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地方で光る靴専門店

鎌倉靴 KOMAYA(神奈川県鎌倉市)


オリジナルブランドとオーダーシューズで差別化をめざす

鎌倉は古く美しい街で、昔からの高級住宅地もある。この街にはまだ大規模店舗の規制があるため、小売店が元気だ。「鎌倉靴 KOMAYA(コマヤ)」は、鎌倉駅西口から御成通りを5分ほど歩いたところにある。戦前に靴の小売業をスタートし、戦後、現在の場所に移転、来年で創業70周年を迎える。現在の神座健次代表は、3代目にあたる。店舗はここ御成通りの本店と、鎌倉駅西口店の2店舗。
 本店の顧客は、地元の人たちがほとんど。メンズ、レディスで間口が分かれていて、奥でつながっているが、まるで2軒のショップのようだ。どちらもウッド調を基調にした上品な店頭で、合わせて40坪ほどの広さを持つ。売上げは圧倒的にレディスが多く、全体の87%を占めている。

早期にオリジナルブランド「鎌倉靴」を開発

顧客の多くが、地元に住む50~60代の女性たち。中には「学生時代から来ている」という人や、70代と40代の親子連れなどの姿も見かける。ほかではあまりないヨーロッパの靴を直輸入しているのが特色で、ブルナーテ(イタリア)、ヒスパニータス(スペイン)、ピコリノス(スペイン)、ワルドローファー(ドイツ)などが主要ブランド。
一方で自社ブランド「鎌倉靴」を1980年代から立ち上げている。鎌倉在住で顧客でもあった漫画家の横山隆一氏の筆跡をロゴとし、鎌倉は歩く街であることから「歩いても疲れない靴」をコンセプトにしている。「鎌倉靴 ベイシック」は、ひも靴やローファーを主軸にした定番ライン。木型もデザインもほとんど変わらないが、安心感があり、多くの固定客がついている。「鎌倉靴」はほどよくトレンドを取り入れたラインで、はき口にゴムを入れてフィット感を増したり、アッパーを2重にして上層をカッティングし、中のエナメルをのぞかせるなど遊び心も楽しい。全体の45%を自社ブランドが占めている。
もう一つの売りが「菊地の靴」とのコラボレートラインだ。菊地武男氏のデザインによるもので、同店限定のカラーとしている。アッパーにスワロフスキーを散りばめたものなど、ゴージャス感もある。
また、売場を見て気づくのは適宜にバッグがコーディネイトされていることだ。こちらもイタリアからのインポートものが中心で、エレガンスな「ランチェッティ」、カジュアル感のある「デルコンテ」など靴のイメージに合うもので、なるべく他店にはないブランドをチョイスしている。
 「靴はGDS、バッグは日本で開かれるモーダ・イタリアで仕入れることが多いです。店づくりでは、商品を詰めすぎないように気を使いながらディスプレイしています。ディスプレイはひんぱんに変えて、店内に動きを出していくようにしています」(神座健次社長)


パターンオーダーに加え、メンズもフルオーダーを開始

鎌倉靴 KOMAYAでは、以前からオーダー靴を扱っている。メンズではパターンオーダーに以前から取り組み、レディスではフィッティングオーダーを受け付けている。レディスの場合はメンズと少し異なり、1木型8ウイズをそろえ、その中から自分の足に最も近いものを選び、肉付けしていく形でそれぞれの木型をつくっていく。靴のデザインはひも靴、ベルトつきなど12パターンほどが用意されている。
 神座社長は、さらに11月からメンズのフルオーダー靴の受注を始めている。ショップの2階スペースを工房にして、本格的に製作する予定だ。実は、神座社長は靴職人なのだ。
 「靴のデザイン会社で修業し、その後イタリアの工房に入って5年間靴づくりを学びました。親方がいい方で、労働ビザも取ってくれたのです。靴づくりは好きですね。充実した5年間でした。フルオーダーを手掛けようと思ったのも、靴をつくりたいという気持ちがまだ強いからだと思います」。
 木型、デザインから起こし、革も自社で用意するという文字通りのフルオーダー。ブランド名も「イル・プレドロ(イタリア語で仔馬の意味)」と決まっている。神座社長は、現在フィッティングオーダーの靴を手掛けているが、「つくり出すと夢中になってしまう」くらい靴が好きだ。店頭の業務もあるため、多忙になった場合は仲間と分業することも考えている。
 鎌倉靴 KOMAYAは、他店にはないブランドの導入とオリジナルブランドの開発、さらにオーダーシューズとマルチな展開を見せている。鎌倉の街を彩る上品な靴専門店の背後に、大きなパワーと工夫が見られる。

コマヤシュー
神奈川県鎌倉市御成町5-39
TEL:0467・22・4300