど。店舗数ではショッピングモールが圧倒的で、全体の40%を占める。今後はファッションビル、駅ビルへの出店を強化していく。
 「アーバンという言葉を入れたのは、その地域で一番都会的なところに出店したいということです。地方は車社会です。そのモールが地域の一番店なら、そこが都会ということ。そういうモールに出店したいです」。
 この路線変更は早速効果をあげ、ファッションビルや駅ビルの店舗が伸び始めた。
 ブランドも増えている。昨年9月から本格的に「カミーユ ビス ランダ」の展開を始めた。ランダの妹ブランドで、カジュアルモードがベースになっている。ラフォーレ原宿、天王寺ミオ、新宿ルミネエスト、大宮ルミネで展開中で、秋からは北千住と町田のルミネへの出店が決まっている。
 「アドゥ ヴィーヴル」は「生活の中にある芸術」をコンセプトに、14年秋冬シーズンよりスタートした。本格的な皮革のブランドで、ひとひねりしたデザインが楽しい。靴の箱が本のような形をしているのも目を引く。「才能のある人材を見いだした」ことがブランドの設立につながったという。価格帯は1万2000円前後。
 このほか「ルカエリナ」も皮革ブランドで、ランダのショップの中に入っている。価格帯は同じく1万2000円程度。
 これまで、年間10店舗ほど出店してきた。「売上げが伸びているのは、出店のため」と光岡社長はいうが、それだけではない。既存店も昨年対比100%を越える好調ぶりで、ランダが市場に認知されてきたことを意味する。
 さらにEコマースも順調だ。ランダの展開とほぼ同時にEコマースを始めており、現在では売上げ全体の12~13%を占めるまでになっている。検索エンジン上の工夫で、「パンプス」などのキーワードでランダがヒットするようにしたことが奏功した。

企業理念が先で利益はその次に来るもの

 光岡社長が大切にしているものがある。3項目からなる企業理念だ。
1)個人の創造力とチームワークの強みを最大限に発揮する事 
2)感激、感謝、感動を共に創り続ける事 
3)サプライズを起こし続ける事
がそれである。
 「ランダも、カミーユ ビス ランダも、アドゥ ヴィーブルも、ブランドの責任者の才能だけでなく、仕事に対する考え方が会社の理念と一致したために生まれたもの。一致していなければ、ブランドをつくったところで長くは持たない。周囲の人たちへの感謝の気持ちが大切で、『ありがとう』と思えば感謝の気持ちが自然に態度に出てくるものです。社長の前で格好をつけることは誰にでもできる。日ごろの行いが大切なのです」。
 人々に愛されるブランドをつくりたい。それが、結果的には売上げにつながっていく。先に利益を考えると、ブランドはすぐ終わってしまう。思いが先に来ることこそ重要なのだ。このことを、光岡社長はくり返し社員に伝えている。
 光岡社長は、実に自然体である。靴をつくったことも、販売したこともない。だからこそ、その仕事に従事している人たちを心の底からすごいと思える。理念に共感してくれる人たちが、この会社で成長してほしいと思う。「人は生かしてこそ生きる」という考え方で、たとえば接客の得意な人には、マネージャー教育を施すなど、社員それぞれの能力を生かしていく。それでこそ、社員と会社が本当の意味でwin-winの関係になると思うからだ。
 だが、景況のよくない現在にあっては、数字を見て社員にハッパをかける経営者が多いのもまた事実だ。
 「数字は手段でしかありません。私たちのブランドが、今どこにいるのかをはかる道具なのです。数字を見て、数字で終わるのはやる気が出ない。コンセプトが大切で、そうでないと数字がよいときはいいが、悪くなると社員が皆離れてしまう。社員こそがタレントで、社長はディレクターという考え方でいい」。
 理念で、全社員が一つになっている。ジェイ・ビー好調の理由はいろいろ分析できる。ランダの認知度が高まっていること、Eコマースの占める割合が高いこと、中国での生産体制、品質管理がしっかりしていること、店舗数が増えていることなどなど。だが、その大本はこのへんにあるのかもしれない。社員の心が一つになっていれば、どんな危機でも乗り越えられる。

海外店舗は早期黒字化をめざす

 さて、光岡社長の次の一手は何か。
 「台北、上海にある海外店舗を、早期に黒字化したいです。日本国内はコンセプトに合ったところに出店し、海外は出店を強化して黒字化を目指したい。台湾は百貨店を中心に、中国はファッションビルや駅ビルを中心に出店していますが、同じルートでの拡大を考えています。もう一つ、現在は中国が生産の中心になっていますが、第三国にも製造拠点を持ちたいです」
 商社マン出身であるだけに、グローバルビジネスにも気負いがない。ただし、そこにはやはり「会社の意志を世界に広げたい」という考え方が根幹にある。

ジェイ・ビー
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