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  匠の技
  (ミサワ&ワークショップ)
 
三澤則行さんが靴づくりを目指したのは、大学3年のころだった。宮城県に住んでいた三澤さんは週末ごとに上京し、浅草の靴メーカーを回った。
「でも、しばらくすると自分のやりたい方向は少し違うと感じました。もっと工芸品のような靴をつくりたい、靴のかっこよさをとことん追求したいと思ったのです」。
そこで、大学を卒業したのち、靴の学校に入学した。2年間学び、4年間職人として働いた。後にオーストリア・ウィーンに飛び、そこで伝統的な靴工房で修行しつつ、ハプスブルグ家の靴をはじめとする品々を見て、工芸品に対する目を養った。
帰国後独立。だが、修行の日々はまだ続く。革工芸の分野を知ろうと、革工芸の先生について浮き彫りやカービングについてさらに学んだ。

アート作品とオーダー靴をつなげて

現在、三澤さんは36歳。東京・荒川区に「ミサワ&ワークショップ」という工房を構え、オーダー靴とアート作品を制作している。靴職人とアーティストという2つの顔を持っているのだ。
オーダー靴の制作は、話しながらデザイン画を起こすところから始まる。自分で木型を削りだし、革を切り、縫製し、底付けする。縫製部分は同じく靴職人である夫人が手伝うが、ほとんど工房内で仕上げられる。生産は1ヵ月に2〜3足で、メンズが30万円、レディスが25万円。人気のあまり、現在は1年半待ちの状態となっている。
アート作品のほうは日本革工芸展で文部科学大臣賞に輝くなど順調で、「壁に絵として靴があったら面白い」という考えから、捨てられる「ニベ革」を使って、靴が立体的に浮き上がっているオブジェを制作した。すでに銀座の画廊で個展を開いている。
「オーダー靴とアート作品の制作は、やはりつながっていると思います。ひらめきやアイデア、センスがオーダー靴にも生きるし、アートも技術に裏付けられたもの。普段の技術力が生きるわけです」。

3年前から、靴の教室も始めた。型紙のつくり方を教え、木型も自分で削ってもらう。イチから靴をつくれるようにするためだ。「教えることもとても好き。習いたい人もたくさんいるので、こちらもおろそかにできない」と力を入れている。
アートとオーダー靴と教室と、この3つが三澤さんを支えている。