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(アルプスシューズ社長) |
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「歩いて健康」をコンセプトにお年寄りの原宿・JR巣鴨駅前商店街に店を構えるアルプスシューズが、高齢者にフォーカスした靴の品ぞろえと接客に力を入れるようになったのは約20年前。ちょうど、街に高齢者の来訪が目立って増えてきたころだ。時流の変化を受けて、同店はすかさず足にトラブルを抱える中高年向けにコンフォートシューズを強化し、取引先を拡大してきた。店のコンセプトは「歩いて健康」。今では、自分の足にあった靴で、元気に歩ける生活を送りたい高齢者の助け舟的存在になっている。二代目代表の小林徹司さんの接客は、お客の観察からスタートする。 「お客さまはいまご自分がはいている靴と同じような靴を求める傾向がありますからね。着用されている靴や格好、様子、姿勢などを失礼にならないように観察すると、おおよその好みやサイズ、悩みを把握できるんです」。 タイミングを見て、簡易計測器で足のサイズを測定するそのときに、小林さんは足だけではなく、お客がはいている靴もすかさずチェック。かかと部分が傷んでいないか、足の形が出ていないか、外反母趾の跡はどうか。靴にはお客の歩き方のクセやトラブルが如実に出る。靴と足の両面から客の実態を探り、それを靴の提案に生かしていくのが小林さん流の接客だ。 提案する際には、お客が考えもしなかったブランドの靴を用意することも忘れない。 「店として力を入れているコンフォートシューズのブランドの一つに『フィンコンフォート』がありますが、価格が高いので敬遠されがち。奥の売場にありますしね。でも、はいてみるとその良さを実感していただけることが多いんです。『お買い求めになる必要はないですから、一度はいてみませんか』などと言ってお勧めしています」。 「フィンコンフォート」をはいた客の声は率直だ。「いいね」「足に吸い付くようにフィットする」「すごいね」など、感嘆の声が次々にあがる。必ずしも購買に直結するとは限らないが、体験の機会提供は次につながるステップだ。 「打率3、4割は難しくても、大事なのはとにかく打席に立つこと(笑)。一度、その良さを実感していただければリピーターになってもらえる。気長に地道にファンをつくっていきたいです」。 ファスナー付き革靴もこの店のアイデア各ブランド、各シリーズの靴の特徴や幅などを把握した上で、巧みに雑談を交えながら接客を行う小林さんにはファンが多い。以前勤務していた光が丘の店(東京・練馬区、現在は閉店)の常連顧客は、小林さんが異動した後は、巣鴨の店に足しげく通い続けている。車椅子で来店するファンもいる。わざわざ遠方から足を伸ばすお客も多い。小林さんの接客が、楽しく有益であることの証明だ。 小林さんだけでなく、同店の接客の大きな特徴といえるのが、接客中のお客の言葉に耳を傾け、品ぞろえや次の接客に活用するだけではなく、メーカーへの提言にも役立てていることだ。たとえば、今では当たり前になったファスナー付きの革靴も、同店がルーツだという。 「着脱しやすいファスナー付きの靴は、お客さまに非常に好評です。でも、10年ほど前まではファスナー付きはケミカルの靴にしかありませんでした。もし、この機能が1万円以上の革靴にも採用になれば、お客さまの選択肢が広がります。そこでヨネックスさんにそれを伝えたところ、『パワークッション』シリーズに採用されたんですよ」。 お客の声が小売店を通じてメーカーにフィードバックされ、それが商品となって売場に入り、顧客満足を上げる。理想的なサイクルが実現された好例だ。 「ファスナー付きの靴のほかに、カジュアルなスリッポンにも力を入れています。こちらもうちの店らしい靴のカテゴリー。お客さまに新しい選択肢をどんどん提供していきたいと思いますね」。
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