今月の記事・ピックアップ 2017・5
 HOME > フットウエアプレス > 特集 モチベーションが上がる! 売場の「チーム力」 
 
・ここでは、売場の活性化に繋がるような、活躍するチーム力を取り上げる。
・売場演出や販促アイデアなどチームで決め、分担しながら実施し、効果を上げているものも取り上げる。
・接客のスキルアップのため、チーム内での情報交換のなど、ルーチンの決め事なども紹介する。
 マーレマーレデイリーマーケット ルミネ立川店

ノートと接客カルテをモチベーションアップにつなげる

コミュニケーションを図るための3冊のノート

東京、JR立川駅のルミネ立川に出店する同店は、マーレマーレ・ジャパンの直営店で、婦人靴を展開している。顧客層は駅ビルという場所柄、働く女性層が中心だ。
 同店のチーム力アップに役立っているのが、3冊のノートである。1冊目がお客のレスポンスや事務的な情報など連絡事項を記述するノート、2冊目が遅番のスタッフが記述するノートで、その日の売上げベスト3やピークタイム、次の日の早番のスタッフのために「がんばって!」といったメッセージなどさまざまな情報を書き込むノート、3冊目が店長不在時の情報を、店長に伝えるために記述するノートだ。
 スタッフは、出勤後、1冊目と2冊目のノートに必ず目を通す。2冊目の「朝NOTE」はスタッフ全員のコミュニケーションツールとなっている。
「あるとき、毎日の朝礼によって売上げの数字に結びついた店舗があるのを知りました。でも当店は勤務が3交代制で、朝礼をするのが難しい状況です。そこで朝礼の代わりになるものがないかと考えたのが朝NOTEなのです」(當麻香織店長)。
 日報で売上げの波形が出ているので、スタッフにも売上げの変動は認識できるが、朝NOTEに、當麻店長がプラスいくら、マイナスいくらと数字で書くことがある。それによって、全員が売上げ金額を意識するようになり、モチベーションも上がる。
 これらのノートを確認することによって、情報の共有がスムーズになり、今月のイベントにみんなの気持ちが向かう。ほかにも、重点商品を意識したり、お互いの思いを共有したりしと、「やる気」へとつながっていく。

接客カルテで接客力をアップとモチベーションのアップに

同店で力を入れているのが接客だ。
「接客は形がないので、どれが正解かわからないところがあります。極端なことを言えば何も考えなくても日々過ごすこともできます。でも、それではわざわざ足を運んでいただいたお客さまに対して申し訳ないし、自分の成長を感じられないのもプラスにはなりません」(當麻店長)。
 工夫したのが接客カルテ。これには6項目程度の接客に関する質問項目があり、答えを記入するようになっている。たとえば「商品やブランドに独自の価値が言えたか」「ファーストアプローチでお客さまの表情や動きを読み取り、お声掛けができたか」など。質問に答えて店長に提出すると、店長が添削をする。たとえば「こういうお声掛けはいいアイデアですね」とか「この場合はソールの素材のことを言うとよかったですね」といった褒め言葉や具体的なアドバイスなどが返ってくる。店長がコメントを書き込むと、ファイルに入れて、スタッフで共有できるように棚に置いておく。
 店長がコメントを書き込むことによって、「自分を見ていてくれる」といった安心感につながる。また、接客の情報を共有することによって、それぞれのよい点を手本にしたり、工夫したりして、全員の接客力のアップにつながっている。
 ルミネでは店舗の覆面診断を実施しているが、この接客カルテの導入によって評価がぐんとアップした。また、「接客していただいたスタッフはもちろん、接客以外の人も感じよくて、とても気持ちよく買い物が楽しめました」というお褒めの言葉もあった。

担当する仕事を持つことで責任感が生まれる

同店では、黒板POPが商品アピールにつながっている。これを担当するのがデザインやイラストを得意とする五十畑彩巴さん。担当を決めたのは、文字やイラストのテイストを統一するため。「目立たせたい文字は大きく、遠くから見ても見やすいようにしています。これを見て、ほっとしていただければうれしいです」(五十畑さん)
 また、同店のツイッターを担当しているのが、若手の大塚公美子さんだ。「新作が入ってきたときにアップします。靴だけではなく、トータルコーディネイトがわかるようにスタッフにはいてもらって、その写真を掲載します」(大塚さん)。
 そして店舗のディスプレイを担当するのは當麻店長。メインのディスプレイテーブルには、ちょっと先取りした商品やおすすめの商品を紹介する。お客の評判などみんなの情報も集めながら、ディスプレイに反映させている。
 それぞれが担当の仕事を持つことによって責任感が生まれる。それぞれの責任を果たすからこそ、みんなが協力し、より大きな力を生み出すことができる。


 シューマート 長野稲里店

接客販売3割の大型売場でも、ホスピタリティできる人材育成

長野、群馬、新潟、山梨、栃木、茨城に現在37店舗を構えるシューマート。各店300坪前後の広い売場面積と、三世代を網羅するフルラインで、地域での圧倒的なシェアを誇る。

スタッフ全員が足の計測スキルを備える

長野本社からほど近い「シューマート長野稲里店」は、店舗面積が500坪と他と比べても圧倒的な広さを誇る旗艦店。レディス、メンズ、スニーカー、キッズなどそれぞれのコーナーでは、売場担当スタッフがお客の足長と足囲を図る計測器を常にスタンバイさせている。
「シューマートのスタッフは、全員がお客さまの足を計測するスキルを備えています。もちろんパート、アルバイトも同様。社内には64人のシューフィッター資格を持った人材がおりますが、彼らが講師役になって、スタッフに足の計測を教えています。そうすることでスタッフ自身が接客のきっかけをつかむことができ、講師役の人も再度教えることで、改めて学びを深めることにもつながります」(販売促進部・金井衛部長)。
「シューフィッター養成」の動きは、15年ほど前にスタートした。最初の4人から、今では64人に拡大。1店舗のみのチームワークにとどまらず、社内全体のモチベーションアップや、接客やコミュニケーションづくり、リピーターの獲得などにも生かされている。
初級コースの資格取得には50人分の足型測定が必要なため、スタッフから顧客までさまざまな足型を診る経験をする。

理学療法士との協業で「足のお悩み相談会」

「現在の売場全体では“セルフ販売7:接客販売3”くらいの割合です。大型店なのでセルフの割合も少なくないですが、接客の3割できちんとした専門技術や知識をお伝えすることが重要になっています。今では、シューフィッターご指名で来店される方もいらっしゃいますね」(金井部長)。
また店の奥には、足に関するトラブルを抱えた方へのケアを行うコーナーも設けられている。足圧自動計測器やインソール、機能性ソックス、ノルディックウォーク用のポールまでがそろう。ここでは他店に先行し、理学療法士の方との協業した「足のお悩み相談会」イベントも実施。簡易ベッドを持ち込み、トータルで身体の不調を見てもらうことができる。
「足と靴に関しては分かっても、身体全体のトラブルは私たちでは診ることができません。医療の専門家とコラボレートすることで、今後の多様化するニーズやお悩みにも応えられるようにしていきたいと考えています。広い意味の“チーム”を組むことで、店舗全体の信頼感も高まっているのではないでしょうか」(土屋啓介副店長)。

売場でのチーム力を高める「販売カレンダー」

シューマートでは毎月、販売促進部と商品部が共同で「販売カレンダー」を作成し、バックヤードに貼りだしている。B1サイズ(73cm×103cm)の大きなカレンダーには、毎月の平均気温、イベント、店内装飾テーマ、チラシ、売場チェックリスト、商品の動き、新商品入荷状況など、この月に押さえておくべき情報が詰まっている。
売場でのチームワーク不全の一つとして、ベテラン店長の頭に入っている情報が、スタッフと共有できていないことによる“ミス・コミュニケーション”が挙げられる。新人メンバーは指示されるだけで、売場全体のイメージがつかめず不安なまま働く。
このカレンダーは、社員のみならずパート・アルバイトまで、全員が理解できるようにわかりやすさを重視。これを見ればメンバー全員で「今月の動き」が共有でき、自分たちから率先して動くことができる。店長がいつも出していた指示も「このことだったのか」と理解し、行動に落とし込むことができる。売場のチーム力をアップさせるためにも、この大サイズのカレンダーが羅針盤≠ニして役立っている。
 また、社内のエリアマネージャーを中心に「アソシエイト ホスピタリティ コーディネーター」という認定資格の取得を進めている。「ホスピタリティ=おもてなし」の気持ちを理解し、他者に対して気遣いが出来る人材の育成を図ろうとする狙いがある。「今はきちんと『聞ける人』や『コーチ的な存在』が不可欠です。エリアマネージャーにはおもてなしの心を持ちつつ、部下の強みを引き出す人になってほしいと願っています」と金井部長は話す。