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サワムラヤ靴店(茨城・牛久市)

二極化するウォーキング需要をともに取り込み、ウォーキング系スニーカーで伸ばす専門店

 茨城・牛久市は、19年ぶりの日本人横綱の誕生にわいていた。ここは、新横綱稀勢の里出身地なのだ。サワムラヤ靴店の店頭にも「稀勢の里優勝セール」の大きなポスターが貼られ、ひっきりなしにお客が入店している。同店は2015年秋に改装し、それ以後ほぼ順調に売上げを伸ばしているが、「稀勢の里ブーム」によって1月の売上げは昨年対比130%にもなったという。


五本指の靴下など雑貨も売上げのびる

 サワムラヤ靴店の歴史は古く、100年以上もさかのぼることができる。牛久宿の下駄屋から身を起こし、現在の入江秀夫社長の父親の代のときに現在の牛久駅前の地に移転した。入江社長は、5代目にあたる。
 この店舗の特色は、ウォーキングシューズ系に強いことにある。アキレス、ミズノ、ヨネックスなどのウォーキングシューズを入れていて、足の計測とていねいな接客で販売する。しかし、近年はその売れ筋に大きな変化が見られるようになった。
 「1万円から2万円台の高額なウォーキングシューズの動きが鈍くなりました。ことにメンズではその傾向が著しいですね。価格がやや落ちるムーンスターのサプリスト、アキレスのスポルティング、広島化成のダンロップなど、いずれも4000~5000円台のものがよく売れています。女性では、ムーンスターイヴが好調です。一方で2万円台のアサヒメディカルウォークが、メディアへ露出の効果が出始めたためか、よく売れるようになってきました。市場の2極化がさらに進んだのかもしれません」(入江秀夫社長)。
 商品はメンズ45%、レディス50%、子供靴5%。商品全体の8割がウォーキング系を含めたスニーカータイプだ。すでにレディスのパンプスやメンズのドレスシューズについては扱いを縮小するか、価格の安いものに切り替えている。
 顧客の多くは60代を超えるシニア層の女性で、足のお悩みを聞きながら足を計測、じっくりと販売していく。「話しながら、納得のいく買い物をしたい。こちらの話をしっかり聞いてから提案してくれるので、失敗がない」と、「じっくり型接客」の評価は高い。
 最近の売れ筋には、雑貨が加わっている。ノルディックウォーキングのポール、インソール、とくに5本指の靴下がよく売れている。この靴下は「足指をしっかりのばすことができて外反母趾が楽になる」というもので、価格も2400円と安くはないが、毎月100足から150足は売れている。足数が伸びるのはまとめ買いがあるからで、その分お勧めし、サンプルをはいていただくなど、きちんとした接客が必要になる。安価な商品が好調である一方で、売上げを支えているのは雑貨の存在であるのに違いない。



宅配サービスなど新ビジネスのアイデアも次々と

 入江社長は、茨城県にノルディックウォークを広めた人物でもある。早い時期からマイスターの資格を持ち、現在では「茨城県ノルディックウォーク連盟」の事務局長をつとめ、サワムラヤ靴店がその本部となっている。ノルディックウォークには、ポールを持って歩くために足腰の負担が軽く、姿勢が良くなる、上半身の運動量が大きくなりカロリーの消費量も増え、安全に全身運動ができるという特色がある。
 「5年ほど前から体験会を開いてきましたが、体験会の仲間が集まり別のサークルもでき、自分たちで運営して活発に活動しています。これは、とてもうれしいこと。ねばり強く体験会を行ってきたことが、実を結んだといえます。靴やポールをトータルで販売しているところは少ないので、こちらの売上げにも期待しています」。
 2年前の改装も、ノルディックウォークも含めたウォーキング指導を充実させることにあった。約60坪ある店内に広い通路を取り、正面に全身が映る鏡が置かれている。入江社長やスタッフと並んでウォーキングすることで、姿勢が正され、要領をつかむことができる。
 入江社長は、新しいビジネスも考えている。「配達」ビジネスだ。牛久市でも高齢化が進み買い物難民が増えている。なかなか外に出られない高齢者のために、自宅まで靴を届けるサービスを考えた。「黒くて軽い靴がほしい」とオーダーすれば、自店にある1000足の商品の中から数足を持参する。また、来店のニーズがあれば送迎サービスも行う。
 個人向けサービスの前に、介護施設やグループホームでのサービスを始めている。施設の職員は家族の許可を得たうえで「リハビリ用の靴がほしい」「靴が合っていないようだ」という連絡が入ると持参し、フィッティングする。こちらのニーズはかなり高いようだ。
 入江社長の夢は、さらに膨らむ。自店のルーツである「下駄」を復活させようというのだ。
 「茨城の木と鼻緒をつけた下駄をつくりたい。オリンピックに向けて外国人観光客が増えてくるでしょうから、その人たち向けに販売する。牛久には牛久大仏やあみプレミアム・アウトレットもあって、外国人観光客も多いのです。オリンピックをチャンスに変えたい」。
 牛久商工会青年部の副部長をつとめ、4月からは部長職に就く。商工会のパワーも借りて、自店と牛久全体をパワフルに導こうとしている。

サワムラヤ
茨城県牛久市中央3-27-4
TEL:029・873・2725