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靴とバッグのフミヤ(山形・酒田市)

「快遊楽」をモットーに、酒田に根付いて87年の時を刻む


 JR酒田駅前から徒歩で7〜8分。港町酒田の繁華街から、少し離れたところに、「靴とバッグのフミヤ」はある。周囲に商店は少なく公園や住宅が並ぶ静かな一角だが、このショップはそこだけ切り取られたようなにぎわい。来店客は途絶えず、約30坪の店内は和やかな話し声で満ちていた。
靴とバッグのフミヤの創業は1929年。創業者の小久保幸治さんは靴職人で、戦前は軍隊用の靴もつくった。2代目で小売に転換、現在社長である小久保重喜さんは3代目で、3年前に社長となった。

靴にこだわらず雑貨やアパレルも導入

このショップがにぎわうのは、それだけの理由があるからだ。
まず、品ぞろえに特色がある。店頭にあるのは靴を中心に、バッグや財布などの革小物、帽子、ストールなど婦人雑貨全般。さらに、一部衣料品も置かれている。主体はあくまで靴なのだが、トータルコーディネイトできる楽しみがある。靴ではメンズも扱うが、ほぼレディスが中心。価格帯は、靴が9800〜2万円、バッグが7900〜2万円。
全体の6割を超える靴の品ぞろえには、特に気を配っている。「リーカー」(ドイツ)、「フライロンドン」(ポルトガル)、「メレル」(アメリカ)、「H.P.S」(日本)など、コンフォート感、デザイン性双方の高い靴を入れている。細かにインポートシューズをチェック、自店の顧客たちに合うものをていねいにセレクトする。売れ筋は「リーカー」で、入れた商品はほぼすべてヒットしたという。ほかにも、根強いファンのいる「キサ・スポーツ」、デザイン性の高い「シンジ・カトウ」など、「えっ、こんな靴があるのね」と驚かせる靴が並ぶ。
「セレクションには、はき心地、デザイン、個性が大切です。スポーツマインドではきやすいものを探すのが、自分の仕事だと思っています。ひんぱんに東京に出て、新しいブランドを探しています。ショップのテーマは『快遊楽』。快く遊びながら楽しめる、『居心地のいい売場』を目指していきます」(小久保重喜さん)。

接客はポジティブシンキングを大切に

小久保さんは、さまざまな資格を持っている。シューフィッター、公認ウォーキング指導員、足ほぐし整体師など。もともとは、「資格がないと取り扱えない特殊な靴を仕入れるために」取得した資格だが、接客にも役立っている。年配の方や疲れたお客が来店すると、足をマッサージ。「疲れが取れる」と大好評だ。フリーダイヤルもあり、無料送迎もする。周辺地区には一人暮らしの女性高齢者が多く、車の運転ができない。「お店に来たい」というと、一人でも無料送迎する。先代から続くサービスだ。
顧客は酒田地区ばかりでなく、秋田県など県外の遠方から来店する人もいる。年代的には40〜50代が中心となっている。
あるとき、60代くらいの女性が独り言をいいながら靴を見ていた。「私には若いわね、若すぎるわね」としきりに言っている。小久保さんは、とっさに「そんなことはありませんよ」と話しかけた。すると、「私は若い商品がほしいのよ!」と逆に怒られてしまった。
その女性は画家で、ラッセンの海の絵をモチーフにしたリーカーの靴を購入した。小久保さんがていねいに接客した結果、「針に糸を通すような(細かいところに実によく気の付く)お店なのね」と、実にアーティストらしい言葉を残して、機嫌よく帰っていった。
「基本的に、セルフ販売の方はいらっしゃいません。接客は、ポジティブシンキングを大切にしています。どこかいいところを探していく。笑って『楽しかったね』といっていただけるようにようにする。おもてなしのお店で、ここが原点なのです。祖父の代から『人さま助かりわが身助かる』というのを、座右の銘にしています」。
ショップに賑わいをもたらしているもう一つの要素が、イベントだ。山形県では、県立病院、学校、県庁などが福利厚生の一環として、年に数回展示会イベントを行う。集合する業種は衣料品や靴、サプリメントとさまざまで、中心は職員と家族向けの物販になる。ここに同店もブースを出して販売し、先シーズンの商品も並べて注文も受けている。
セールをはじめ、自店のイベントも多く行っている。そのたびに2000通近いDMを出している。現在は10月23日の創業日に向けてのイベントの準備に余念がない。
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靴とバッグのフミヤの賑わいは、多方面からもたらされていることがわかる。靴のみではないマルチな品ぞろえ、靴に見られるこだわりのラインアップ、確かな資格に裏打ちされた接客などなど。だが、必ずしも景況の良くない酒田の街のなかで、繁盛店であることを維持するのは難しい。それこそ、同店が酒田に根付き、顧客とのコミュニケーションを大切にしながらこの地に育ってきた証なのだろう。



靴とバッグのフミヤ
酒田市相生町2−3−13
TEL:0234・23・3311