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地方有力専門店の今

千足屋 (山形市)

創業80周年を迎え、オムニチャネル化と女性パワーの活用に取り組む

山形県内、仙台市、福島市内に通販店舗を含め11店舗のシューズショップを構える、株式会社千足屋。先々代が履物店を今年開業してから今年で80周年の節目を迎える。90年代のスニーカーブームの波にいち早く乗り、さまざまなブランドを仕掛けてきた、三代目社長の吉田裕吉さんに聞いた。

アメリカでの旅でビジネス視野が広がる

「現在の店舗展開は、山形本店、山形北店、米沢徳町店、鶴岡店、酒田店、仙台一番町店、イオン福島店、通販の4店舗の計11店です。最近では、店舗面積が小さく効率の低い店舗は少しずつ削って、経営体質の改善を図っています」。
モールなどへの出店よりも郊外の路面店立地にこだわり、200坪クラスの大型店も積極的に出店。約26年前からGDSやMAGICなど、海外の展示会などにもこまめに足を運び、新しいブランドを探してきた。
親戚がアメリカに住んでいた関係から、学生時代から海外への見聞を広げていた。さらに大学を卒業して就職した大手靴メーカーを辞めた後も、アメリカ横断の旅に出ている。
「靴メーカーに就職してからは、地方のさまざまな靴店を見る機会がありました。その時、『このままでは地方の靴専門店は時代の波に乗れず、厳しい現実になるのでは』という危機感がありました。アメリカ大陸をレンタカーで一人旅をしてみると、自分の視野を広げる色々な発見があり、その時の経験がいまの自分を作っているような気がします」。

スニーカーの並行輸入スタート

90年代の当時、「ナイキ・エアジョーダン5」の空前の大ヒットを迎える。そのときはいち早く、現地のシューズショップでプレミアスニーカーを買い付け、日本の店舗に入れていた。これが、吉田社長がインポートシューズの並行輸入を始めるきっかけとなったという。「ビジネスは人が欲求することを先取りして手掛ける」ということが理念にあるからだ。
20代から30代前半は、海外のショーに通ったという。この時にまだ小さなメーカーだった「チペワ」や「ジョージコックス」「トリッカーズ」「スケッチャーズ」などと直接取引をしている。
「新しいブランドが次々と生まれ、面白い時代でした。ただしその後は、海外買い付けのバイヤーが増えてきて、企業として並行輸入をする時代は終わりだと思いました。以降、国内の既存取引先の強化に務めました」。


“ファーストペンギン”になってほしい

千足屋の店舗では、女性店長が活躍している売場が多い。事務所で吉田社長をサポートする本社スタッフも大半が女性だ。
「女性は理屈ではなく、感性で動く人が多い。頭で色々考えすぎてしまって、意外と行動に移せない男性に対して、先頭で仕切って決断する店長やバイヤー職は、女性の方が合っている気がします」という見方だ。
数値管理や戦略面が弱い人でも、そこは男性がカバーし、上手く調整が取れればと考えている。
スタッフ全員が一丸となる姿を、吉田社長は朝ドラで話題になったキーワード『ファーストペンギン』になぞらえた。「群れのなかで、危険を知りつつ海に飛び込む勇敢な最初のペンギン」のように、色々な困難が予想されても、リスクを取りながらもチャレンジをしてほしいという考えだ。
「“誰でもできる作業”はロボットやAIがやってくれる時代になるでしょう。そのとき“人が行うべき仕事”を見極めて、自分の感性を信じて前向きに仕事をしていってほしいですね」。
今後の展望としては、さらに“オムニチャネル化”を進めることが不可欠として挙げる。このため現在は、スマホサイトの充実、HPのリニューアル、POS活用による商品管理、プライベートブランドの販売など、10年前から構想してきたことを実現化することに取り組んでいる。
「それぞれの取り組み課題を相互に連携させて、効率的にシステム化することが重要な時代です。そして働くメンバーみんなが、幸せになれればさらに嬉しい」と吉田社長は語る。

◆千足屋:山形県山形市本町2−4−15
TEL:023・622・4751