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女子力が動かす 三陽山長 佐藤 絵里子 銀座ベルビア館店長

女性目線の生きる楽しく柔らかな接客

ブランドの中で最も若い女性店長に就任

靴が好きだった佐藤絵里子さんは、いろいろな靴店を回ったが、三陽山長銀座ベルビア館の接客がことに印象に残り、このショップに就職することに決めた。三陽山長は三陽商会が展開する高級ドレスシューズブランドで、職人によるこだわりの靴づくりで知られている。
「シューケア用品を買ったのです。普通のお店だと口頭で説明するだけですが、実際にクリームを持ってきて実演してくれました。ここは違うな、という印象でした」
2010年に銀座ベルビア館のスタッフとして三陽商会に入社、16年7月に店長となった。スタッフは店長を含めて4人(男性2人、女性2人)。佐藤一信さんは、40代後半のベテラン。接客ではテンポよく会話し、その会話を楽しみに来店するお客さまも多い。自分のブランドを持つ靴職人でもある可知一伸さんは、靴に関しての深い知識を持つ。甲木(かつき)江里子さんも、40代のベテランスタッフ。アパレルショップに長く勤め、今年3月三陽山長に異動してきた。実は佐藤店長は30歳で、4人のスタッフの中で一番若い。

女性であり、最も若いスタッフが店長を勤めることに、ほかのスタッフは抵抗感がなかったのだろうか。だが、店長に選ばれたのには、それだけの理由があるようだ。
「仕事に対して意欲的ですし、真面目です。お客さまとの接し方をみても、笑顔で雑談もはずみ、顧客もついています。銀座ベルビア館は、三陽山長の旗艦店。その店長を任せるというのは、本部の期待のあらわれです」(事業本部コーポレートビジネス部 販売グループ 高橋良樹さん)。
「靴のことはもちろん、パソコンやレジのことなど、何をきいても答えが返ってきます。記憶力がよく、お客さまのお名前とお顔が頭にはいっていますし、とても信頼できます。大切なのは、いつでも一定の同じ気分でいること。とても働きやすい環境です」(甲木さん)

一人ひとりのお客さまに合わせたテンポで

佐藤さん自身は、男性の靴を販売することに対しての困難はなかったのだろうか。三陽山長はレディスサイズも展開していて、玉川島屋SCには置かれているが銀座ベルビア館にはない。
 「最初は、男性のスタッフに代わってほしいといわれたこともありました。男性の目線で選んでほしい、ということだったのでしょうが、今はそんなこともありません。女性スタッフもレディスサイズをはいて、はき心地を体感していますので、その面でもお勧めするのに支障はありません」。
顧客には、金融関係、弁護士、大企業のエグゼクティブとハイクラスな人たちが多い。接客ポイントは、「その方にあったテンポ」だという。時間とお金に余裕のある方とはじっくりと話し込み、忙しい方にはできるだけ的確に、最短でゴールにたどり着けるように導く。いずれの場合も、ある程度お話をしてから絞り込んで、相手が自分から「はいてみたい」というようにもっていく。あくまでも「お客さまが主導」であるように気を配る。営業職なら、天候にも注意し、「ラバーソールのデザインもありますよ」と提案する。これは、相手の頭の中を整理し、「あっちもこっちも」と迷わせないためでもある。大切なのは、「自分が選んだ」と思っていただくこと。そうすれば、再来店につながっていく。柔らかく、相手を楽しませるきめ細やかな接客に、佐藤さんの「女性目線」が生きている。
三陽山長は、銀座ベルビア館をはじめ、伊勢丹新宿店、日本橋三越本店、玉川島屋S・C、三陽銀座タワー、松坂屋名古屋店などで展開、売上げも堅調で次第に伸びている。銀座ベルビア館は開店から10年、7000人の顧客を抱えるまでになった。
店長になってから一年、佐藤さんの今の目標を聞いてみた。
「自分に何が足りないかを知った1年でしたね。これからは店長としてお店を俯瞰(ルビ=ふかん)して見られるようなゆとりを持ちたい。自分でも大好きなブランドなので、その良さをもっと多くの方に知ってほしいと思っています」。
上階にロフトが開店して入館者も増え、ふらりと入店してくる人が多くなってきた。購入にいたらなくても、「こんなブランドである」ことをていねいに説明する。明日のファンづくりのために、目の前の一人ひとりのお客を大切にし、心のこもった接客を心がける。ブランドの成長にも、自分自身の成長にも近道はない。佐藤さんは、そのことをよく知っている。

三陽山長 銀座ベルビア館
東京都中央区銀座2ー4ー6銀座ベルビア館2階
TEL: 03・3563・7841