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専門店レポート

ミハマ 元町本店(横浜・中区)

「ハマトラ」の伝統を継承しつつ時代に合った靴を次々と店頭に送る



ミハマは、横浜・元町を発祥の地とする靴専門店である。創業は1923年(大正12年)で、オーダーメイドシューズからスタートした。木型から起こしたていねいな靴づくりには定評がある。
既成靴もやっていこうと現在の場所にショップがオープンしたのは1960年代。ミハマの名前がにわかに脚光を浴びたきっかけは、「カッターシューズ」だった。元町界隈は坂が多く、キャンバスに通う学生たちのために歩きやすい靴を、というのが開発コンセプトだった。
このシューズが、75年ごろになるとトラッドファッションの一角を担うようになる。いわゆる「ハマトラ(横浜トラッド)」ブームが始まったのだ。
「お客さまのニーズがあったのですね。カラーやパーツを交換しながらオリジナル性を楽しむ若い学生さんがたくさんいました。お客さまとの距離が近かったように思います」(ミハマ元町本店・市野昇二店長)。
現在では百貨店を中心に全国15店舗(元町本店を含む)を展開している。
 

ハイブリッドパンプスやウォーキングシューズも開発

「ハマトラ」のブームの後も、ミハマはカッターシューズをつくり続けたが、一方で市場に合った靴も提案してきた。オーダーシューズの伝統を生かし、現在では150の木型があるという。常時動いているのはそのうち40〜50型。昔から企画を自社で、生産を協力工場で行うSPA型のシステムを取っていて、元町本店には常時500点もの靴が並ぶ。
最近のヒットは高付加価値、いわゆるハイブリッドパンプスで、「ソフトフレクション」というライン。低反発と高反発のスポンジを組み合わせたフットベッドを採用、荷重を分散するとともに、足裏のアーチを保って開帳足を予防する。足先部分は起毛素材にして前滑りを防止し、アウトソールは特殊防滑ソールとなっており、屈曲性に富んでいる。この盛りだくさんの機能を、最近多くなってきた細い足用の木型にも搭載して訴求している。ソフトコレクションは昨年スタートしたばかりだが、売れ行きは好調だ。
カッターシューズのラインも、はき口にゴムを入れてストレッチ感を出したものを提案している。初めてはく人には、ソフトタッチで足になじみやすいが、見たところも従来のものと変わらない。また、今年の春からローファータイプのウォーキングシューズも登場している。ソールには軽量のウレタンを使い、軽くて返りもよい。

3代続く顧客たちに支えられて技術を継承

ミハマ元町本店は、横浜・元町商店街のほぼ中央にある。店舗は1997年に改築されたが、1960年代のオープン当初のイメージをそのまま受け継いだ。その風情は今も変わらず、世紀を超えて今日に至っている。
 「元町本店のお客さまは、40〜60代が中心です。お若いときに当社の靴をはいたお母さまが、成人した娘さんを連れて来られることが多いです。ここなら娘に勧められる、と言っていただけるのはうれしいですね。中には2代、3代にわたってカッターシューズのファンという方もいらっしゃいます。50年近くカッターシューズをつくり続け、技術を継承してきた賜物でしょうか」(市野店長)。
近年副都心線が開通したため、埼玉方面から中華街に遊びに来る人たちが増え、このショップにも多く来店するようになったという。
顧客づくりで役立っているのが、オンラインショッピングだ。すでに十数年前から始めているが、ここ数年の伸びは目覚ましく、昨年度の売上げは、前年対比120%という大きな伸びを見せた。修理品の問い合わせが多く、もう一度来店するきっかけとなっている。
かつて「ハマトラ」の火付け役だったミハマ。その伝統を大切にしながら、市場に合った商品を次々と開発し、高級感のある店舗で提供する。ミハマは、今も横浜・元町の看板靴店である。



(株)ミハマ商会/ミハマ 元町本店
横浜市中区元町2−83
TEL 045・641・1221