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地方専門店紹介 大上(おおうえ)鞄店 

店内奥では、創業当時のお宝級¥、品を展示

大上(おおうえ)鞄店・本店のファサードを飾る大きなショーウインドーは、いまではあまり見られなくなった大理石の棚石に、一枚ガラスで構成された重厚な雰囲気だ。先代が戦後間もないころに創業した老舗である。80坪を超える広い売場には、メンズ、レディス、革小物、スーツケースとフルライン構成である。
会社は、船積み用トランクケースの製造を営んでいた大岩鞄店・大岩商会を引き継ぐ形で、大上商店としてスタートした。その後、大上鞄店へと組織変更し、革かばんやアルミ、ファブリック系のかばんを製造・販売してきた。
社長の大上好子さんに、売場の奥に並んでいる、博物館に並んでいてもおかしくないようなお宝級≠フかばんを解説してもらった。
「 “大岩鞄店”の時代につくっていたトランクです。恐らく大正時代のころのモノだと思います。昔は“柳行李”からかばんを仕立てていたので、その過渡期の時代につくられたものも残っています」。
よく見るとトランクにはオリジナルプレートが付いている。金具も革ハンドルも丈夫につくられており、いまでも自在に開けることができる。神戸は震災を経験しているが、その渦中でも、これらのトランクは守られてきたのである。


また、店奥のショーケースの中には、背ワニ状態で鞣された大きなクロコのトランクやハンドバッグ、時代モノのランドセル、先代が使っていたというファブリックのトランクなど珍しい商品も並んでいる。見ているだけでかばんの歴史に触れられるような貴重なコーナーだ。
「『これを譲ってほしい』というお客さまもいますが、販売はしていません。メンテナンスが十分できていないこともありますが、創業当時の証として残して置きたいと思っています」。

メイド・イン・ジャパンの高品質な商品が顧客から支持される

売場の取り扱いメーカーは、メンズではイケテイ、エース、林五、ノーベル、吉田(革バッグのみ)、松本、アートフィアーなど。レディスではナチュラルバッグ、高屋、ナニワヤなど。
 イケテイの「シルバーレイククラブ」は、店頭のショーウインドーを飾るメインブランド。「メイド・イン・ジャパン」のPOPと共に、ほぼフルラインアップがそろっている。高品質なものを探している男性に人気が高く、リピート購入で何個もコレクションしているファンもいるという。また、「カステルバジャック」もコーナー展開している。
キャスターつきバッグの「スワニー」は、西日本最大級の品ぞろえを誇り、定期的にメンテナンス会を開催している。店頭の目立つ場所に並べ、実際に手に取って持つことができる。最近はスワニー社で製造された車椅子≠燻タ験的に置いている。
また大上鞄店では、オリジナルバッグも製造している。最近では革ボストンと馬革のトートを制作している。ボストンには先代のころから使われていた、レトロなプレートをあしらっている。地元の顧客にとって、震災も乗り越えた老舗の存在は、安心感を与えてくれる大きな存在として受け止められ、信頼されているようだ。
「この商店街も大手全国チェーンが増えてきましたが、地元店としてお客さまに支えられながら頑張っています。日本製を主力に、より良いかばんを提案し続けるためにも、ものづくりの方々とコミュニケーションを取りながら、私たちも進化し続けていきたい」と大上社長は語る。

*株式会社 大上鞄店
 神戸市中央区元町通1-4-11
 078-331-3962