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特集 研修・資格でスキルアップ
・靴・バッグ業界の企業、団体の人材育成の現場をレポートした。
・入社時の新人教育から昇進するに従って行われている研修では、接客やマナーのほか、商品管理、数値管理などが習得項目となる。さらに最近は、後輩社員やパートとコミュニケーションを取るためのコーチングも大切な実習項目となっている。
・モチベーションを高めるために、社内外の資格取得も奨励し、スキル向上をバックアップしている。
・ロールプレーイング大会やディスプレイ・コンテストなど社内コンペもスキル向上に結びついている。
・こうしたイベントの優秀事例は、タブレットを使って各店に動画配信するほか、売場の接客や販促の成功事例も配信している。これも、人材育成手段となっている。


ジーフット

現場に根差したきめ細やかな研修システム

 ジーフット(東京・中央区)は、正社員とフレックス(パート)社員を含めて5337人もの従業員を抱え、日本全国に800以上の店舗を展開する大企業だ。これだけの規模ともなれば、研修も容易ではないと思われるが、実際は実にきめ細やかで実践的な数多くの研修を実施している。

昇進は試験合格が必須の実力主義

 社員になると2年めまでフォローアップ研修が年4回行われる。高卒と大卒ではやや異なるが、「店長になるまでの2年間」という位置づけで、フレックスへの対応やコーチングなどのコミュニケーション、数値の見方や読みとり方などを教える。
 この後は、毎年の登用試験に備えることになる。社員のランクはG1〜G4(G3、G4が店長クラス)、M1〜M2(管理者クラス)に分けられており、試験に合格しないとレベルアップできない。ランクごとの研修会が設けられ、勉強した上で試験を受ける。課題図書もあり、ここから出題されるため読み込んでおかなくてはならない。G3からは筆記のほかに面接試験も加わる。意欲さえあれば誰でも昇進できるという、完全な実力主義だ。社員は全員試験を受けることが義務づけられているため、必然的に勉強に勤しむこととなる。
 フレックス社員にもランクがある。2カ月の試用期間(トレイニー)を経て正式採用となると「ジュニア」となり、その後半年に1度の評価面談を経てミドルからシニアへと進む。シニアになると、副店長や店長になることができる。
 「フレックスの店長さんは、地域をよく把握しています。主婦の方も多く、地域や学校の行事にも詳しい。フレックス社員のなかには、長く勤めている方もいます。社としてもぜひ定着してほしいと思っており、その視点からトレーニングしています。フレックス社員から正社員になることもできます」(人材開発部・冨田芽衣部長)
昨年4月から人事部の体制が変わり、これまでの本部対応から関西・中部・関東東北の各地区別対応となり、より現場に根差した人材育成を目指している。

社内資格FADを熱心に推進

 ジーフットが社内資格「フィッティングアドバイザー(FAD)」の推進に熱心なことは、よく知られている。足の構造、靴の製法、シューケア、フィッティングなどの知識を身につけ、加えて接客力も上げていこうという目的がある。試験は筆記とロールプレイングで、正社員、フレックス社員関係なく受験でき、正社員は取得が義務づけられている。「今回はこの人が受験する」となれば、店舗全体でバックアップし、閉店後にロールプレイングの練習につきあったり、店長があれこれアドバイスを与えたりすることも珍しくない。全従業員の34%が、この資格を取得している。
 「昨年は、各地で年間120回の試験を行いました。主要都市だけでなく、要望があれば地方都市でも行っています。九州ですと従来は博多など大都市だけだったのですが、佐賀、長崎などでも実施しました。イオンさんの部屋をお借りしたこともあります。FADをより身近に感じ、たくさんのスタッフに受験してほしいです」(人材開発部・山城恵さん)
 FADの上級資格が「フィッティングマスター(FM)」で、シューフィッター的な要素が強くなる。コンサルティング接客を目指すもので、こちらは50人が取得している。
 この延長上に、毎年行われる「ロールプレイングコンテスト」がある。地区大会を経て22人が東京で行われる全国大会で接客技術を競う。全社あげての大イベントで、地域色ゆたかな応援合戦も盛んだ。面白いことにこちらも採点の対象になっている。審査員には一般社員や内定者も加わり「お客さまの目線」から採点する。
 ジーフットはこのように、イベントで楽しく盛り上げながら社員たちのモチベーションを上げていくのがうまい。社員たちからは、「エリアでも練習を助けてもらい、他店のスタッフとつながりができた」「全国大会に出場できてうれしい、もっと後輩を指導していきたい」などの声が上がっている。

すべては販売の現場のためにある

 ジーフットが新たにスタートさせたのが、FADプラスという研修である。FADを取得した人たちへのフォローアップ研修で、「FADの資格取得の際に学んだことをもっと実際の売場で役立ててほしい」という目的がある。新潟医療福祉大学の阿部薫教授を招き、内容を精査してスタート。各店に設置されている足型計測器「フットナビ」の活用法や、アプリ「ぴたトリ」(バーコードを読んで、店舗にない商品を取り寄せられるもの)の使い方や効果についても講義する。販売スタッフには「お客さまにたずねられて、ありませんとお答えすることが最大のストレス」ということで、「ぴたトリ」は、CS(顧客満足)とES(従業員満足)の双方に役立つというわけだ。
 このようにジーフットの研修システムは充実しており、ご紹介できなかったものもまだたくさんある。だが、そこには一本のバックボーンが通っており、それこそが松井会長のいう「足元経営」である。いわば「現場第一主義」であり、今同社が熱心に取り組んでいる物流改革も研修も、本部スタッフのありかたも、すべては販売の現場のためなのである。




リーガルコーポレーション

お客さまと共に「歓び」と「楽しさ」を創るリーガルカレッジ

リーガルカレッジは教育部門の要

 リーガルコーポレーション(千葉・浦安市)の人材教育の要となるのがリーガルカレッジで、小売部門の教育課程として2009年4月1日に開校した。基本理念は、「お客さまと共に『歓び』と『楽しさ』を創ります」であり、顧客満足と同時に従業員満足も大切であるという思いが「共に」に込められている。具体的にはサービスルール7ヵ条、楽しく仕事ができる環境づくりの8ヵ条で表現されており、この15ヵ条が研修の基礎となっている。
「教育課程には豊かな心(おもてなしの心)の育成、靴販売における知識の育成、技術の育成の3要素があります。このうち、最も難易度が高く、時間が必要な要素が豊かな心の育成だと考えています」(小売統括部教育課・小澤宏彰課長)。
 カリキュラムはレベルT「ベーシックコース」、レベルU「スキルアップコース」、レベルV「マネージャーコース」の3段階。
レベルT「ベーシックコース」の目的は、「お客さまをお迎えするために最低限必要な接客スキルの習得」で、3日間の基礎講習となる。基本理念、勤務姿勢、接客の心構えと準備、足と靴の基礎知識、基礎フィッティング技術、基礎接客知識などを座学とロールプレイング演習で学ぶ。よくある質問や笑顔のトレーニング、お辞儀のポイントなどが含まれる。研修の最後には筆記試験が行われ、合格するとリーガルフィロソフィーのカードに終了印が押される。


VP、接客から法律知識まで学ぶ

レベルU「スキルアップコース」の対象者は、基礎研修終了資格修得後3ヵ月経過者。「接客研修」「知識・技術研修」「ビジュアル・プレゼンテーション研修」「フィッティング・モデレーター研修」といった専門的な内容が用意されている。
「接客研修」の目的は、「楽しさ」を創るサービスの実践、個性が生かされる接客技術の習得だ。アプローチ知識と技術、ニーズの聞き出し、商品説明・提案、クロージング、クレームの知識と初期対応、応用ロールプレイング演習など。「知識・技術研修」の目的は中級知識の理解と役立つアドバイスの体現で、中級知識(足・靴・素材・製法など)、お手入れの中級技術と実技、修理の知識と受渡し実技を学ぶ。
「ビジュアル・プレゼンテーション研修」の目的は、魅力ある売場づくりとコーディネイト知識の習得で、売場づくり、ウインドーディスプレイ、ファッション知識とコーディネイト、カラー(色彩)の知識、照明の知識などの内容だ。「フィッティング・モデレーター研修」の目的は、プロとしてのシューフィッティング技術の習得で、対象者はレベルU知識技術研修終了者。足の構造(解剖学)、フィッティング理論と技術、パッキング技術、型伸ばし技術、足計測(ペドカルテ作成)などの研修内容。この終了資格が得られると、社内資格であるフィッティング・モデレーター資格取得者としてバッジが授与される。
レベルV「マネージャーコース」の対象はレベルU全ての研修終了資格者で、店長やマネージャーである。「リーダーシップ研修」「計数管理研修」「コンプライアンス研修」などからなる。
「リーダーシップ研修」の目的はリーダーに必要な行動と姿勢・表現力の習得だ。リーダーとは、影響力と好感度、部下との接し方、指導力、チームをまとめるなどの研修内容である。「計数管理研修」は、商いについて学び、店舗の状態を数字で把握する、損益計算、データの分析、販売促進、商品計画、人員計画、売上計画の研修内容だ。「コンプライアンス研修」は、店舗に関わる法律知識(労働基準法、景品表示法、個人情報保護法など)、具体的な事例と問題など。

課題研修にも力を入れる

 これらレベルT、U、Vに加え、「プロダクト研修(モノづくり研修)」「シューケアアドバイザー研修」など課題研修にも力を入れている。
「プロダクト研修(モノづくり研修)」は、自社製造工場を訪れ、工場見学とともに作業体験。「シューケアアドバイザー研修」は、靴のお手入れなどの内容で、お手入れサービス専門コーナーであるリーガルシューケアステーションなどで活かされている。
 リーガルカレッジの成果は日経リサーチアワード「ニッポンの店大賞2014」で「来店者評価躍進賞」を受賞したことでも成果が見られる。これは全国約26万人のモニターに対するアンケート調査に基づいたもので、「接客対応がよかった」というポイントが特に高かった。